メディアグランプリ

ワケありカップルへのゲスな妄想


記事:櫻井 るみ(ライティング・ゼミ)

「ワケありなんで……」

その男女はそう言ってそそくさと私達から離れて行った。

天狼院旅部の企画の一つ。

雑誌編集部での取材の時のことである。

「ワケあり」

たった4文字なのに、人を惹き付けるその言葉。

言葉の裏にある、背徳感や禁忌感をうっすらと感じさせるのか、その言葉は、放った側は「触れないでほしい」という空気を滲ませているのに、受け取った側は「覗き見たい」という衝動に駆られる。

それが食べ物やブランド品ならば想像はつく。

食べ物ならばちょっと形が不恰好だったり、キズがついていたりするもの。

でも、味は正規品に劣ることはない。

ブランド品だったら、ほんの少しキズや汚れがあったりするもの(とはいえ、言われてみないとほとんど分からない)。

もしくは、もう流行を過ぎてしまったもの。

不動産なんかだと……、あまり想像はしたくない。

では、人に対してはどうだろう?

もちろん、想像はできる。

「きっとこうなんだろうなぁ……」と推測することはできる。

が、その想像は得てしてゲスな方向に突き進むことがある。

「さっきのカップルのワケありってなんだろうね?」

この一言から、我が取材班のゲスな妄想が始まる。

そして、さすがは普段から本を読み、想像力を駆使している天狼院書店の常連達。

出てくる発想がゲスいゲスい。

あっというまに様々なゲスい妄想が膨らんだ。

以下、その時出た「ワケあり」カップルの「ワケ」の妄想である。

1.どちらかに(もしくは両方に)、別にパートナーがいる。もしくは既婚者である。

一番初めに思いつくゲスな妄想はやはりこれだった。

そういう男女はやはり多いと思う。そして意外に自分の周りにもいたりする。

2.男性がこれから告白しようとしている。

あまりゲスくはないけど、これもありがち。

これから告白するためにいい雰囲気を作っているのに、邪魔されたらたまらない。

そりゃあ、逃げたくもなるか……。

3.社内で付き合っている男女(会社にバレたくない)。

社内恋愛はしたことがないのでよくわからないけれども、隠すのが一般的らしい。

どこから漏れるかわからないから余計な言動を慎むのは当然かも。

4.彼女(もしくは彼氏)は父親(もしくは母親)の再婚相手。

一気にゲスくなった。が、考えられないことではない。

5.兄嫁。もしくは嫁の妹とか。

さらにゲスくなった。

昼ドラの設定のようだけれど、微妙にリアリティがある。

6.異母兄妹(姉弟)、もしくは連れ子同士の義理の兄妹(姉弟)

ありえないとは言い切れない。

いや、むしろ自分の身近なところにいないだけで、こういうカップルは普通にいると思う。

7.本当の兄妹(姉弟)

むしろ萌える。

……等々と、様々なゲスい妄想を繰り広げていた。

だけれども、本当はわかっている。

彼らに上記のような「ワケ」は多分ない。

彼らは多分、普通に江ノ島にデートに来ていた彼氏と彼女だと思う(まあ、もしかしたら1~3の可能性はあったかもしれないけど)。

本当は、年齢もバラバラ、何の集まりかわからない「天狼院旅部」と書かれたカードを首からぶら下げた怪しげな集団に声をかけられて、引いたんだと思う。

もしかしたら宗教団体と思われた可能性もある。

企画名「女神を探せ!」だし(もし、本当の宗教団体だとしたらそんなふざけた企画名はありえないと思うけど)。

そんな怪しげな団体からはそりゃあ逃げる。

逃げますよ。

だけど、それを分かったうえで、彼らが何の気なしに放った「ワケあり」の中身について、妄想するのが楽しいのだ。

「ワケあり」

たった4文字でここまで妄想を膨らませることができる、素敵な言葉。

隠微で、それが男女のことになるとさらに「淫靡」にもなる、そんな響きを持っている。

多かれ少なかれ、人な様々な「ワケ」を持っている。

その「ワケ」が人に言えるものなのか、言えないものなのかの違いなだけだ。

でも、大抵は言えないものの方が多いもので、だからこそ、偶然にも目にした他人の「ワケ」はとても美味しそうに見える。

全部見えないから尚更。

きっと、私が気付かないうちに油断して見せてしまった「ワケ」も他人からは甘くて美味しそうに見えているのだろう。

いけないいけない……。気を付けないと……。

あのカップルが普通にお付き合いをしている彼氏と彼女だろうと分かってるうえで、敢えて彼らの「ワケあり」をもう一度妄想したい。

「あの二人が本当に兄妹(姉弟)だったら萌えるのになぁ……」

たとえ妄想でも、他人の「ワケあり」はどうしてこんなに甘くて美味しいのだろう。

 

***
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、店主三浦のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。

【通信受講/日本全国対応】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ2.0」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜《この春、大人気ライティング・ゼミが大きく進化します/初回振替講座有/全国通信対応》

 

 

【天狼院書店へのお問い合わせ】

TEL:03-6914-3618

【天狼院公式Facebookページ】 天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。

【天狼院のメルマガのご登録はこちらから】

メルマガ購読・解除

【有料メルマガのご登録はこちらから】

バーナーをクリックしてください。

天狼院への行き方詳細はこちら


2016-06-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事