メディアグランプリ

鳴かぬなら“忘れてしまえ”ほととぎす〜書店で写真を学ぼうと決めた理由〜


記事:大石 香(ライティング・ゼミ)

はっきり言って、私は写真が苦手だ。
撮るのも撮られるのも。

SNSには年齢不詳の上手な自撮りがタイムラインを賑わせているけれど
自撮りもできない私を責められているような気分になってどうも苦手だ。

おしゃれな雑貨の写真やおいしそうな食べ物の写真、
きれいな風景や花の写真を見るのは大好きだけれど

自分が撮って投稿するのは気が引けてしまう。

「上手に撮れないから写真嫌いなの?勉強すればうまく撮れるようになるよ」

最近一眼レフを手に入れた友人からはこんなふうに言われるけれど
勉強好きな私でも、写真だけはどうしても勉強する気になれないのだ。

昔から人と一緒に過ごすことが苦手だった私にとって、
過去を振り返るのはちょっと辛い。

昔の写真……とくに人生でいちばん辛かった高校時代の写真を見ると
その時に抱えていた悩みや恥や罪悪感でもやもやしてきて
拷問を受けているような気持ちになる。

私にとって写真は、強制的に過去に向き合わされる恐いものなのだ。

「そんなもの捨ててしまえ」

心の声に従って
高校時代唯一の楽しみだった部活の写真以外は卒業アルバムもろとも捨ててしまった。

「写真は嫌い。だって、私が古くなるでしょ?」

誰のなんという歌だったか……メロディーすら思い出せない。
こんなニュアンスの歌詞が入ったこの歌が大好きだった。

高校の入学祝いに買ってもらったポータブルMDプレイヤーで
四六時中聴いていたのにどうしても思い出せないのは
人生の中でとびきり辛かった高校時代を忘れようとがんばってきた
ここ十数年間の「成果」とも言える。

あの頃より少しは大人になった今ならわかる。

高校時代に辛い思いをしたのは
きっと周りの人とは違った感覚で世間を見ていたからだ。

相手を気遣ったつもりが逆に相手を傷つけたり怒らせたり悲しませたり。
他の人とは違ったものが好きだったり、嫌いだったり。

自分の思ったことを説明しようとすればするほど、どんどん心が離れていく。

「そんなのいい訳だ、自分の都合の良いように言ってるだけでしょ」
こう言われるともうどうにもならない。

一度みんなに「あいつは自分たちとは違う、ヘンなヤツ」というレッテルを貼られたら
それを覆すのは本当に難しい。

「周り」に敏感で、自分と違うものを受け入れるのが難しい高校生のことだからなおさらだったのだろう。

きっと、自分のことを理解してくれる人なんかいない――

そう思い込んで
私は周りと関わることを避けるようになった。

きっと「写真」が嫌いというより、
人生で1番楽しい時期ともいえる高校時代を
周りに合わせられなくて失敗してしまった「自分」のことが嫌いなのだ。

だから「写真」は何も悪くない。
それはわかっている。わかっているのだけれど、
勉強好きな私でも、写真の勉強だけはずっと避けてきた。

そんな私の目の前にも
容赦なくやってきた写真ブーム。

トイカメラが流行ったと思えば
いろんな写真加工ができるスマホアプリが流行り
写真館やプロのカメラマンが持っているところしか見たことがなかった一眼レフのカメラも
いろんな人が持っているのを見かけるようになった。

自分が撮った写真をいろんな人と共有できるサービスも増え、
写真を上手に撮る方法が載っている雑誌も目立つようになってきた。

いまいちどの写真ブームにも乗れないでいる私が逃げ込んだのは、読書。

しかも、スマホどころか携帯電話のことすら出てこない
古くから残っている本や、偉人のことが書かれた歴史小説を読んで
現実から逃れようとしていた。

「いつまでも過去にとらわれてうだうだしている自分に、偉人たちから活を入れてもらおう」

そんな気持ちで読んでいたのだけれど
読み終えるとなぜか自分を受け入れてくれているような気分になる。

偉人たちは誰でも一度は大きな挫折をして、見放されて、
中には牢獄に入れられた人もいる。
周りの人と同じ価値観を持った人はほとんどいない。
みんなぶっ飛んでいる。

そんな偉人たちの姿を読み解いていると
「なんだ、もしかしたら私ってこのままでもいいのかもしれない」
とさえ思ってしまうのである。

そんな時ふと思った。

「私は周りとはちがうから仲良くなれない」
そんなフィルターをかけて
勝手に辛い思いをしていたのは自分自身だ。

今さら何かを頑張ったところで「辛かった」事実は変わらないにしても
笑い話にできたかもしれない。

要らないフィルターをすべて外して見てみれば
辛いだけだった毎日もまた違ったものだったかもしれない。

案外、みんなも私と同じような悩みを持っていたかもしれない。

目の前の事実を明るくしたり、暗くしたり、鮮やかにしたり、色を変えたり、
にぎやかに飾り付けだってできる。

人の心も写真加工アプリのようにできているのかもしれない。
たまには見る角度も変わったりして。

そう考えれば
写真は過去と強制的に向き合わされるものではなくて
その時感じた一瞬の輝きを切り取ってとっておけるステキなものだと思えるようになった。

あの人が好き・嫌い
その人はいい人・悪い人
これはいいこと・悪いこと

テレビもネットも周りの会話もこんな話題で溢れていて
疲れてしまう時もある。

辛かった高校時代も、思い返してみればこんなものに振り回されていた。

みんな白か黒かを必死になって決めたがるけれど
その人が持っている価値観や正義感によっていろんな答えがあるのだから
もう気にしないようにしよう。

たくさんの偉人が本を通して私に気づかせてくれた。
その偉人たちの本に出会った「天狼院書店」で写真も勉強できるらしい。

なんだか運命を感じたし、
天狼院書店にフォト部があるのはきっと読書体験とつながる「何か」があるに違いない。

書店で読書もいいけれど、
今度は写真も撮ってみようかな。

写真を勉強することで
私を新しい世界に連れて行ってもらえる気がする。

さて、
フォト部の案内、ちゃんと読んでみるか。

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2016-06-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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