メディアグランプリ

サクラサク、自分ブランディング


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:横井マリ(ライティング・ゼミ12月コース)
 
 
「ママは私のやりたい将来に賛成できないっていうわけ!」
娘が激昂し、憤慨している。初めての大いなるキレっぷりで、清々しい。受けて立つ。
「その大学を出てテレビ局に勤められなかったら、他にどんな仕事ができるわけ?」
高校一年生の冬、将来の進路をある程度決めるよう学校から宿題が出ていた。娘は、映像技術や画像編集などの技術が学べる大学を第一希望にしていた。そして、テレビ局に勤めてドラマを撮ったり、映画を作ったりする仕事をするという。
 
その将来に反対しているわけじゃない。娘の本気度が知りたくて揺さぶってみただけだ。もし、返答できない程度の思いなら、初めから辞めた方がいい。テレビ業界は、そんなに甘くないはずだ。
そして、昭和な私は少し期待もしていた。娘が強固に意思を貫こうとあがくことを。だから、もう一撃した。
 
「テレビの仕事は不規則なのに。寝不足に弱い、根性がない、あんたに向いてないでしょ? ほんとにやれると思うわけ?」
娘が押し黙り、リビングから出て行った。その沈黙が何を意味するのか。
答えは、およそ三日後にあっさりと出た。別の大学が第一候補となったのだ。
 
「同じ映像関係の仕事をやりたいって友達が、この大学なら、もしテレビ局に行けなくても就職に有利って言ってたから」
 
娘はその日、かねてから予定されていた大学見学会に参加していた。進学を希望する1・2年生対象の学校行事で、指定校推薦で行ける大学のキャンパスを見学させてもらえるのだ。
各大学も趣向を凝らしており、娘が参加した大学では体験授業が行われたらしい。
 
「国際コミュニケーションっていう授業で、『飲む』と『Drink』の違いについて考えたんだよ」
娘によると、まず、『飲む』という言葉について、食べられる・食べられないに関わらず、思いつくものをありったけ書いたのだという。
ジュース、お茶、牛乳、薬……。みんなの手が止まる頃に先生がこう言ったという。
「小さい子が遊んでいるおもちゃ。飲んではいけないけど、飲める物、あるよね?」
乾電池、ボタン、飴玉……。さらに、先生が付け加える。
「条件を飲むとか、息を飲むとかも『飲む』って使わない?」なるほど。
「じゃあ、この中で、『Drink』で表現できるものって、どれ?」
いわゆる飲み物なら『Drink』だけれど、薬はTakeだ。もちろん、条件も『Drink』ではないだろう。
 
「私、食べられる害のない液体が『Drink』だと思ったの。そしたら、」
お酒はたくさん飲むと害があるのに『Drink』なのはなぜかって聞いた子がいたそうだ。先生は、こう答えた。
「英語の言語が作られた時代背景が影響しているんだよね」
 
言葉を深く考えることで、その国の文化、言葉が生まれた時の時代背景、考え方、人々の認識が見えてくる。娘は、言葉を通じて文化の不思議に触れ、英語を深く学ぶのも面白いと感じたらしい。その大学にも好感が持てたという。そこには娘が目指す映像系の学科もある。映像について広く学びながら、自主的に制作していくのもいいと思えたという。
 
「自分のやりたいこと」にこだわって必死でやるのは、悪いことではない。でも、私自身の経験で言えば、必死にしがみつかなければ続けられないという現実が、見ている世界を狭くし、自分自身を苦しめてきたのも事実だった。もう少し、物事を柔軟に捉えることができていたら、もっと生きやすくなっていたと思う。今回の娘の発言は、しなやかさがあって、いいと思う。
 
そして、今回娘が体験した、『飲む』と『Drink』という言葉。『飲む』には、取り込むとか、受け入れるという意味があるように思う。
もし、進路や将来について悩むことがあったら、自分をひとつのブランドだとして、そのブランディング=付加価値を高める仕掛けを考えてみてはどうだろう。それは決してひとつじゃないはずだ。思いついた案を全て丸飲みできる策があれば、断然その先の可能性は広がるに違いない。
技術や知識を身に着けるのもいい。進学先の学校のイメージをまとうことも、ひとつの要素になると思う。さらに言えば、見られるイメージと、自分が描く自分自身のイメージとの間にギャップが少ない方が、心地いいはずだ。
ギャップを埋めるための努力が、ブランディング成功への鍵になるだろう。
 
こんな風に話したら、もう少し話を聞いてもらえたのだろうか?
 
あの日、娘が本当は何を飲み込んだのか。明確には聞いていない。ただ、こう言われた。
「ママに言われてから、一日ものすごく悩んだんだよ」
一日って、悩んだに値しないでしょ? とツッコミたいところをグッとこらえ、晩酌のビールと共に飲み込む。
 
実は、娘の第一候補となった大学は、私が青春を謳歌した母校だ。本当に行くのなら、全力で応援したいと思っている。その4年間が私にとって宝物になったように、娘にとってもきっと、かけがえのない日々をプレゼントしてくれるだろうから。
 
 
 
 
***
 
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2022-03-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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