メディアグランプリ

私と被災地とNPO法人


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記事:油井貴代子(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
緊急地震速報!
宮城県と福島県で震度6強!
津波警報の発令!
 
3月16日の深夜に起きた大きな地震。断水や停電、新幹線の脱線、壁の崩落やブロック塀の倒壊など、深夜にもかかわらずテレビから多くの情報が流れてきた。それをうけて、我が団体の代表は急いで支援のための道具を積み込み、被災地東北に向けて出発した。
 
私は災害支援を行う特定非営利活動法人団体で事務局を担当している。
特定非営利活動法人とは、いわゆるNPO法人でNon-Profit Organization、簡単に言えば利益を生まない団体である。正確に言えば利益を生んでも問題ないのだが、その利益は団体の活動のために生むものであって、一般の企業のように収益を追求することはない。
私がこの代表に出会ったのは熊本地震の時である。
東日本大震災以降、さまざまな災害で少しずつボランティア活動は行っていたが、違う角度からのアプローチを探していたところであった。毎年のように起きる大きな災害は、地震による倒壊、台風による倒木や屋根瓦の飛散、豪雨や台風による土砂崩れや河川の決壊による浸水被害など、これでもかと日常生活を奈落の底に突き落としてくる。被害のない地域では、全く変わることなく続けられる日常だが、一旦被害に遭うと生活が成り立たなくなるほどの日常が待っているのだ。テレビのニュースから流れる土砂災害の現場では、流されたわが家の前で涙を流す人や、大事なものを探す人、そして見つからない家族を探す人の姿が映し出される。
私自身、川から歩いてすぐの所に住んでおり、この川が決壊すればどのようなことになるのか、それまでに起こった大きな災害からある程度の想像ができるようになっていた。
 
「ボランティアコーディネートを学びませんか?」
フェイスブックにシェアされた熊本地震の記事を見て、私は興味を持ち、参加することに決めた。水害の泥出しや地震の瓦礫処理の重労働を、何度かボランティアに行ってよく知っていた。そしてそのたびに家族が、私が怪我をしないか心配していることもわかっていた。いつまでも重労働ができる年齢でもなかったこともある。
熊本に出向き、実際にボランティアセンターの運営実務などを教えていただき、彼の経験談を聞いた。とりわけ衝撃的であったのは、避難所での話である。
避難される方は、ストレスを多く抱えている。生活環境の変化だけではなく、これからどう生活をしていけばいいのか、大きな不安を抱えている。ましてやプライベートな空間を確保できず、家のようなリラックスできる空間ではない避難所で長期間生活をしなければならない。被災者のストレスはどんどん溜まり、そのはけ口は弱者に向けられるのである。高齢者・子ども・女性へのいじめ、暴言、暴行など、また女性へのわいせつ行為や、盗難事件も発生する。今まで良いお父さんだった人が子供や奥さんに暴力をふるったり、顔見知りからわいせつ行為を受けたりするそうだ。
しかし被害者は警察沙汰にすることを嫌がる。これ以上避難所でのストレスを増やすことを避けるため、そして元の生活に戻った後に生活がしにくくなるのが原因だそうだ。
私には年ごろの娘がいる。
もし今、住んでいる家の近くの川が氾濫したらどうなるだろう? 多くの人が避難した後、そこで起きうる出来事を想像し、娘やその友達が悲しい思いをしないように私ができることがあるのではないかと考えた。ストレスが溜まらないように避難所を運営することが、娘を守る近道なのではないだろうか。難しい問題ではあるが少しずつ勉強する価値があると思えた。
 
「団体の運営を手伝ってもらえませんか?」
しばらくして彼から連絡がきた。
「もうすぐ大阪に戻り、新たな取り組みを始めます。今は一人で運営しているようなものなので、色々お手伝いをお願いしたいのです。」
声をかけてもらったことがうれしくて、私は団体運営に参加した。それからすぐに大阪北部地震が起き、よく訳の分からないうちにいろんな事務作業のお手伝いをするようになった。そして団体もNPO法人となった。
大阪北部地震の後も大きな災害は毎年のようにいくつも発生している。そして、コロナ禍の中での活動は難しいことも多いが、避難所運営もまた、ソーシャルディスタンスという課題を新たに抱えることになってしまった。だが団体運営に関わる中で、避難所運営のエキスパートな方々に情報を共有してもらうことができるようになった。実際には同じ被災地パターンはないのだが、情報があり相談できる人ができたことは安心材料である。
 
「まさかうちが被災地になるとは思わなかった」
これは災害の後によく聞かれる言葉である。どの被災地でも、当たり前のように災害ボランティアセンターが立ち上がるのかというと、そうでもない。ボランティアセンターを運営するのは初めて災害を経験する人たちばかりで、どうしてよいのかわからない人たちばかりだ。被災者が頼るボランティアセンターを運営する側の人間も、同じ被災者なのである。
我が団体の代表は今日も被災地で活動している。どうすれば被災者のお困りことを少しでも減らすことができるのか、運営側と被災者をうまく結びつけることができるのか、我慢したり取り残されている高齢者はいないのか。
そんな頼もしい代表が少しでもよりよい活動ができるように、そして多くの人に今の被災地の姿が届くように、今日も私は事務局としてSNSで発信を続けている。
 
 
 
 
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2022-03-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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