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メディアグランプリ

まだ見ぬ私の運命の再婚相手を婚活アプリで探す


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:清野千聖(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
「おまえらなんか、こっちから願い下げだ」
そう言えたら良かった! と後悔している。
 
夫と死別して20年というとても長い月日が経った。夫との間に生まれた一人息子は東京での大学生活を謳歌していて、連絡を取り合う回数が減ってきている。
50代からの人生の先を考えると、婚活をしてみるのも楽しそうだ。
思い切って、スマホで婚活アプリをインストールし、婚活を始めてみた。
成立すると、たくさんのハートマークがスマホの画面に現れる。
アプリ内で登録されたプロフィールの中から異性を選び、両想いになると、男女二人が直接やり取りできるようになる。
 
「マッチングが成立しました」両想いになった。
 
「メッセージを送りましょう」と書いてある。
私は早速、相手に「はじめまして。よろしければメッセージ下さい。よろしくお願いいたします」とメッセージを送った。
年齢が同じで、医療関係の仕事をしていて、年収2000万円というハイスペックな男性。居住地も比較的近い。写真で見る限りでは優しそうだ。
男性からメッセージの返事が来た。
「はじめまして。こちらこそよろしくお願いします。今日は天気が良かったので、海でヨットをして楽しみました。素敵な方ですね。ぜひ一度お会いしてゆっくりお話ししたいです」
私は嬉しくて、メッセージを交わした当日の夜は、ワクワクしてあまり眠れず、彼所有の海辺の別荘で、一緒にバーベキューをして、ヨットを教えてもらった夢さえ見た。
翌日の夜、彼からまたメッセージが届いた。
「お会いする前にビデオ通話しませんか?」
私は即答し、彼とのビデオ通話が始まった。
 
しかし、彼の一方的な上から目線の態度で会話は始まった。
「きみは今、どんな仕事をしているのか?」
「英語はどれくらい話せるの?」
私は正直に答えた。
「昨年、仕事を辞めて、現在は失業中です。英語は、以前、英会話教室に通っていましたが、今現在はほとんど話せません」
すると、彼から思いもしない答えが返ってきた。
「じゃあ、おまえ、今、無職ってこと? 毎日何やっているの? 英語が話せないんじゃあ、僕のパートナーにはなれないよ。学会で海外出張が年に何回かあるから、随行してもらわないと困るし」
結婚すると決まったわけではなく、余計なお世話である。英語を話せなくても何ら問題はない。ましてや、呼び方が「おまえ」に変わり失礼である。
次々に罵声を浴びせられたが、何を言っているのか理解できず、耳に入ってこなかった。
 
ビデオ通話の接続を切断しようとした瞬間、彼から「ちょっと待って、見せたいものがある」と言われた。
「何でしょう?」と冷静に答えると、
「見よ、この美しい湖を、そして、この綺麗な夜景を」
と言いながら、スマホを動かしながら窓を開け、私に外の景色を見せた。
夜で外は真っ暗である。湖はどこにあるかもわからず、夜景も見えなかったので、「わからない」と伝えた。そして、一方的に私から電話を切った。
不快な気持ちのまま、これから連絡がとれないようブロックしようとしたところ、「これからもよろしく」とメッセージが来た。反撃したかったが、返信する気力も失せ、相手から連絡が来ないようブロックした。
 
次にマッチングできたのは、2歳年下で、スーパーの店員をしている年収300万円という男性である。猫一匹と一軒家で暮らしているという。前回のモラハラ男とは対照的である。
何度かメッセージのやり取りを交わした。自宅から公共交通機関を利用した場合、2時間程度はかかったが、ビデオ通話をせずに直接会うことにした。
 
話をしてみると、温和で優しい方で、趣味や食べ物の好みなどが合い、会っている時間はあっという間に過ぎた。
その後も、ほぼ毎日、お互いのその日の出来事などを話した。
ただ一つ、猫を飼っていることは気になっていた。
飼っている猫の写真の画像をLINEで度々送ってきたからである。
私は会話の中で、彼が猫をとても大切にしていて、猫が家族の一員である気持ちを理解できたつもりだった。
 
しかし、ある日、耐え難い出来事が起こった。
次に会う日を決めた後、彼から相談を持ち掛けられた。
「猫の具合が悪いんだよね。えさ、ほとんど食べないし、元気がない。動物病院へ連れていくから今度は会えない。会う日を別の日に変えてくれないか?」
「いいですよ。あなたにとって猫は大切な存在ですから、大丈夫ですよ」
私は、会えないことが残念だったが、そう返答した。
その後、猫の病気が治ってきた頃、再会の日を決めようと話し合いをしたが、話の中での彼の一言が気になった。
「もっと俺が飼っている猫のことを大切にしてほしい」
どういう意味だろう?
言っていることがあまり理解できなかったので、掘り下げて聞いてみたところ、私の猫への愛情が足りないと言う。
私は猫が嫌いではない。以前、猫を飼ったことがあり、ある程度は理解していたつもりだったが、話の節々で彼に不快を感じさせてしまったらしい。
 
ハイスペックなモラハラ男に続き、猫を愛する年下の男にも裏切られたような気持ちになった。
「お付き合いをしていくのは無理だ」と彼に伝えたところ、「俺みたいな年下の男と付き合えただけでも感謝しろ」と言われた。
 
やっと重い腰を上げて、人生を変えるべく婚活をし、前へ向かっていこうとしている私には、今回の二人の男性との出会いはあまりに衝撃的だった。
こちらから願い下げたくなるような気持ちになったが、彼らには、いつか誰かと幸せになってほしい。
 
今、「今度こそはうまくいく」という強い気持ちで、スマホを手に持ち、再び、婚活アプリを開き、まだ見ぬ運命の再婚相手をあきらめずに探し続けている。
 
 
 
 
***
 
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2022-03-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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