【謎の病!?】なぜ男子校に入学すると、あの奇妙な病気を患ってしまうのか
記事:西山明宏(ライティングゼミ)
「うそだろ……。 本当に見えちまったよ……」
僕の目の前にいたのは、超人気セクシー女優の「蒼井そら」だった。
先輩の言っていたことは、本当だったのだ。
この学校の学食で、突然、セクシー女優が目の前に現れるのだと。
それは、僕が高校生だった7年前の話だ。
高校に入学して、1年が経っていた。
2年生に進級した僕は、昼休みになるといつものように学食へと走った。
僕が通っていた男子校は、大濠高校というところで、中学校から入学できる
いわゆる中高一貫校であり、私立高校の中でも有数の進学校であり、
また部活動も全国レベルばかりのまさに、文武両道を体現した高校である。
昼休みになると、中学生と高校生が一斉に1階にある食堂に向けて、
全力疾走しだすのだ。その瞬間、大濠高校の校舎が揺れるほどの勢いから、
先生たちからは「大濠ダッシュ」と呼ばれている。
この大濠ダッシュのように、大濠高校特有の伝説や、呼び名などがいくつもあり、
その中で、最も有名なものが、「大濠病」という病気だ。
この病気は、大濠高校に入学した約半数以上の生徒が患う病気であり、
症状が重くなると、完治には時間がかかると言われている。
また、やっかいなのが、この病にかかると人間関係の構築や、
コミュニケーションを取ることが難しくなってしまうのだ。
その症状というのが、「女子との会話ができなくなってしまう」というものだ。
これは、男子高校生からしてみると、致命的な病である。
具体的に説明すると、新しく知り合った他校の女子学生との会話の際、
あまりの緊張と恥ずかしさにより、うまく会話ができず、仲良くなれない
というものだ。
ではなぜ、この病にかかってしまうのか。
それは、言わずもがな、男子校であるが故に、
若い女性とのコミュニケーションの環境があまりにもなさすぎるからである。
これにより、女性に対しての免疫力がみるみる低下していき、
いざ会話する機会となると、過度な緊張をもたらしてしまうのだ。
重症者の多くは、中学校からの生徒で、彼らは13〜18歳の6年間、
同年代の女性と必要なコミュニケーションを取れる環境がないため、
重症化しやすいのだ。
大濠病には兆候が2つある。
まず1つは、通学中や帰宅中に公共交通機関などで、
同年代の女子学生と近くになると、話しをしてもないのに緊張し始め、軽い挙動不審になってしまう。
そして2つ目が、学食のおばちゃんの「加賀さん」が、超人気セクシー女優の
「蒼井そら」に見えてくるのだ。
若い女性がほとんどいない環境に慣れてくると、女性という性別なだけで
様々な幻覚や妄想を見だしてしまうのだ。
加賀さんは当時60歳のおばあちゃんだったが、
僕たちは自分の都合のいいように脳内が働き出し、あたかも、そこに「蒼井そら」がいるかのような錯覚を見せてしまう。
こうなってくると、その生徒は大濠病である可能性が高いのだ。
今は、大濠高校も共学となり、そのようなことはもう、起きないだろう。
しかし、この大濠病も大濠ダッシュも、
男子校故のものであり、それもまた青春の一ページとなり、これからの笑い話になるのだ。
共学には共学の楽しさがあり、男子校には男子校にしかない楽しさがある。
「1日でいいけん、共学行きたい」と毎日みんなで言ったことも、
美人の先生が赴任したときに、みんなで用もないのに見に行ったことも、
そんなバカバカしい1日1日が、今では灰色の青春の一ページとして、残っている。
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