39歳の僕がヒロインになる1時間
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:大塚 久(ライティング・ゼミ2月コース)
アイツとの出会いはサイアクだった。
人生どん底だった私にあいつはリアル人生ゲームを仕掛けてきたのだ、でもそうやってでも無理矢理にあいつに関わっているとアイツの奥底にある寂しさと圧倒的な優しさが見えてくる、今はアイツのそんなところにキュンとしてしまう。
以前SNSで
「ドラマの主人公にキュンってしちゃう」
と投稿したら、
「男の人でも主人公の男の子にキュンってするんですね」
と言われた。
僕のドラマの見方は1時間だけ登場人物の1人になりきった目線で見て、時間が来たら現実の僕に戻る。ちょうど図書館と体験型アトラクションを合わせたような感じだ。
これに気づいたのは
「このドラマ誰の目線で見てる? 」
「え? どういうこと? 」
という妻との会話がきっかけだった。どうやら妻はドラマをドラマとして俯瞰して見ているらしい。
他の人はどうなんだろうと何人かに聞いてみたが皆、俯瞰してみていて、僕のように誰かになりきって見ている人はいなかった。
もし、同じように誰かになりきってる人がいたらこっそり連絡をください。なりきるとドラマがすごく楽しくないですか?
なりきるとどうなるか? それは俯瞰して見ていたドラマが体験型アトラクションに変わる。例えばジェットコースターだったら実際に乗ることで出発のベル、カタンカタンと登っていく音、頂上に先が見えない不安感、落ちる時の恐怖と風をきる感じ、高速で曲がった時の遠心力、ゴールに着いた時の放心状態の感じなど、外から眺めるだけでは体感できないことを感じることができる。外から眺めても実際に乗っても同じ数分間なら乗って体感したほうが濃い時間を過ごせる。
ドラマも同じで俯瞰して見るだけより、その登場人物になりきるとことで、主人公の言葉や仕草でキュンキュンしたり、恋のライバルに嫉妬したり、親友の支えに涙したりを体感することができる。しかもこれのいいところは自分がなりたい登場人物になれるので、性別も年齢も関係なくなりきれるのだ。だから39歳の僕でもヒロインになることができる。
基本的にはどの登場人物になってもいいのだが、おすすめの方法はまず自分と共通点がある人物から始めてみるとなりきりやすい。もちろんドラマが進むに従って「この人じゃないかも」と別の人物に乗り換えてもいい。違うアトラクションを選ぶみたいなものだ。慣れてきたら1番自分遠い人物になると面白い。
僕の場合は39歳男性既婚なので遠いのは10代女子初恋的なヒロインになる。
ヒロインになりきってみることでヒロインが体験していることが自分自身の体験にもなる。要は人の人生が自分の人生の一部になるのだ。しかも1時間と言う期限があるのがまたいい。図書館で借りてきた本も返却期限までの間は自分の手元にあるが、期限が来たら返さなければいけない。その期限があるからその間に本を読もうとするし、読んだことを忘れないようにより集中して読むことができる。さすがに24時間39歳の男がヒロインになっていたら気持ち悪いが、1時間ならまだ許される。その間だけ本気でヒロインを演じるのだ。
その本気で演じた1時間は図書館に返却した本の内容を覚えているように、ドラマが終わっても体験としていつまでも自分の中に残っている。ドラマの1時間が今後の人生の一部としてどんどん広がっていく。
そしてさらに面白いことに、後から同じドラマを同じヒロインになりきってみると、前に見た時と感情がまた変わるのだ。ここからは推測でしかないが、前に見た時から2回目を見るまでの間に自分自身が体験したことがそのドラマのヒロインの中に入り込むんだと思う。ドラマを通して自分自身の人生というドラマを見ているだろう。思い返してみればアトラクションも子供の時に親に連れたれて体験した時と、大人になり、パートナーと体験した時では同じアトラクションでも体験は全く違うものになる。小学生の夏休みにいった図書館と、高校生の受験の時に通った図書館ではその使い方すら変わってしまう。そしてその時その時の体験を今は思い出して懐かしんでいる。たった1時間でも何かに集中することでそれまでどうやって過ごしてきたかが見えてくる。そしてその1時間で体感したものは残りの23時間を豊かにしてくれる。もし今後ドラマを見る機会があったらあなたもドラマの登場人物になりきって見て欲しい。きっと今までと違った体験ができるはずだ。
さあ、来週のこの時間はどんな1時間を体験しようかな。
***
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