朝の読書と天狼院書店は同じ考えで動いていたと気づいた午後
記事:Mizuho Yamamoto(ライティング・ゼミ)
「朝の読書」をご存じだろうか?
20代から30代前半はみんな、
「ああ、学校でやってました!」
といい、それ以降の年齢の人々は、
「なんですかそれ? 昼だって夜だって読書はしますけど」
などとおっしゃる。
元をたどれば、1988年に千葉県の私立高校で始められたものである。最初は、生徒指導の意味もあって、始業前に学校全体で読書をすることで、気持ちを落ち着かせようという目的があった。学校中がし~んと静まり返ると、遅刻もしにくくなるし、漫画や雑誌でなければ「好きな本でよい」ということで、だれもが自分にあった1冊と向き合うことができる。
中学校国語科教員を35年務めた私の、教員生活前半は、教室で休み時間に本でも読んでいる生徒がいようものなら、
「や~い、ネクラ(根が暗いの意)」
とからかわれ、本を取り上げられて、
「はい、パス、パス!」
なんて、教室を本が飛び交ったものであった。
しかし、この朝の読書(朝読―あさどく)が始まると、読書する姿が特別なことでなく、「歯磨き」のように誰もがやることだ! という市民権を得ることになった。
小中高校に広がり、中には教室だけでなく、職員室も校長室も事務室もみんな読書しましょうよと、
「朝の10分間は全生徒職員が読書をするので、学校への電話はこの時間はご遠慮ください」
という文書を出す学校も現れて、一気に読書熱が上がったのだった。
読みかけの本があるとどうしても続きが読みたくて、ついつい10分の休み時間にも本を開く生徒が出始めて。
ヤンキーだって一人で読書をしていたりするから、ますます読書がメジャーになった。
で、読み始めると本って案外面白くて、それをまた友人に薦めたくなるのが世間の常。
学校内でも生徒たちがお互いに本を薦め始め図書館の本も読まれるが、自分で買う生徒も増えた。
「ね、これ面白いから読んでみて!」
「これさぁ、泣けるよ~! 読んで!!」
そうやって生徒たちは本の紹介をしあうようになり、国語の授業で「ビブリオバトル」をやってみると、いつもは読書と縁のなさそうな生徒がお薦め本を熱く語り、え~あの子こんなに難しい言葉を駆使して話ができるんだと驚いたり、あいつと意外な共通点見つけたということもあったりして、互いを知るという意味でもよい機会となった。
「国語の授業は毎回ビブリオバトルでいい」
なんて言い出す生徒も出てきて、さすがにそれは勘弁願ったが……。
読書感想文もそうだった。夏休みの課題に作文を出し、様々な課題作文と共に読書感想文を入れて1つを選択とすると、それを選ぶ生徒のなんと多かったことか。
普段朝読で読書をしているので、語りたいことがたくさんあり、原稿用紙5枚くらいへっちゃら! という生徒が多かった。
読書感想文がトラウマになって、読書嫌いになったという40、50代が多い中で、彼らにとっては朝飯前の読書感想文だった。
それから数年を経て、
とある夕方、PCに送られてきた情報に、あったのですよ、天狼院のお知らせが。
「リーディングハイグランプリ」
もともと熱狂的に好きな本を紹介するという「ファナティック読書会」なるものがあったが、これを文章に起こしてその読まれた数(PV数)を競うというもの。
これをやるためにはとにかく本を数多く読まねばならず、そうすると自ずと本を借りたり買ったりすることになるんですよね。
こうやって仕掛けていくことで、読書の必要性が高まり、若者たちが活字を読むことに抵抗がなくなり、考える力を備え国の発展につながってゆく。
読書のその先にあるもの リーディングライフ
朝の読書が求めたものもそれだったんです。
まずは本が読めるようになれば、それを薦めるようになり、図書館から借りる、書店で買うで人と経済の循環が起こり、心が潤うし、人生が潤う。そこから地域が国が潤ってゆく。
右肩上がりの経済成長や人口増加はもう望めない時代に、せめて人々が右手に本をもって読書に臨めば、ほら、ちょっと右の肩が上がるでしょ!?
これがほんとの右肩上がり!
すみません、ちょっと切羽詰まった仕事があって、詰めて書き物していたら気分転換したくなって。現実逃避ともいうこの状況。
でも、思ったんですよ。
みんな本を読んでいる自分って好きでしょう?
退職してもたまに生徒に会うとみんな、本の話をしてくれます。
「ちゃんとオレ読書してますよ、今も! 最近読んだ中では又吉の『花火』よかったな」
「私は、『きみの肝臓を食べたい』がお薦めかな」
ちょっと、あらら……なところは相変わらずだけど、そうやって伝えてくれるところが嬉しいのでした。
残念ながら朝の読書より、計算や漢字ドリルをやらせようとか、英単語を覚えさせようという声が強まりつつあるこの頃ですが、私は声を大にして言いたい!
朝の10分間くらい読書する余裕が日本を作るのです! と。
たかが読書、されど読書。
読書の先にあるものをもっともっと追及してゆくことで、幸せになりましょう!
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