メディアグランプリ

フルマラソンでの絶望的な状況を救ってくれた応援の力


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:北見 綾乃(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
予想通り辛かった。
9km地点で既に右足が痛く、ふくらはぎも攣りそうだった。あと33kmも走るというのに? 思わず気が遠くなる。
 
先週末、3年半ぶりとなるフルマラソン大会に参加したが、事前に思うようなトレーニングができなかったのだ。完全に練習不足である。こんな状態で出場することになったのは、どんなに言い訳をしたって全くの自業自得だ。が、スタートしてしまった以上、ゴールを目指して腹をくくるしかない。やれるところまでやろう、そう決意して進んだ。
 
それにしても、一人ではとても最後まで走れる気がしない。
いや、ここは大会だ。独りぼっちで走るのではない。周りに大勢のランナーはいるし、応援の方々もいる。私はここで人の力に頼ることにした。
沿道からの応援を推進力にするのである。
 
 
職場などでたまに“これだから体育会系のやつらは精神論ばかりふりかざして困る”などというボヤキを聞くことがあった。気合だの、根性だの言われても、気持ちごときで問題がどうにかなるもんじゃないだろう、ということだ。正直私もどちらかというとそういう考えだった。スポーツから遠ざかっていた学生生活を送ってきた私には、メンタルに結果が大きく左右されるということに対して、あまりピンときていなかったのだ。
 
しかし、ランニングを始めて分かった。
もちろん身体的能力が結果のほとんどを決めていることは間違いない。一方で、最後の最後でメンタルの違いが結果を左右することが実際にあるということが、はっきり実感として分かったのだ。途中で気持ちが折れ、出せるはずの実力が出せなかったり、逆に強い思いが普段出せない力を引き出してくれたり……ということを何度か経験した。
 
なるほど、最後は気合と根性だという精神論、侮れない。少なくともマラソンでは。
 
特に大会当日になってしまったら、計画通りに行動する以外、もはやメンタルの維持がほとんど全てといってもいい。
自分一人では恐らく負けそうになる。そこで、私は周囲からいただく応援で気持ちを立て直し続けることにした。気持ちさえ折れなければ、多少の困難は乗り越えられる。他力本願と言われようが、ここまできたらなりふり構わない。
 
 
マラソン大会は行く先々で応援をしてくださる方がいる。
今回私が出場した“かすみがうらマラソン”も例外ではない。沿道に住む地元の方々が玄関先に出てきて応援してくださっている。交通や騒音の面などで色々とご不便やご迷惑をかけているにも関わらず、本当にありがたい。
 
他にも友人・家族・チームのために遠くから応援にかけつけている方々もいるし、ボランティアスタッフもコース誘導や給水などの仕事をしながら、ランナーを力づけ、大会を盛り上げてくださっている。その声援をパワーに変えさせていただくことにした。
 
具体的にどうしたか。
沿道に立っている人に向けて、こちらから手を振りまくったのだ。そうするとかなりの確率で、笑顔を向けて応援してもらえる。感染症が気になるこのご時世、大声を出すことは控えるように言われるが、こちらが手を振れば、相手も振り返してくれるなど、何らかのリアクションが返ってくる。「頑張ってね」の声に、感謝の気持ちを伝えながら進んだ。
 
つまりは自分から応援をねだりに行ったわけだが、これは応援をする側からしてもきっと喜ばしい行為なのだはないかと信じている。私も何度か大会の応援に立ったことがあるが、応援する側も声をかけるのに少し勇気がいる。もちろん少しでも応援の気持ちが伝わればいいという思いでやっているのだから、お礼を返してほしいというわけではないが、見ず知らずの方から感謝の言葉や笑顔が返ってくると正直すごくうれしいものだ。
 
そんな経験があったので、きっとこれはお互いWin-Winとなるに違いないと、感謝しつつ、多くの皆様の笑顔と応援を遠慮なく、思う存分いただくことにした。
 
おかげで足は痛いが幸せな道のりだった。
 
そうこうしているうちに気付けば35km付近までたどり着いた。
右足はいよいよ痛さを増していた。新しい靴が合わなかったらしく甲の部分が悲鳴をあげている。どこまで行けるか分からないがあと7km。なんとか持ちこたえてくれ、と祈りながら進んだ。
 
すると、目の前に見知った顔。
なんと友人がわざわざ遠方から応援に駆けつけてくれたのだ。このありがたいプレゼントには思わず泣きそうになった。気持ちが緩んで少し弱音も吐いてしまったが、吐き出したおかげで気持ちもすっきりし、「絶対ゴールまで行く、行ってみせる」と決意を新たにした。私のメンタルメータが大幅にアップしたのを感じた。
 
もはや右足の激痛に半ば歩きも混じるようになったが、残りはあと2km……1km……ゴールは確実に近くなっていた。
 
ゴール直前、もうあと数百メートル、というところで、もう一人別の友人がゴールまで私を待ってくれていた。もっとずっと速い仲間達を次々に見送った後、私がたどりついたのは1時間以上もたってからである。遅れすぎてもういないだろうと思っていたが、待っていてくれていた。そして、最後少し並走して応援してくれた。気持ちが本当にうれしい。おかげでその数百メートルは、ほとんど歩くようなペースではあったものの、最後まで歩かずにゴールすることができた。
 
人生で一番遅い記録のフルマラソンとはなったが、最後まで走れて本当にうれしい。そして、そうさせてくれたのは沿道の方々、そして友人の応援に他ならない。感謝の気持ちでいっぱいだ。
 
好意を与え合う。
大会という小さな空間だが、そういうことができる場にいて本当に幸せだった。今度は私も誰かを応援する側に回りたい。
 
これは何もマラソンの中だけの話ではない。
応援を求めること、自分もできる応援を提供すること。色んな場面である。
応援をしてもらいたいとき、「図々しいと思われてしまうのではないか」「迷惑と思われているのではないか」などとつい色々考えて遠慮してしまいがちだが、お互いに気楽に応援をお願いし合える世界っていいな……と思うのだ。
 
 
そして、徐々に筋肉痛が強まっていく足をさすりながら、次こそはしっかりトレーニングを積んで最後まで快走できる状態でチャレンジしようと決意した。もちろん、今後も応援の方々との笑顔のやりとりは続けていきたい。
 
 
 
 
***
 
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2022-04-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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