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最高のおみやげ選び おみやげが決まらない人へ


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:清水 隆行(ライティング・ライブ東京会場)
 
 
今、人生で一番ドキドキしている……。
 
 
仕事の都合で地方への出張が多い私は、毎回お土産選びに苦労をする。
娘の喜ぶ顔が見たくて、いつも長時間迷うのだ。
娘達は夜8時には寝てしまう。
それまでに帰らなくては。
 
 
電車を乗り継ぎ、ようやく最寄り駅に到着したのは辺りが暗くなった午後7時頃。そこから徒歩10分程。エレベータ―の無い古い団地の3階が我が家だ。灯りがついていることに安心をして階段を上る。
今回の出張もいよいよ終わり。きっと娘はお土産を喜んでくれる。
重い荷物を抱えて2階に差し掛かったあたりからドキドキしてくる。
緊張と息切れだ。
 
「ただいまー」
玄関のドアを開けると、ドタドタと激しい音が近づいてくる。
「おかえりー! パパだ! パパだっ! うぎゃー!!」
本能のままに喜ぶ4歳の姉の姿は、いつみても愛おしい。
そしてその視線は、荷物を抱えた父の手元に及び、お土産の入っている紙袋だけを巻き上げて竜巻の様に走り去る。「うぎゃー!!」という声はあっという間に台所付近へ抜けていく。
 
少し遅れて1歳の妹がヨチヨチとゆっくりお迎えに歩いてくる。
ニコニコした笑顔。台風一過、快晴の気分だ。
いずれは巨大な台風並みの勢力になるだろう。
 
 
お土産は第一印象が重要だ。
娘がさっそく紙袋から取り出した箱には大好きなキャラクターが描かれている。
そのパッケージに目をキラキラさせ「開けていい? ねぇ開けていい?」
父の返事を待つことなく、包装紙のほんの少しのめくれを頼りにビリビリと破り始める。
 
「もうちょっと丁寧に開けなさい」といっても、その勢いは止まらない。
キャラクターの描かれた包装紙は一瞬でその役割を終える。
その残骸を口に運ぶ1歳の妹。
かわいいキャラクターはネチャネチャだ。
 
 
ここまでは想定通り。
 
その後のイメージはこうなるはずだった。
 
 
箱を開けて喜ぶ娘。
中にはキャラクターの描かれたお菓子が8つ入っている。
そのうちの2つは娘と妻が真っ先に食べるので、まず無くなるだろう。
「もう一個食べていい?」娘と妻が言う。
「いいよ」と言うと、一瞬で4つが無くなるはずだ。
娘へのお土産とはいえ自分も食べてみたいので1つ食べる。
残りは3つ。
「今日はもう我慢して明日にしなさい」と娘をなだめる。
明日1つずつ食べてお土産は全て売り切れだ。
 
「もう一つくらい食べたかったなぁ」
これを残しておくと、次回のお土産選びが楽になる。
次回も同じものを買えばいい。
 
 
しかしそんなイメージはもろくも崩れ去る……。
 
 
翌朝の5時。
薄暗い台所には昨日のお菓子の箱が置いてある。
8つ入りのお菓子の蓋を開けると、5つのキャラクターが満面の笑顔で横たわっている。
 
「もう1個……」とはならずに蓋を閉められた。
 
お気に召さなかったようだ。
 
がっかり感と、前日までの疲労感が残っている中、娘達が起きないよう、細心の注意を払って身支度をする。
ムニャムニャと浅い眠りの娘の寝顔を覗き込み、今しか許されないであろう『おでこにチュ』をして寝室を出る。
 
外に出て「ふーっ」と深呼吸をすると、早朝のひんやりとした空気が仕事モードへ切り替えてくれる。
 
 
昨日までの東北仙台への出張。
あんなにお土産に悩んだのに……。
 
ターミナル駅の構内にはお土産屋さんが並んでいた。
 
娘が寝てしまう前に帰る為、新幹線の時間を気にしながら、お土産屋を物色する。
 
仙台と言えば『牛タン』か……しかし4歳には響かないだろう。
そして何よりパッケージが地味だ。
 
仙台土産ではないが『いぶりがっこ』なんてどうだろう。
妻は好きだけど、茶色いからやはり見た目が地味だ。
娘の興味は一気に失せるだろう。
紙袋の更に下を探る姿が目に浮かぶ。
 
こうなったら地方限定のスナック菓子。
いやいや企業戦略にハマってたまるか。
 
「ああー、もうダメだ」新幹線の時間が迫ってくる。
そして手に取る『ずんだ餅』果たして娘の心を掴むのか。
 
 
『ずんだ餅』で良かったのか。
新幹線の中でもお土産と娘ことを考え続ける。
 
モヤモヤとしながら東京駅に着いた頃、目に入ったのはキャラクターが描かれた東京土産。
 
それが今回のお土産の正体だ。
 
 
娘よ。
 
仙台出張なのに、なぜか東京でお土産を買う父の姿を想像できたか。
父はずっとお前のことを考えていたのだ。
にっこりと親指を立てて美味しいと喜んでくれるおまえの笑顔が見たかったのだ。
 
あれから20数年…。
新しい家庭を築こうとしている君。
きっと今、涙が頬をつたっているだろう……。
 
そして君に最後のお土産を渡そう。
この日の為に用意した最高級のハンカチだ。
 
涙を拭いて幸せな新しい家庭を築くのだ。
ついでにおでこも拭いていけ。
 
そして旦那さんになる君。
お土産選びには全力を尽くせ……。
 
 
そんな結婚式でのスピーチのイメージも簡単に崩れるかもしれない……。
 
娘へのお土産選びは、たぶん一生終わらない。
娘の顔を思い浮かべるのは父として最高の楽しみなのだ。
 
相手を想像し、悩むことは自分の為だ。
 
お土産選びで迷った想い出。
 
それは自分がいつか旅立つ時の最高の手土産なのかもしれない。
 
 
 
 
***
 
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2022-05-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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