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メディアグランプリ

貯金がなくても、結婚してなくても、本当の幸せを発見するたったひとつの方法。



記事:ちゃめ(ライティング・ゼミ)

 

眠るってどんな感覚だったっけ。

わたしは必死になって思い出そうとしていた。

 

午前3時。

もう一度、α波が出るというCDを聞いてみようか。

いや、アロマの香りを変えてみようか。

それとももう諦めて、起き上がってAmazon Videoでドラマの続きでも観ようかしら……。

 

結局わたしは、灯りをつけて読みかけの恋愛小説を読み始めた。

自分の問題からひとときだけ目をそらすために。

眠れなくなって2週間が経とうとしていた。

 

 

 

何があっても、ぐっすり眠れることが取り柄だと思っていた。

4年つきあった彼にふられた夜も、就職活動がうまくいかなくて絶望した夜も、飼っていた愛犬が死んだ夜も、わたしはぐっすり眠っていた。

まさかまさかわたしが。

このわたしが、不眠症だなんて……。

 

原因は、会社での人間関係のトラブルである。

人間関係で揉めて悩んでいるなんて、

月並みすぎて、言うのも恥ずかしかった。

 

いつも悩み相談をしあっていた友人に

「何があったの?」

と聞かれても、どうしたわけか言いたくないのだ。

 

悩みを人に言わなかったのって、もしかしたら人生初かもしれない。

 

そのせいだろうか。

人生初の、不眠症。

 

会社を休むわけにはいかない。

仕事はきちんとやりたい。

だってくやしいじゃない。

 

人生で初めて、職場の人に人格を否定された。

最近中途入社してきた男性だ。

 

絶対にダメージを受けているなんてばれたくない。

 

職場でずっと緊張しているせいだろうか。

不思議と、昼間も眠くはない。

 

 

 

一番苦しいのは、現実に起こっていることよりも、

眠れないことだ。

 

鬱々とした気分が抜けず、ネガティブな考えが頭を占めている。

 

このまま、眠れなかったら。

 

もしかしてこのままわたしは、鬱病と診断されて、休職して、

そのまま職場復帰できなくなるかもしれない。

 

せっかく好きな仕事をしているのに。

仕事を続けられなくなるかもしれない。

そうしたらこのマンションの家賃も払えなくなる。

両親が無理矢理に実家に連れ戻すだろう。

ああ、そうしたら、この自由な生活は失われるのだ。

 

だから、眠らなくては。

眠らなくては。

羊の数、何万匹数えただろう。

 

眠ろうと思えば思うほど、眠りは遠ざかって行く。

 

 

 

 

ある日、学生時代からの親友から、LINEがきた。

「なんか、悩んでいるでしょ」

 

なんでわかったの。

何も送ってないのに。

 

「わかるよ。だって2週間もLINEがこなかったのは初めてだから

なにかあったのかなって思って」

 

なるほど。確かに……

極度に寂しがりのわたしは、常に誰かしらにLINEで連絡している。

犬とか猫とか寿司とか海老フライのよくわからないスタンプを送りつける「スタンプ爆撃」みたいなこともよくやっている。

突然、スタンプすらも送らなくなったらそれはたしかに、緊急事態かもしれない。

 

「とにかく眠れない。

ずーっと悪いことばかり考えてしまって。

でも、精神科医とか行ったら、すぐ鬱病って診断がついて

保険に入れないって聞くし。

電話で夜中に話を聞いてくれる心理カウンセラーも検索して見つけたけど

なんか余計傷つくことを言われるかもしれないと思ったら、

怖いから電話もできなくて」

 

そしてわたしはようやく、

一体自分が何に悩んでいるのか説明することができた。

何が辛いのか。どうしたらいいかわからないということ。

風邪薬や車の酔い止めを飲んでも眠れないこと。

 

友人は調べてくれた。

どうやら内科でも、睡眠導入剤を処方してくれるらしい。

 

もう、なりふり構っている場合でもない。

 

そこからわたしは、いつも通っている内科の先生に睡眠導入剤を10日分だけ処方してもらい(あくまでこれまで服用したことがなく、原因が明確な不眠であることを前提に処方してくれた)、カウンセリングをしている別の友人に連絡して予約をとった。コーチをしている友人とも約束をした。上司にも相談し、解決方法を話し合った。徹底的に人を頼ることにした。

 

 

 

2週間くらいして。

会社が終わってお風呂に入って、夜23時くらいに自然に眠気が襲ってきた。

自然に眠気を感じたのはいつ以来だろう。

眠い……!

ふわふわと眠りに誘われているこの感覚!!

な、なんたる幸福!!!

 

そして翌朝、目覚まし時計の13分前に自然に目が覚めた。

これは本当に久々で、1年ぶりくらいじゃないか?

最近はもっぱら平日でも二度寝がお得意だったので……。

 

 

会社の人間関係の問題も、変化していた。

不思議と急に、揉めていた相手の態度が変わったのである。

あんなにコミュニケーションを拒絶していた彼が、

自分から相談してきてくれた。

 

好きな仕事を思い切りして、

夜眠くなって、朝すっきり起きられる。

 

なんて幸せなんだろう。

 

これまでわたしは、結婚しないと、幸せにはなれないと思い込んでいた。

それも、経済力がある人と結婚して、子供に恵まれて、

ようやっと幸せになれるんだと。

いまは仮初めのわたし。

本当のわたしの人生はこれから始まるんだと。

 

でも、結婚していなくても、子供がいないけど、

わたし、こんなに幸せじゃないか。

 

だって毎日眠くなってよく寝て、起きれるんだもの。

 

 

毎日眠るという「日常」を失ってみてようやくわたしは気づいたのだ。

日常ってすばらしいということ。

 

たとえば、めちゃくちゃ辛い部活の合宿に行って

練習が夜中まで続いて全然寝かせてもらえなくて、

「ああ〜早く家のベッドで眠りたい!!」

と気づく。

 

マラソンしていて、息が苦しくて苦しくて、

「ああ、仕事の合間にカフェでお茶するあの時間ってすっごく幸せだなぁ」

と気づく。

 

何気ない日常を、ふとした瞬間を、

だいじにだいじに生きるってことが

幸せなんだ。

 

そう、そのためには対比するための「非日常」が必要。

 

貯金もないけど、彼氏も結婚相手もいないけど、

幸せになるのには、意図的に非日常を作れば良いんだと思います。

不眠症にまでなる必要はないけれど!

断食とか、自衛隊研修とか、いいかもしれない。

 

わたしはまたしばらくして「眠れること」に慣れきって「不幸」感を感じてしまったら、非日常な体験を取り入れようと思っている。

 

非日常があってこそ、日常がキラキラと輝き始めるのだ。

 

 

***
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2016-07-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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