スナック菓子の誘惑から解放されたワケ
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スナック菓子はいつ頃、世の中に出回り始めたのだろうか。私が、僅かばかりのお小遣いをもらい始め、自分のものとして使ってもいいお金を持っていた高校生の頃には、既に存在していたのは確実だ。私は自分の好きなものを買えるようになってから、スナック菓子を買うのをやめられなかった。
コンビニエンスストアの棚に、ポテトチップスやポップコーンなど、10数種のスナック菓子が並ぶ。見るからに食欲を刺激するようなパッケージに包まれた彼らは、「僕を君の家に連れて行って」とせがんでくるようだ。たいてい、私はそのアプローチに負けてしまう。
家に帰り、「ふぅ〜」とリラックスしながら、スナック菓子の封を空ける。ぷぅ〜んと、体に悪そうではあるが、なんとも刺激的でうまそうな匂いが鼻をつく。
中身を皿に移しかえることもせず、袋の中に手を突っ込み、スナックをつまむ人差し指と親指をスナックの粉で汚しながら、ボリボリ、パリパリ、無心でひたすら食べる。
ああ、これぞ、至福のとき!
だが、ふと気づくと、なんともう袋の底が見え、スナックの小さな欠片しかみあたらない。「くそ、もうひと袋買っておけばよかった!」と思うほど、ひと袋を食べ切ってもまだ口さみしい。ここで、もうひと袋買っている場合は、残るひと袋にも確実に手をつけている。
食べる前には、今日は半分でやめておこうなんて思っているくせに。そんなことは、できた試しがなかった。多感な時期の女子としては気にしたいカロリーにも目をつぶっていた。というか、残念なことに、そんなもの、ハナから気にしていなかった。
社会人になっても、スナック菓子はやめられない。
シフト制の仕事で帰宅が夜の10時や11時過ぎになることも多かったので、最寄り駅からすぐそばにある24時間営業のスーパーマーケットで、夕食と称した弁当を買う。その際、必ずといっていいほど、お菓子コーナーにも足が向いてしまっていた。
そこのスーパーは、規模が大きかったから、棚に並ぶスナック菓子の量もバラエティに富んでいて数もたくさん。今日はコレ、明日はコッチと選び放題だ。豊富な数のスナック菓子の中に佇んだら、たかだか、ひと袋だけしか買わないなんて耐えられないことで、スナック菓子をふた袋以上、買うことも珍しくなかった。
とりわけ、買って行く回数が多かったのは、ピザポテトと堅あげポテトチップス。ピザポテトの濃厚なチーズと濃いピザ味、堅あげポテトチップスのザクザクとした食感は、私を超絶、誘惑する。スナック菓子のなかでもやはり、ポテチは王道であり、一番好きだ。
深夜近くに食べる夕食の後のスナック菓子というお決まりのコースは最高だった。仕事も終えて、家でくつろぎながら食べるスナック菓子はまことにうまかったし、そのくつろぎの時間は当時の私にとって欠かせないものだった。
……のだが、
スナック菓子を食べるのをぴたりとやめた。
いや、正確には、ゆるやかに、ほとんどやめた。
というのも、スナック菓子で味わう至福のひとときとは裏腹に、私の体は慢性的な体調不良だったからだ。
仕事を休まなければならないほどに体調が悪いわけではない。でも、結構な頻度で気だるくなるし、体も重い。見た目は太っているわけではなかったが、下半身はパンパンで上半身と比べると、アンバランスに太かった。動くたび、足が重くてしんどいし、駅の階段をひとつ登っただけでも、「ハァ! ハァ! 」と大きく息切れていた。
なかでも決定的にひどかったのは、鼻炎と匂いがわからないという症状だった。
主に鼻づまりがひどく、夏は少しいいけど、花粉症もある春、気温が低くなる秋〜冬は症状が悪化する。両鼻がつまり、窒息するのではないかと思うこともしばしば。
鼻がつまっていると、そのせいにはしたくないが頭もボーッとする。
匂いがわからない。これについては、鼻がつまっていなくても年に数回しかちゃんと匂いを感じられない状態だった。強い匂いはほんのりわかるけれど、香水や雨の匂い、部屋の匂い、また、ほとんどの料理の匂いはわからなかった。しょっぱい甘い辛いなどの味はわかる。でも、匂いがわからないと、食べることが好きな私にはとても味気なく、食事のときの幸福度が薄れる。スナック菓子も実は、香りが濃いものはなんとなくわかっていたが、記憶の中の香りと味で食べている部分もあったと思う。風味がわかりづらいから満足感が薄かったのか、量が欲しくなりがちでもあった。生きていくうえではそこまで困らないけれど、なんだかいつも満たされない気がしていた。
鼻炎と匂いを感じない症状とは、長い付き合いで、かれこれ10年以上は苦しんでいた。
鼻の症状については、大きな病院に行き、検査してもらうも、はっきりした原因はわからなかった。原因と思われる部分の手術もした。暫くはよかったが、そのうちまた、症状は悪化した。耳鼻科に何度行っても改善しない。
歳をとるにつれ、もうこのままこの症状と生きていかなければならないのか、為す術はないのかと恐怖を感じ始めていた。加齢により体力も衰え、さらなる病気でもしたら……。もっと症状が苦しく感じられるかもしれない。そうしたら本当につらいだろうとゾッとした。
そんなことを考えていたある日、どこからか「自分ではまだ何もしてないんじゃない?」という声が聞こえた気がした。
今まで、耳鼻科の先生に治してもらおうとばかり、思い込んでいたけれど、そうか、実は、一番大事なのは生活習慣を見直すことじゃないかとひらめいた。
巷では「医学不要論」とか「医者に行くな」といった類の本も話題になり始めていた頃だ。本屋などで見たタイトルが記憶に残り、医者に行かないという選択肢もあるのだという考えが意識下から浮上し、なすべきこととして、タイミングよく意識のなかに現れたのかもしれない。
そりゃあ、自分の体のことだ、本当は自分がよくわかっているはず。よくよく考えてみれば、お医者さんだからといえ、十人十色の数多くの人たちすべての症状が理解できるなんてことはありえない。
よし! と静かに意気込んでやめたもののひとつが、スナック菓子を食べることだったのだ。
結果から言うと、一番ひどかった鼻づまりと匂いを感じない症状は安定して改善した。薄い匂いはまだ感じないこともあるが、人生の中に、匂いというものが戻ったのだ!
それに、鼻づまりも気温差などで少し悪くなることもあるけれど、季節を通して、鼻がつまることがほぼなくなったし、前より声も通るようになった。
鼻だけではない。足まわりのむくみもとれ、足がほっそりしてきた。階段を登っても僅かの息切れで済む。
なんと、ゆるやかではあるけれど、あまりに改善がみられたので、今までの自分は何だったのかというほど、今はこの変化に感動している。
そりゃあ、スナック菓子をやめることの他にもいくつかやめたことはある。
科学者でもなんでもないし、実際にどれが原因で改善したのかはわからない。どれも有効で試したこと全てが効いたのか、いくつかだけなのか、スナック菓子以外のものなのか。それははっきりとはわからないけれど、今となってみると、添加物もカロリーもたっぷり、味も濃いスナック菓子を食べ続けるという行為をちょっとばかし、やりすぎていたのだろうと思っている。
調子の良い体を知ってしまえば、スナック菓子をまた食べ出して、体の具合が悪化してしまうことに、当時のしんどさを実感するからこそ、非常に恐怖を感じる。
だからもう、スナック菓子の誘惑にはのらないと決めたのだ。
でも……。
ひとつだけ、大好きなポテトチップスだけは、どうしても食べたくなるときがある。1ヶ月に数回くらいだけれど、そのときはしょうがない、と言い聞かせる。
気休めかもしれないが、そんなときは原材料がジャガイモ、塩、油くらいしか表示されていないシンプルなものを選ぶようにしている。
回数は減ったけれど、やっぱりポテチを食らうそのひとときは相変わらず、至福なのだった。
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