『四代目天狼院秘本』に物申す
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記事:てらっち(ライティングゼミ)
天狼院のサイトにこんなことを書き込むのはいかがかと思うが、今回言わせていただきたいことがある。
それは天狼院書店の通販サイトの『四代目天狼院秘本』なるものについてだ。この天狼院書店は、本のタイトルや中身を隠したまま本を売ろうという、とんでもないことをしているのである。
どう考えてもこのサイトはおかしいのではないか?
そんな名前もわからずに本を買えると思うだろうか?
これは消費者に対する冒涜ではないか!
このサイトは表題に≪通販サイト≫と断り書きをいれておきながら、なぜか小説じみたショートストーリーから始まる。
何かの企みをわたしは感じ、一体だれがこの『天狼院秘本』なるものの仕掛けをやっているのかと調べてみた。
だいたい天狼院書店というのは、本屋というわりに変わったことばかりしている。
本屋なのにサイトに入ると「フォト部」だの「落語部」だの本屋には似つかわしくないおかしな部活があり、「旅部」なんてやつまである。これはちょっと入ってみたいと思うが……おっといけない。
とにかくこんなおかしなことをしている主宰者はどんな人物だろうと思うと、スキンヘッドの怪しいヤツであった。
この怪しいヤツが天狼院書店の店主であり、ヤツがどうやら『天狼院秘本』をも企んだ人物のようだ。
この『天狼院秘本』の通販サイトのショートストーリーを書いているのもこの店主らしいことは、読んでいて次第にわかることになるのだが。
わたしは読みながら、こぶしを握りしめたものである。
このサイトを、見なければよかったと。
まずは青年がストーリーに姿を現すところからはじまる。
青年は都会での大学生活になじめず、入学早々ドロップアウトし、そして小説を書くことに没頭していく
「誰得?」な小説を書く青年、「臆病な自尊心」「尊大な羞恥心」を胸に抱き、自分の才能を誰か認めてくれ! ともがく青年の姿が淡々とした口調でつづられる。
その、そこここに潜む言葉が棘を持ってわたしを攻撃してくる。
ちっ!
読んでいて胸がいたい。
わたしの学生時代そのものじゃないか!
前半の彼の世間にうまくなじめずにもがく姿はわたしの姿にぴったり重なってきたのである。
そして、ストーリーのネタバレ承知で書かせていただくと、ある男性があらわれて彼に2冊の本を差し出す。
「生きづらい、だろうね」
男性の言葉に青年とともに、わたしの眼にも涙があふれてきた。
たしかに学生のころ生きづらい日々を送っていた。
もがいてももがいても思うようにならず、運命の波にゆく手もわからぬまま押し流されていた。海の水面にたゆたう木屑の上にぽつんと取り残された芋虫のように、なすすべもなくしょっぱい波にさらされていた。あんな日々には戻りたくない。
いや、今だってのびのびと生きているだろうか……。
思う存分やりたいことをやって生きていると言えるだろうか。
生きづらいなんてことないね! と胸を張れるだろうか。
わたしは荒波の中にもまれる木屑の上から、飛び立ち、今は立派な蝶になったなどと言えるだろうか。
「この2冊の本を読むことによって、君のその生きづらさが楽になるかも知れない」
ああ、救われた、と思った。
ここでふと気づく。
しまった、あの店主のやり口だ。
この青年に共感させてこの本を買わせようって魂胆なんだ。
その真意がわかったときにはもう遅かった。
二冊の本は黒いカバーから覗く装丁から、青とクリーム色の表紙であるという。
青年がちらりとその黒いカバーから覗く表紙を凝視している。
その横で、もう少し情報が知りたいと、心の中のわたしは身体をへの字に曲げてその黒いカバーの細い隙間から題名が見えるんじゃないかと本を覗き込むのだが、それ以上は分からなかった。
テーブルの上に、本が二冊ぽつんと置かれているのをじっと見る。
人生を生きやすく変えてしまう本なんて、あるだろうか?
いや、いかんいかんいかん!
くっ! あの店主、こんな人の心をあやつるようなことをしやがって!
そんなにわたしは安くはない。簡単にその手に乗って本を買おうとポチッとボタンを押すと思ったら大間違いだ。
ああ、確かに生きづらいさ。
このひねまがった性格が災いして人とうまく付き合えないままこの歳になっちまったさ。
「臆病な自尊心」「尊大な羞恥心」なんて言葉があまりにぴったりで笑ってしまったほどだ。相反するふたつが心に同居してしまうと本当にこの世は生きづらい。
ちらりとテーブルの上に置かれた黒いカバーの本を見る。
もちろん目の前にあるわけじゃない。
でも、わたしのこころの中のテーブルに、その本が黒いカバーでありながら妖しく光をはなってそこにあるのだ。
わたしはこのサイトを見ることをオススメしない。
サイトを見たら最後だからだ。
生きづらい人生を送ってきたならなおさらだ。
読みたい、読みたい、読みたい、読みたい……。
いや、だまされるな、だまされるな、だまされるな、だまされるな……。
あの店主のにやりと笑う顔が目の前を横切った。
買うもんか、こんな本。絶対に買わないんだからな!
本が妖しく光りつづける。
そこから目を背けていたが、振り向いた瞬間!
ああ、ポチってしまった。
***
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
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