花束を贈ったこと、ありますか?
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記事:重冨弘太郎さま(ライティング・ゼミ)
とある田舎町の自然の中、周りにお花が溢れる環境で育った男がいた。
彼の名は、太郎。25歳の独身だ。
彼はお花関係の仕事をする両親の影響もあり、自然とお花に興味を持つようになっていた。
「お花なんて女の子かよ」なんて言われようが気にすることもなく、
誰かに披露するわけでもないが、時にはフラワーアレンジメントをし、時には花言葉の綴られた本を読んだ。
しかしそんな彼も、誰かに花束を贈ったことはない。
花束を贈るということは、どうもムズ痒いものだ。
花束だなんて、どこかのオシャレな人が贈るものだろう。自分なんかが贈っていると周りの人からは、「誰だよ。ナルシストかよ」なんて思われて笑われるに決まっている。
ベタなロマンチストを気取りたくなんかない。
そんな勝手な心配を抱いてしまうのだ。
花
それは、インテリアのように普段の生活を彩り、また、結婚式やパーティーなどの特別な空間を演出する。
美しいものの代名詞であり、詩に詠まれたり、絵画のモチーフにされることも多い。
「今日は妻の誕生日なので食事の時に花束を準備していただけませんか? 赤と白の花がいいかな」
花は、愛情を表現するものでもある。
フランスの民宿のフロントで花束の手配を相談している紳士がいた。60歳前後の彼は、お世辞にもイケメンだとは言えない。
「花束か。さすがフランス人だな」
そんなことを思いながら、太郎はその様子を眺めていた。
夕食の時間になると、1卓のテーブルに赤い包装紙に包まれたブーケが置かれている。
先ほどの紳士は、どんな奥さんを連れて現れるのだろうか。太郎はそのテーブルが気になってしょうがない。
彼が食事を終える頃、そのご夫婦は現れた。
「あら、素敵」と素直に喜ぶ婦人に、紳士は、宿の女将を手で指し示しながらこう言った。
「彼女のおかげで準備できたんだよ」と。
婦人は女将とビズを交わし、旦那とキスを交わした。
「あぁ、こうやって花束を渡すのか」
太郎は、その紳士を憧れの眼差しで見つめながら、花束を贈ることを恥ずかしがっていた自分を恥ずかしく感じたのであった。
この紳士は、花束が自分からの贈り物だとアピールすることはなく、女将を立てていた。
彼の恥じらいがその言葉を生んだのかもしれないが、その場にいた太郎も女将も彼の言動を素敵だと感じたはずだ。
誰も「ナルシストかよ」だなんて、思うはずもない。彼の一言は、人々を惹きつけたのだ。
花束を贈ること。
それは、ラブレターでは伝わらない、あなたの魅力をも伝えられる方法なのかもしれない。
ラブレターでは相手を愛している気持ちは伝わるかもしれないけれど、
花束の渡し方次第で、ホテルのスタッフや花屋の店員などの周りの人を大切にするあなたの魅力も伝えられる。
それは愛する人だけでなく、その場にいる全ての人に伝わるだろう。
同じ愛を伝える方法だけど、「花束を贈ること」に挑戦してみる価値はあるようだ。
「生花は、花瓶に食器用洗剤を1滴入れてあげるだけで長持ちするよ。それか、麻紐なんかで逆さに吊るしておいてあげると、乾燥してドライフラワーとしても長く楽しめるよ」
なんて言葉を添えて、知性をアピールすることもできるかもしれない。
いや、それこそその場にいる人たちに「誰だよ。ナルシストかよ」と言わせてしまうに違いない。
そお。花束を贈ることを恥ずかしがることはない。ただ、そこに添えるあなたの一言が大切なのだ。
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