身に付けるのに、本当に必要なことは?
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:河野 眞寂(ライティング・ゼミ2月コース)
「どうしたらいいの?」
健康診断の結果を前に、受診した人から必ず出る言葉だ。そのどうしたらいいのかを説明するのが“保健師”だ。私は、以前、この保健師をしていた。
説明を始めると、うんざりと言った表情をする人がほとんどだ。
どうすれば?と聞いていても、ずばり「聞き飽きた」と言ったところだろう。時には、「もう結構」と健康診断の結果を丸めながら、帰っていく人も多く見てきた。
何度も同じ事を聞き、頭では、そのままの状態が悪いことも、どうすればいいのかも“わかっている”のだ。わかっていることを、実際にやること自体が難しいのだ。
ここ数年、生活習慣に起因する疾患(たとえば、糖尿病や高血圧、高脂血症など)が重症化することが多く医療費を圧迫している。そのため、国は特定健診や長寿検診といった健康診断を保険者に義務付けするようになった。
保険者とは、国民健康保険や社会保険などを運営する組織のことで、保険証を持っていれば必ずその組織に保険料を支払っている。なので、ほとんどの人がこの健康診断に縁がある。
健康診断の結果で、数値が異常値に近いと特定保健指導を勧められる。その特定保健指導を行うのが“保健師”だ。
そこで、はじめに登場したやりとりが繰り返されるのだが、何年もやっていると、毎年同じ人に同じようなやりとりを繰り返すことが多い。
とにかく、生活習慣病の原因は、肥満といわれている。そのため、生活習慣を変えて、予防のためにやせる必要があるのだ。とはいえ、人とって、生活習慣を変化させることはとても難しいことなのはわかる。それは、私も体験済みだ。
学生時代、寮生活をしていた。看護師を目指す、二十歳前後の女子120人ほどが共に共同生活していた。
その寮は、特攻平和会館で有名な“知覧”というところにあった。訪れた人ならわかるかも知れないが、鹿児島市から2時間ほどの場所。山を越えさらに奥にある。その特攻平和会館からも、さらに奥へ進んだところに寮は存在していた。
畑のど真ん中にあり、一歩外へ出ると、広がる茶畑しかない。ファミレスはおろかコンビニもない。買い物をしようと出かけても、歩いて行けるのは、少しの食品を取り扱う商店だけだった。まるで、監獄のような寮だった。
監獄のような寮と、厳しい学習スケジュール。ストレスをためていない学生はほとんどいないのではないかと思えた。
寮の規律は厳しくそんな田舎にある寮だったが、門限があり、入浴や消灯の時間が厳しく定められていた。先輩も厳しかった。今考えると、若かりし時に、よくそこで生活したと自分を褒めたい。
そこでの楽しみが、友人の部屋にお菓子を持ち寄り、集まっての“おしゃべり”だった。その時間だけが、唯一解放される時間だった。しかし、そこで、問題が起こった。
「生きてきた中で、今(体重が)最大になった」
数人でお菓子を食べながら談笑していると、ある友人がぼそりとつぶやいた。
数人がそれにうなずいていた。気づけば、私も、体重が人生最大値になっていた。
原因は、早い時間の夕食のため、寝る前には空腹になり、ついついお菓子を食べてしまうことだった。
やせるためには、食事、運動、間食を工夫することだとみんなわかっていた。だから、お菓子を断つ者。運動(1時間歩く)急に始める者。食事を抜くという者までいた。
ほとんどの人が、極端な選択をした。結果、継続せず、一人、また一人と脱落していった。
私も、その一人で、お菓子を急に辞めて、運動を急に始めた。だが、空腹やストレス、運動のきつさから、すべてやめてしまった。
結局、卒業するまで体重は増えるか継続するかで、やせることはなかった。
そのときに、無理矢理、生活習慣を変えて、やせるのは難しいことだと知った。
その後、看護師として就職。仕事柄、立ち仕事で常に動き回り、お菓子だらだらと食べる時間もなくなった。そのお陰で、知らず知らずのうちに、5キロやせた。私の中で、変えようと思って生活習慣を変えたわけではないが、体を動かし、間食をとらないだけで、これだけやせたという実績にはなった。
大事なことは、わかっていることを、無理なく生活の中に取り入れて、継続することなのだと体感した。
保健師の仕事をしているとき、エゴかも知れないが、私と縁を持った人が一人でも多く、いつまでも元気で病気にならない生活をしてほしいと思っていた。だから、人に伝え、人を動かすという技術はずっと磨きたいと思っていた。
ライティングゼミに参加したのも、そんな思いからだった。
そして、ゼミで人に文章でわかりやすく伝える技術を学ぶ事はできた。いわゆる、“わかった”と言う状態だ。しかし、学んだことを、実践していかなければ、本当の技術として身につける事はできない。
今回、何度か提出する機会を逃してしまった。もったいない……
今後も、書くことを続けて、技術を自分のものにしたい。
***
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