忙しいことを理由に「できない」と言いたくないと思っているあなたへ
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記事:岡部 みほ(ライティング・ゼミ4月コース)
忙しい。
きっと多くの人が、「忙しい」毎日を過ごしているのではないでしょうか?
きっと、みんな忙しい。
だから私も、忙しい、もしくは時間がないのを理由に、「できない」と言いたくなかった。
時間がないからできない、と言いがちなことの一つに読書がある。
他にやることがあるとつい後回しになってしまい、「本を読む時間がない」となってしまう。
読書術の本を読んだ時、隙間時間を使って読めるようにいつでも本をスタンバイしておくといい、というようなことが書いてあり、なるほどと思った。
なるべく薄くて持ち歩きやすいものを選んでいつでも持ち歩き、隙間時間を縫うように本を読んだ。
すると、確かに、本を読み進めることができた。
忙しい毎日の中でも。
隙間時間を縫うようにやっていけば、忙しい中でもやりたいことは全部できるんだ。
忙しい・時間がないというのは理由にはならないんだ。
忙しいというのは自分に甘えているからで、やろうと思う気持ちがないからなんだ。
私の頭には、そのようにインプットされた。
しかし、ある出来事をきっかけに、その考えは間違いであることに気づかされることとなった。
私は、とにかく予定を詰め込むタイプだ。
誘いがあれば断らないし、スケジュール帳に余白があると落ち着かなかった。
午前・午後・夜、と3段階で予定を入れるのは、とても充実した毎日だと思っていた。
そんな毎日を送る中、遠方の母が近くに移住してきた。
子育て、大変だろうから……と、晩ご飯のおかずを作って持ってきてくれたり、子どもたちを公園に連れ出してくれたり、私の負担を減らそうとしてくれた。
母が子どもたちをみてくれたことによってできた時間に、私はまた色々なモノを詰め込もうとしていた。
その時、変化はやってきた。
立ち上がれない。
起き上がれない。
白米すら炊けない。
車の運転もままならない。
ちょっとのことですぐに怒る。
急に涙が出てくる。
謎の発疹も出ている。
……あれ? これなんだ?
元々感情の波はあるタイプだが、今までとは比べ物にならないくらいの落ち込み加減だ。
何かおかしい。
これってもしかして……
私は人生で初めて精神科を受診した。
もらった薬が合わなかったようで、ひどい倦怠感とだるさに襲われ、再び起き上がれなくなり、一日中ボーッとしたり泣いたりして過ごす始末だった。
薬が切れ、少し頭が働くようになり、これはヤバイと、今度は漢方薬局なるものに予約を入れた。
ただ笑顔で毎日を過ごしたい。ただそれだけでいい。
藁にもすがる思いだった。
漢方薬局のおばちゃんは、ゆっくりと、私の話を聞いてくれた。
そしてこう言った。
それは、病気じゃないと思う。ただ、ひどく疲れている状態。今まで、気を張ってギリギリのところで頑張っていたけど、お母様がきてくれたことによって、緊張の糸が弛んで今までの疲れが一気に襲ってきたのね。
横になりたかったら、とにかく横になって休みなさい。
そう言って漢方薬を処方してくれた。
薬局を一歩出て息を吸う。
あ、私って疲れてたんだ。
休んでいいんだ。
横になってもいいんだ。
がんばらない
手放す
ゆるく
ほどほど
最近手に取った本で、よく使われる言葉たちだ。
隙間時間を縫うように読んだが、それは全く身になっていなかった。
「ほどほど」の意味を全くわかっていなかった。
「手放す」なんて、全部欲しいものやりたいことに囲まれているのに、何を手放せばいいのかなんて分からなかったし、私はやれているんだから、手放す必要なんてないと思っていた。
漢方のおばちゃんと話して、私は知った。
自分が疲れていることに。
知らず知らずのうちに頑張りすぎていたことに。
家事も育児も趣味も10あったら10できていないと気が済まなかった。
10できていることが私の0、スタート地点だった。
もちろん、10できないこともあった。
そんな時はその欠けた部分を、旦那に補ってもらうまでして、10にしたかった。
でもどうやらその考え方は間違っていたらしい。
思えば、冗談をいう余裕も、笑う余裕も、ゆっくり絵本を読む時間も、失っていた。
身体が動かなくなってただ望んだことは、
毎日笑顔で過ごしたい。
ただそれだけだった。
少し身体が回復してきたが、今までのようには動けなくなった。
話し方も、だいぶゆっくりになった。
自分は完璧ではないとやっと気づいた。
全てのことを100%にしておくことは無理だし、100%になっていなくても大丈夫だということにも気づいた。
子どものために、となんとかしがみついていた場所を手放したら、すごくホッとしている自分に気づいた。
心に余白が生まれたら、自然と旦那の冗談を笑うことができた。
家族に笑顔が増えた。
まだまだ身体は本調子じゃないけれど、ただ一つ望んだ、毎日笑顔で過ごしたいという想いは達成された。
忙しいことを理由に「できない」と言いたくないと思っているあなたへ
そんな風に思うあなたは、「できない」っていうことは、すごく勇気がいると思う。
だけど、疲れたな、ちょっと休みたいなっていう心の声が聞こえたら、それは「できない」っていう立派な理由になるよ。
心も、身体も、少しずつ、サインを出しているはず。
そのサインに、「もうちょっといける」「これぐらい大丈夫」って見て見ぬ振りをしないで。
心に余白がなくなる前に、小さなサインをしっかり受け止めて。
本当に大切なことが見えなくなったりできなくなったりしたら悲しい。
どうか、忙しいことを理由に、「できない」と言って欲しい。そして毎日笑顔で、くだらない冗談を笑えるくらいの心の余白を持っていて欲しいなと思う。
これまでの私から、これからの私へ、そして忙しく毎日を過ごす頑張り屋さんへのメッセージ、届きますように。
***
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