ハワイと総合医療センターは、ある意味同じなのだと気づいた夏
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記事:Mizuho Yamamoto(ライティング・ゼミ)
その病院の大きな建物のそばで信号待ちをするたびに、最近こことはご縁がなくて、ちょっと嬉しいかも! と思っていた。
今年13回忌だった亡き母が、人生最後の40日を過ごした場所であり、10回に及ぶ動脈カテーテルで短期入院した場所であり、父も、2度ほど入院した病院は、懐かしくもせつない場所だった。
友人夫婦3組とハワイ旅行に行っているときに、一人暮らし88歳の父が緊急入院したと、メールが来たのがハワイ滞在1週間目。みんなは帰るけれど、私は取材もあってあと5
日残ることにしていた。スマホはメールだけやり取りできる設定で、かかりつけ医とは連絡が取れた。命に別状はないと聞いて一安心。従姉に様子を聞いて、さらに安心。
手術の同意書その他も従姉がやってくれた。ICUにいるけれど、しっかりしていると聞いて、先に帰国する夫に後を託す。
ハワイのアメリカ人の友人も心配して、彼女の家から、再度従姉に電話をする。
「心配ないから、ちゃんと予定をこなしておいで」
従姉のことばにほっとする。お互い一人っ子同士なので、何かあったら助け合おうねと、彼女のお母さん(Happyな伯母さん)の老人
ホームにも週1足を運んでおしゃべり相手をしている。というか、相手をしてもらって楽しませてもらっている。
見た目60代? のもうすぐ卒寿の父は、夜中にちょっとお酒を飲みすぎた状態でトイレに起きて転倒。本人曰く、
「オレなんでこんなところに寝てるんだ?」
倒れたまま部屋の片隅で寝ていたので、布団に戻り朝までまた寝た。ただ、両手が血まみれで(実は鼻血)起きてびっくりして手と顔を洗い、おなかが痛かったので、車を運転してかかりつけ医に朝イチで出かけた。
待合室にいる父を見るなり、親しい婦長さんが、
「どうしたんですか?」
とびっくり。青白い顔で鼻の両側に傷があり生気のない顔をしていたらしい。
診察室に入り検査をしてすぐに呼ばれ、かかりつけ医から、
「今から看護師がついて行きますから、即タクシーで総合医療センターへ! 紹介状を急いで書きます」
椅子から立ち上がろうとして、ポケットから車のキーが、チャリンと床に落ちた。
「ま、まさか! 自分で運転してきたんですか?」
そのまさかを普通にやるのが父だった。
「肋骨が4,5本折れていて、肺がしぼんでいて、おまけに腸閉塞を起こしている!」
婦長さんに付き添われて行った総合医療センターで、即刻救命救急病棟送りになったという。
緊急手術後ICU、翌日からHCUとほぼ順調な回復を見せ、入院6日目に帰国し空港からまっすぐに病院へ行くと、まだHCUにはいたもののしっかり話はできた父。
「もう、トイレまで歩いて行ってるんだぞ」
早めにリハビリ開始で、看護師さんが付き添ってトイレまで一緒に歩いてくれるのだと言った。
一般病棟に移ってからは、自分で足踏み百回のリハビリをやっていたが、歩かせてもらえることはなくなった。
「HCUがよかったなぁ、看護師が多くて、扱いが特別だった気がする」
「いやいやそれは、当たり前。一般病棟はいつも手が足りなくて大変なんだよ~」
「う~ん、もう少しHCUにいたかったな」
それから順調に回復し、あっという間に退院というシナリオ通りにいかないのが、高齢者。
突然右足がまるで象のように太くなり、擬痛風の診断で足を上げておとなしく寝ているように言われてしまった。歩けないと退院できないと、父の焦りの気持ちが大きくなる。
ようやく足の腫れが引き、歩けるようになると、またリハビリと称して自分の病棟を、散歩し始めた。
ポケモンGOの日本発売のニュースでもちきりだった日の午後、病室に行くと、
「おい、左目に赤黒いボールがあって、よく見えないんだけどな」
「ん? ポケモンGOのモンスターボールじゃあるまいしねぇ。看護師さんに伝えよう」
看護師→担当医→眼科医と見事な連携プレーで、眼底出血であることが判明。
「ああ、また退院が遅れるなぁ」
レーザー手術がうまくいき、何とか目の不具合もクリア。
まるで病気のデパートのようになった父だったが、看護師さんたちは、
「病院でいろいろな症状が出たからよかったんですよ。すぐに先生に診てもらえるし」
「夜中だろうと、痛いときはすぐ言ってくださいね。トイレに行きたいときも同じく。我慢はだめですよ。我慢の結果、却って患者さんも私たちも大変になったりしますから」
そう言いながらいつも笑顔で接してくれる。
極めつけは40歳前後と思しき担当医。毎朝、開腹後の傷の消毒に病室を訪れ、消毒しながら父の好きなプロ野球の話をしてくれて、終わると必ず、
「ありがとうございました」
と丁寧に頭を下げて部屋を出て行かれる。
最初父は、礼を言うのは俺なんだけどなと戸惑っていたが、
「病院は変わったなぁ」
と感心することしきり。
確かに12年前は、高飛車な態度の看護師さんがいて母はびくびくしていたし、不愛想な応対も結構あった。担当医とは旧知の中で、思いを伝えられるのが救いだった。
ところが今はどうだろう?
ブーゲンビリアの花のような濃いピンク色や、ハワイの空のような真っ青なユニフォームをまとい病棟内に笑顔を届けながら働く人々。
「こんにちは」
と笑顔で病室を回り、患者に接するその姿は、ハワイのアロハスピリットを思わせる。
もういっそのこと、ユニフォームを素敵な柄のアロハシャツにして、院内にハワイアンミュージックを流し、
「Aloha」
と挨拶すれば、患者は更に元気になるかも?と思ったりする。
このところ、この国はどうなっていくのだろう? と不安になることが多かったが、父の入院で接した医療現場のスタッフたちに、日本はまだまだいけるかも…… という気持ちにさせてもらった。
「Aloha」は愛。愛ある心で人と接することで、だれもが幸せを感じられるような、そんな世の中になりますように。
***
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