「男は飛行機、女は空」男を自由に羽ばたかせよう
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記事:青子(ライティングゼミ)
「男は船、女は港」
この言葉を知ったのは、友人の結婚式だった。
新婦の上司が、この言葉を引用しながら意気揚々と祝辞を述べていた。
そのスピーチ内容はおおまかにいってこんな内容だった。
「男は仕事という航海に出かけるのだから、奥さんは、疲れて帰ってきた時に安心して休める港のような環境を用意してください。女性は漁に出た船を受け入れるような寛大さが必要なのです。それが夫婦円満に過ごすコツです」
後に、この言葉には「男は他の女の人にうつつを抜かしていても、最後はちゃんと戻ってくる」という隠語的な意味もあると知り、「えー、あの祝辞を述べた人は、もしや浮気肯定説を述べていたのかもしれない」とビックリしたことを覚えている。
どちらにせよ、男性本位の主張が正当化されているような気がして、この言葉を聞くと、なんとなく背中のあたりが、ぞわぞわするのだ。
だいたい、今の時代、女性も活動的で忙しい。じっと夫の帰りを待つような鈍重な港ではいられない。現実的な活動の場面では男女のスタンスは変わらなくなっているし、忍従をしいられることに喜びを感じる女性なんていないと思うし、「女は港になれ!」と言われても……ねぇ。
もう少し違うスタンスのパートナーシップがあると思っている。
私がパートナーシップを考える時、「男を自由に羽ばたかせる女」でいたいと思う。
パートナーがやりたいことがあるならば、目先の経済的なことや自分の立場、体裁など気にせずに、なんでもやらせてあげたい。
自分が足かせになって、夢へのチャレンジが出来ないとか、何かを諦めたなんて思われるのはまっぴらごめんだ。全力で応援したい。
そのためには私も自分の考えや意志を持ち、自分の世界を持っていることが大切なんじゃないかと思っている。
実際には夫に「俺、明日から漁師になる!」とか「希少な宝石を探しに行く!」と言われて、二つ返事で「あら! 素敵ね」なんて頷けるとは到底、思えないけれど、気持ちとしては、そんな日が来たときに全力で応援できるように、私もしっかり自立していたいのだ。
そんな私の理想をそのまま体現している女性がいる。
もう20年以上の付き合いになる千秋ちゃんだ。
旦那さんは岡啓輔さんという。
岡さんは、建築家でありセルフビルダーだ。
都心のど真ん中でコンクリートのビルをコツコツと作り続けている。
着工から10年を経て、今でも建築作業は続く。
岡さんは一人で黙々とコンクリートを練り、型枠を組み、打設している。
設計も施行も管理もすべて全部自分でやる、いわば自力建築だ。
その建築物は、まるで現代アートのオブジェのような奇想天外なシルエットだ。
コンクリートって堅くて重くて直線的なイメージがあるが、岡さんの建築はまるで植物がにょきにょきと空に向かって生えていくような曲線の艶めかしさがある。建築をまったく知らない私でも、それがとんでもなく異彩の部類に入ることはわかる。
岡さんにしか生み出せない世界観がそこにある。
実際に、多くのマスメディアにも取り上げられているし、世界中から見学者が絶えず、今では岡さんのことを「三田のガウディ」なんて呼ぶ人も出てきている。
周囲から注目と称賛を受け、岡さんのチャレンジは素晴らしい展開を見せている。
でも私はセルフビルダーの妻の立場から見たらどうなのだろうかと考えてしまうのだ。まったく持って余計なお世話なのだが。
この建築は、夫婦で住むための自宅だ。
ということは、10年以上、千秋ちゃんは自宅の完成を待っていることになる。
おまけに発注者も自分達なのだから、その建築を作ることでの収入は基本的に発生しない。
一般的に、妻という立場でこの状況を容認するには、なかなかハードルが高いことだと思う。夫のチャレンジを見守り、応援し続けるって、実はとても勇気と根気がいることなのだ。
でも、聞くところによると、きっかけを作ったのは千秋ちゃんだというのだ。
10数年前、岡さんが行き詰まりを感じて、人知れずこれからのことについて悩んでいた時期があったそうだ。
その時に千秋ちゃんがこう言った。
「家でも作ったら。あなたは一級建築士だから設計もできる。鳶職人や土木作業員、鉄筋工、型枠大工……みんな経験してきたんだから作れるでしょ」と。
そこから、一緒に土地を探し、セルフビルドが始まったのだ。
こんな風にパートナーの夢の扉を開けて、チャレンジするきっかけを作っていたなんて、友達としても一人の女性としても、すごく誇らしい。
そして、ずっとパートナーを応援する姿勢は変わらない。
運命共同体としてお互いを支え合うが、程よい距離感を持ってお互いの時間や場に踏み込み過ぎない。
千秋ちゃんも自分の世界を持ち、しっかりと自立している。
やっぱりこのふたりを見ても、「男は船、女は港」というのはちょっと違う気がする。
そこで考えてみた。
「男は飛行機、女は空(そら)」というのはどうだろう。
飛行機が目的地に向かって飛んでいる時も、無事着陸して空港で羽を休ませている時も、機体は常に、広い空に包まれているのである。
飛行機は、どんなに自由に飛び立っても、空の領域を超えることはない。
「男はしょせん、お釈迦様の手のひらの上にいる悟空だ」なんていうつもりはないが、でも、女性がパートナーを自由に解き放ちながらも、すべてを見通し、包み込む包容力を備えていたら、カッコいい気がする。
一方、視点を変えると、空というのは不安定なものである。
晴天の日もあれば、雨の日もある。
女性は男性に比べ変動しやすい性質があると言われる。
月のリズムによって体調も変化するし、感情も移ろいやすい。
まさに女の心模様は空模様のようだ。
パイロットは安全で順調に飛行するためには目的地までの天候をしっかり予想して、対応する能力が求められるし、時には、飛ぶべきでないと判断することも必要だ。天候を制しながら空を飛ぶ。それが優秀なパイロットだろう。
同じように、男性は女性のリズムや変化を理解して、上手に扱ってもらえるとしたら嬉しいではないか。
上手に操縦したいし、操縦されたいという願望を、女は潜在的に持っている気がする。
そして、相互に思いやったり、協力する関係が作れたら、きっといろんな問題も乗り越えられそうじゃないか。
とりあえず、1日だけ、私も空になったつもりで夫と接してみることにした。
すると、まず視点が変わる。
全体を見下ろすようなバードビューになる。
相手のことが俯瞰できるようになる。
そうすると、なんというか、必然的に自分の懐のサイズが大きくなる。
おおらかに、「まぁ、いいんじゃない」と普通に言えるようになる。
そして日常の中で、自分が感情が揺れ動くのも、身体のバイオリズムが変化することにも敏感になれたし、それが自分だと分かった。
そうか、空になってみたことで、まず自分を理解できたんだ。
私の場合、まずそこからだ。自分を知って、自分と仲良くなることから。
そして時には、自分が飛行機になるのもいいな。
夫という空に包まれてみる。
役割を変えながら、自分を知り、相手を知り、ちょうどいい塩梅の関係を育んでいく。
それが私にとっては理想的なパートナーシップだ。
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この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
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