メディアグランプリ

「だめな私にOKをくれた助産師さんから学んだこと」


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記事:クロキエイコ(ライティング・ゼミ)

「クロキさんのお産に立ち会えて、私はとっても幸せです」

2008年12月5日、午前8:00。
その人は輝くような笑顔で、大きく開いた私の股の向こう側からそう言った。
分娩台の上にギラギラ光るライトのせいか、まるで後光が差しているようだった。
女神か……!
思わず心の中で突っ込みたくなる。

私はと言えば、強い痛みと眠気と戦い、かれこれもう8時間……ぐったりだった。
痛みに耐える私のそばにずっとついてくれていたから、彼女も疲れていたはずなのに。
そんなものなど微塵も感じさせないこの言葉はなんだ。

女神パワーのおかげで、疲れ切った体中に、エネルギーが満ち溢れた。
頑張って産むんだ……!
そう思っていきみ続くこと、たしか46分ほど……息子はこの世に生まれた。

女神がいなければ、最後の一踏ん張りはできなかったし、
あんなに痛い思いをして息子を産んだ数分後に、
「もう一人産みたい」なんて言わなかったと思う。

出産という行為は、自分のすべてをさらけ出す。
他の人には見せない股間という場所はもちろん、弱音を吐きそうになる姿も、何もかも。

オンナの勘というやつなのか、その日は朝からなんとなく「生まれるかも」という気がしていた。出産前後に備えた入院グッズを詰めたカバンの中身を何度も何度も確認して、部屋のあちらこちらを行ったり来たり。夫と一緒に産院へ向かったのは、ちょうど12:00頃。

産院に到着するも、まだ出産までは時間がかかりそうだからと、私と夫は3畳ほどの陣痛室という小部屋に移された。「何かあったらすぐに呼んでね」と言われ、夫と2人きりになった。

初めは夫と談笑していたが、だんだんと痛みが強くなってきた。これが陣痛というやつか。うーん、腰が痛い……。ゴロゴロゴロ……畳に転がって紛らわそうとするけれど、やっぱり痛い。気を紛らわす方法はないかと考えた私は、おもむろに立ち上がって腰を振り始めた。少しだけ、痛みが和らぐ気がする。

夫は、そんな私の様子を見て、私の緊張をほぐそうとでも思ったのか、「タモリ倶楽部のオープニングみたいだね」と笑った。面白くなって私も調子に乗って、夫の口ずさむオープニングミュージックにあわせて腰を振った。笑えばますます気が紛れる。

アホなダンスをしているうちに、2人とも小腹が減ってきた。私はとっさに、入院グッズを詰めたカバンの中から、あるものを取り出した。それは、ブル◯ンの、ミルク風味の白いクリームで包まれた、スティック状のクッキー。

出産前の母親教室で「入院から出産まで24時間以上かかることもあるから、入院グッズの中に、さっと食べられる軽食を」と助産師さんから言われて、準備しておいたのだ。役に立つじゃないかと得意げになって、私と夫は、相変わらずタモリ倶楽部ごっこを続行しながら、そのホワイトなんちゃらクッキーを食べていた。

と、その時。

「調子はどうですか〜?」

と、助産師さんが登場。

腰をフリフリしている私の手には、ホワイトなんちゃらクッキーの包み紙……。恥ずかしい……と思う隙もなく、「こら〜! こんなの食べたら、産後におっぱい出にくくなるわよ〜! もう食べちゃだめ!」とお叱りを受けた。

妊娠中は体を冷やすからと、甘いものは控えめに、と散々言われていたのに、ここに来てやってしまった。あぁ、おにぎりでも持って来るんだった。しかもタモリ倶楽部ごっこを見られるなんて。情けない……。

こんなお恥ずかしい出来事は、まだまだ序の口。
タモリ倶楽部ごっこの数時間後にやってきた本格的な陣痛中には、さらにお恥ずかしいことがたくさん起きた。
生々しくてあまり細かいことは書けないが、上から下から、いろいろなものが出てしまいそうになったり、自分のものとは思えないような声が出てきたり……。

そんな私に「クロキさんのお産に立ち会えて幸せです」と言った助産師さんは、女神以外の何者でもなかった。

「だめなあなたでもOK、私は何でも受け止めるわよ」と言ってもらえた気分だった。

もちろん、それが彼女にとって仕事であることは分かっている。
でも、目の前にいる私が何をするかなど関係なしに、温かく受け止めてくれたことは、とんでもない安心感だった。

この時、生まれた息子は今、小学2年生になった。
ついこの間まで泣き虫だった赤ちゃんも、もうすっかり少年の顔つきだ。

見た目は少年でも、中身はまだまだ子ども。
食事中に舌を噛んだだの、失くし物が見つからないだの、ちょっとしたことでベソをかく。
つい「なっさけないなぁ…」と口にしてしまい、大げんかになることも度々だ。

そんな時、私は助産師さんの姿を思い出そうと思う。

助産師さんのように、女神のようにはなれないけれど。

「情けないところがあっても大丈夫よ」
「それでも大好きよ」
という母の姿は、きっと大きな安心感を持って世の中に出て行く土台になっていく気がする。

母もまだまだ8年目。
子どもについイライラしてしまう時もあるけれど、そんな時はぐっとこらえて。

息子が生まれたあの分娩台の向こうに輝く、助産師さんの笑顔を思い出そう。
***
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
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2016-08-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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