メディアグランプリ

失敗がネタに変わるまで


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記事:山本亜矢(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
数年前の夏の日、私はベビーカーを押しながら、子ども達を連れてUSJに繰り出していた。今回はお友達家族も一緒だ。子連れの親子なら定番のキッズエリア、どうやら今日はとても混み合っていて、歩くのにも一苦労だ。
 
ベビーカーを押しながら乳児を抱えていた私に、友人家族は上の子を預かって、別のエリアで乗り物に乗せてくれていた。そんな友人家族のところに早く駆けつけたい。そんな想いが、あの恥ずかしい体験を作ってしまったのかもしれない。
 
下の子がベビーカーで寝ているすきに、私は多目的トイレに行き、用を足すと急いで多目的トイレの扉を開けて、友人家族の元へと、キッズエリアの出口に向かって歩いていた。混み合った人混みの中をかき分けながら、お気に入りのベビーカーを颯爽と押していた。それは、当時ニューヨークで大流行りしたベビーカーで、まだ日本でも持っている人は少なかった。パラソルが装着できる可愛いそのベビーカーを振り返って見られる度に、優越感すら感じた。
 
今日も沢山の視線を感じる。
 
けれども、あれ? 今日の視線はなんだか違う。
 
恥ずかしい体験をしたことのある人ならわかるのではないだろうか? あの視線。
 
なぜか、通り過ぎる人が私を見ている。
 
そう、見てはいけないものを見た。そんな視線だ。
 
私が、その視線の先を追おうとしたその時、
 
知らない女性が申し訳なさそうに声をかけてくれた。
 
「すいません、うしろ……」
 
振り返ると、私の後ろに一筋の道ができていた。
それはまるで、モーゼの十戒の一場面のように、混み合った人混みの中、私のすぐ後ろにだけ通路ができていた。
 
私がハリウッド女優で、それがレッドカーペットならどれだけ気持ちがいいだろう。
だが、そこにあったのは、白くて細いカーペットであった。
そして、その白いカーペットの先は、私のズボンにくっついている!!
 
え? トイレットペーパー?!
 
頭の中はパニックで、考える余裕もなかった。
 
「ありがとうございます」
 
私は慌てて女性にお礼だけいうと、ベビーカーを押しながら、ズボンに挟まって
いたトイレットペーパーを巻き上げていった。けれども、巻いても巻いてもトイレットペーパーは続いている。腕の中でどんどん膨らむトイレットペーパーの山を、途中で切って捨てに行こうかと思うが、周りの人の視線を感じてそれも出来ない。あまりの恥ずかしさに、顔から火が出るようだ。とにかく誰とも視線が合いませんように!
 
慌てて巻き上げているトイレットペーパーの先は、開いたままになっている多目的トイレの扉の奥だ。その先はトイレットペーパーホルダーへと繋がっていた。まさか、私とずっと繋がっていたの?!
 
いったい何が起こったのか?
使用済みトイレットペーパーをズボンに挟んだまま私は歩いていたのか?
恐ろしい考えが頭をよぎった。
いやいや、そんな筈はない。
 
名探偵ワタシによると答えはこうだ。
私はズボンをあげるときに、だらりと垂れていた予備用トイレットペーパーをズボンと同時に挟みこんだ。それに気付かず、私は出発。カラカラとトイレットペーパーは伸びていき、幸か不幸かかなり長い距離切れずに私と繋がっていた。
 
そして、ホワイトカーペット。
 
穴があったら入りたいとは、まさしくこの時に使う言葉なのだろう。あまりの恥ずかしさにしばらくトイレから出ることができない。
 
ふと急に、笑いがこみ上げてきた。
誰かに聞いて欲しくてしょうがない気持ちになった。
もはや、これはネタでしかない!!
 
どんな自分でいるかは、自分が決めている。
ショボくれた顔で、恥ずかしそうに出て行くのも自分なら、最高のネタをゲットしたと思って、意気揚々と出て行くのも自分。
 
私は後者を選んだ。
 
そして、友人家族にそのネタを話した。
友人家族だけでなく、子ども達まで、涙を流しながら笑っていた。
 
私は、いつの間にかとっても幸せな気分になっていた。
最高にラッキーな人間のような気すらしてきた。面白いブログのネタまでできたと心の中でほくそ笑んでいた。
 
私はいつからこのように前向きに捉えられるようになったのだろうか?
 
私が関西に来て驚いたのは、付き合っていた関西人の彼氏(夫)に、
「その話、オチある? オチのない話はしたらあかんねんで」
と言われたことだ。衝撃すぎて、同僚の子にも質問した。どうやら、それは関西の常識らしかった。
 
それから、失敗した話はネタとして彼氏に話すようになった。彼は、おもしろがって聞いてくれた。当然、このネタも『ホワイトカーペット』 として今も語り継がれている。
 
失敗を誰かに話したり、ブログに書いたり、そうしてネタにしてアウトプットすることは、その失敗に意味を見出しているのかもしれない。
私はそう思うようになった。
誰かの笑いになったり、役に立ったりすることで、私の失敗が誰かを救っている。そう考えると、失敗している自分にも価値があると思えてくるから不思議だ。
 
失敗はネタにしてなんぼ!
 
関西人の自己肯定感の高さは、ここにあるのかもしれない。
 
 
 
 
***
 
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2022-06-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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