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記事:クロキエイコ(ライティング・ゼミ)

 

もう少しさ、肩の力を抜こうよ。

今なら、あの頃の自分にそう語りかけるだろうか……。

 

 

世は平成。

家ではいつもテレビはつけっぱなし。

何か面白い番組がやっていないかと、無駄にチャンネルをまわす。

友達とはゲームの世界に没頭する……スーパーファミコン全盛期だった。

 

自分はそんな時代に育っておいて、子どもが生まれてみると、同じ環境を与えることに激しい抵抗があった。与えられたものでしか遊べない子どもになってしまうのではないかと怖かった。実際、自分がそうなってしまっているという実感が、少なからずあったからだ。

 

 

息子の友達の多くは、なんとかレンジャーや仮面ライダーなんちゃらに夢中になっていた。遊ぶ時は、たいていプラスチック製のガチャガチャした冷たいおもちゃ。私はそういうものを徹底的に息子から排除しようとしていた。あの妖怪ウォッチブームにも全くのっからずにここまで来た。

 

 

代わりに息子は、家だろうと外だろうと、時間さえあれば絵を描いた。

絵本もよく読み、物語の世界に没頭していた。

その集中ぶりときたら、行きつけの図書館司書にも感心されるほど。

 

そんな息子は、いや、私たち夫婦は、おそらくちょっと変わっていると思われていた。道路掃除夫ベッポほどはいかなくとも、時代に逆行した生き方だと見られていたと思う。それでも私たちは、親バカかもしれないが、自由で独創的な絵を描く息子を見ては、自分たちの子育ては間違えていないと信じていた。

 

彼の住む世界を大事にしたくて、必死だったのだ。

 

 

しかし息子は、小学校に上がる前あたりから、テレビやゲームの世界にどんどん魅せられていった。あんなに没頭していた絵本の世界からも、だんだんと離れた。小学二年生となった今では、「つまんない。退屈。何して遊んだらいいの?」が口癖だ。

 

どんな時も、どんな場所でも、自分で遊びを見つけて楽しむ子だったのに……。

 

 

 

 

『モモ』には、そんな息子の姿が描かれているようで、ドキッとした。

 

「時間がない……」「忙しい……」

この本で大人たちが口にする言葉は、家事や仕事に加え、小学生に与えられる宿題の多さに、私も毎日のように発してしまっている。

 

小学生は、本当に忙しい。

下校した後は、親が仕事から帰るまで学童クラブで過ごす。宿題はたいてい算数ドリル2つと国語の教科書の音読とか、そんな感じ。全て終わらせるのに必死で、4歳の頃にあんなに大好きだった『がまくんとかえるくん』のお話を読む声には、感情などこもっていやしない。加えて、週に2回のサッカーと、週に3回の剣道。これだけでもうヘトヘトで、自分で遊びを考えつく余裕は残っていない。

 

灰色の服に身を包まれた時間泥棒たちが現れてから、子ども達の自由な遊びをどんどん奪っていく大人達。

完全無欠なお人形ビビガール、「子どもの家」、「将来のためになる」勉強……子どもの周りに描かれたものは、どれも今の子どもたちへの風刺だ。

 

 

 

 

一体、この結末はどうなってしまうのだろうか……。

私は、まるで今の自分の子育ての行く末を知りたいような知りたくないような気持ちで、どんどんページをめくった。

 

 

 

 

実はこの本は、私が小学校高学年の頃、母親に散々勧められていた。でも、勧める理由は「将来のためになるから」だったし、興味は持てなかった。そして何より、物語というものをどう楽しんでいいのか、分からなくなっていたのだ。小学校低学年でゲームにはまっていた私はすでに、与えられたおもちゃでの楽しみ方しか分からなくなっていたから。

 

それからも物語の楽しみ方は分からず、ファンタジー作品はずっと苦手だった。読み始めても、途中で読み疲れて、しおりを挟みっぱなしで先に進まないまま。それなのに、ものすごい勢いで『モモ』を読み終えた自分にはびっくりした。ファンタジー作品に没頭したのは初めて。そして、「どうしよう、これからの子育て……」と悩むことも多い今のタイミングでこの本に出会えて、良かったと思った。

 

 

結局のところ、子育ての答えが見つかったわけではない。

 

でも、『モモ』は私にとって、子育ての指針となるような本となった。

 

 

 

「ねえ、お話をして。」

そういえば、息子が小学校に上がる前は、よく作り話をせがまれていた。

観光ガイドのジジにお願いをするモモの姿を見て、思い出した。

 

正直、作り話をする時間は苦痛だった。そもそも物語が苦手な私だ。それに、絵本のほうがお話として完成されているし、絵本のほうが私も楽しいじゃないか。でもいくら私が絵本を読もうとしても、「お話がいい」とねだられることも多かった。

 

今 、5歳年下の娘も、やはり私の作り話が大好きだ。ぽつぽつ話し始めると、一人で漫画の世界に没頭していた息子も、近くに寄ってくる。

 

今じゃ絵本を読んでいてもまるで寄ってこない息子が、私のたいして面白くもなさそうな作り話には反応するのが不思議だった。でも、ファンタジーの世界に連れて行くことで、忙しい日々の中でも、自由な空想遊びを楽しむことができるのかもしれない。

 

 

 

そうだとすれば。

息子と娘に、 2人だけのための物語をたくさん語ろうじゃないか。

私の中で、静かに耳を傾けてくれるモモに語りかけるように。

 

 

時代に逆行した子育ては、もはや難しい。

テレビもゲームも、子ども達のコミュニケーションに必要なことなのだ。

あんなに必死になって排除することはなかったかもしれない。

もう少し、肩の力を抜いてさ。

 

 

 

彼らは、あっという間に大人になってしまうだろう。

それでも、彼らの中に住むモモをずっと大切にできますように。

 

 

私たち親子のファンタジーは、始まったばかり。

 

***
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
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2016-08-18 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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