メディアグランプリ

「うちはいつも民宿です。いつかホテルにとまってみたいです」と作文に書いたら……


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記事:中村美香(ライティング・ゼミ)

 

息子が7歳にして、初めて、泊まりで家族旅行をした。私と旦那の実家が、都内と川崎だから、帰省はいつも日帰りで、他にも取り立てて泊まらなければいけない用事もなかった。子連れで泊まりとなると、何を準備すればいいのか、電車の中でぐずらないか、宿でちゃんと眠れるのかなど、考えれば考えるほど気が重かった。

 

日帰りの子ども向けのイベントや、博物館などにはそれなりに連れて行ってはいた。けれど、もう小学2年生だし、そろそろ、泊まりでどこかへ連れて行ってあげたいと思い始めていた。

 

以前から、息子が、大阪の万博記念公園にある“太陽の塔”が見たいと言っていた。息子は、岡本太郎が好きな私の影響を受けて、小さい時から、彫刻を見るのが好きだった。最近テレビで、2年後に“太陽の塔”の内部を公開するために、この秋から改修工事に入ると知り、なんとかその前に一度見せたいと思った。あんなに重かった腰が急に軽くなり、急遽、大阪・京都の一泊の家族旅行が決まった。

 

実際に出かけてみると、息子は、新幹線自体を楽しんでいた。新幹線に乗るのは、昨年、日帰りで伊豆に行く時に、東京から小田原まで乗ったのに続いて2回目だった。けれど、長距離は初めてで嬉しいようだった。息子のこの旅のお目当ては、“太陽の塔”と“京都鉄道博物館”。しかし、せっかく大阪に行くのだから、大阪らしい“道頓堀”はせめて見てほしくて、かなり慌ただしく電車で移動した。

 

“太陽の塔”は高さが70メートル。私自身も約10年前に初めて本物を見たときは

「わー!」

と声が出て、ドキドキしたが、息子も同じような反応だった。“太陽の塔”を見上げながらぐるりと一周し、いろんな角度から写真をたくさん撮った。10年前に来たときはなかった1970年の日本万国博覧会の出店施設であった鉄鋼館を利用した【EXPO‘70パビリオン】もじっくり観覧し、最後は、“太陽の塔”に映像を映し出すプロジェクションマッピングも見ることができた。

 

楽しんだ分、予定よりも大阪からの出発が遅れた。京都への移動にはかなり時間がかかり、ようやく宿に着いたのは、21:00を過ぎていた。普段、遅くとも19:00には家にいる息子にとって、暗い町並みはワクワクする世界のようだった。

 

本当は大阪に泊まりたかったけれど、お盆休みの週で、なかなか手頃な値段の宿が取れず、ようやく京都の二条城前に取れたこの宿は、清潔にはしているが、設備は古いペンションだった。3人部屋を取らなければという思いだけだったので、狭いシングルベットが3つ離れて置いてあるつくりだと着いてから知った。

 

息子に

「もっと広いベッドか、畳の部屋がよかった」

と言われて、昔、私が、作文に

「うちはいつも民宿です。いつかホテルにとまってみたいです」

と書いて、バツが悪く感じた両親が翌年ホテルに泊まらせてくれたことを思い出した。

 

家族旅行の目的は、いったいなんだろうか?

 

一人旅や友達との旅行、または、子どものいない時の恋人同士や夫婦の旅行は、本人たちの希望や目的に合わせ、それぞれ楽しめばいいが、子連れの家族旅行となると、やはり主役は子どもになってしまう。

 

今回も、“道頓堀”に行きたい! というのは私の希望だったけれど、息子に見せたい思いからだったし、“太陽の塔”“京都鉄道博物館”は完全に息子のためだった。

 

常に、息子が満足しているかを気にしている自分に気づいて、これは、完全に接待だと感じた!

 

家族旅行の成功って何だろう?

 

子どもが満足することだろうか?

 

子どもが満足して

「楽しかった」

と笑顔で言ってくれたら、親としては成功だろうが、そうやって成功した旅行は、子どもたちの記憶にしっかりと残るのだろうか?

 

自分自身の経験からすると、鮮明に記憶に残っているのは、実は、何事もなく楽しめた旅行ではなく、何かしらトラブルがあったり、不快に思ったりしたことのような気がする。

 

せっかく民宿ではなく、ホテルに泊まれたあの旅行も、通された8畳の部屋には風呂がついてなかった。当時、父・母・兄・私の4人家族だったが、家に風呂がなく、銭湯通いの毎日だった。だから、大浴場よりも部屋の風呂に憧れていて、それがなかったことにがっかりした記憶がある。確か、ホテル側に交渉し、少し部屋は狭くなるがそれでよければと、風呂つきの6畳の部屋に変更してもらった。そして

「これが、最初で最後だね」

と言いながら、家族全員で、部屋のその狭い風呂に一緒に入ったのだった。

 

こんなこともあった。

 

私が小さい時には、毎年、海水浴に連れて行ってもらっていた。眠いだろうからと、父が乗用車の後部座席の足の部分に一斗缶をいくつか置き、毛布を敷き詰めて簡易ベッドを作ってくれて、早朝から千葉の房総の海へ向かった。じゃんけんに負けて、兄に、椅子の部分を奪われ、私が一斗缶の簡易ベッドに横になった。寝心地が悪く、決して、満足なんかしていなかったし、海だってあまり好きじゃなかったけれど、今思えば、親の愛情を感じるし、記憶に残っている。

 

息子が慣れない場所で眠れない夜を不安に過ごしたことや、私が、息子が夜中にシングルベッドから落ちないかと、1時間置きに起きて寝不足になり、帰りの新幹線で体調を崩したことなど、ハプニングを体験したり、トラブルに対して家族で協力し合って切り抜けたことが、意外に息子の記憶に残るのかもしれない。

 

そして、家に辿り着き

「やっぱり、家が一番だね」

と笑い合えることが財産なのかもしれないと思った。

***
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2016-08-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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