彼女の熱狂が本気でうらやましくなった
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記事:小矢さま(ライティング・ゼミ)
一つのことを極めた人は、同じような理解に至る。
極めることは、何でもいい。
仕事でも、スポーツでも、芸術でも、子育てでも、旅でも、読書でも、文章でも。
仕事や遊びの区別なく、ある一定期間そのことに全人生をかけた人の言葉は深い。そして、分野が違うのに、意外にも共通項がたくさんあるのだ。
先日、料理一筋で生きてきた女性とお話しする機会があった。
現在、料理教室を主宰しているその人は、子どもの頃から料理が大好きだったそうだ。
彼女のお母さんは出汁からしっかり手作りする人だった。お母さんはいつも台所にいて、手を動かしていた。季節ごとに丁寧に作られるみそや梅干し、らっきょう漬け。そんな環境で育ったので、彼女にとって料理をすることはごく自然なことだった。大学でも栄養学を学び、日々研究し続けた。今では料理教室でオリジナルの健康レシピを教えている。好きなことと、仕事が完全に一致しているという恵まれた人だ。
私も日々料理はするが、彼女のように大好きと思ったことはない。できれば効率良く時間短縮したいと思っている方なので、簡単レシピばかり探してしまう。
私は、彼女にお料理があまり好きでないことを告白した。
「どうしたら、ストレスなく料理ができるようになるかしら?」
「そういう方は割と多いのよ」
彼女の料理教室にも、料理が苦手という女性がけっこう来るのだ。結婚を機に習いに来る人も多い。
学校の勉強や仕事で忙しい女性にとって、家事はできるだけやりたくないことになってしまっている。独身時代は母親が娘の代わりに家事全般をやってあげることも多い。だから、いざ結婚というときになって慌てるわけだ。
「お料理はとってもクリエイティブな作業なのに、本当にもったいないです。
料理が嫌いという女性は、いちいちレシピを見ないと料理がつくれないので、面倒と感じる人が多いみたいですね。料理の構造を知っていれば、即興で何通りも作れるんです。材料もレシピと同じである必要はなく、冷蔵庫の中のもので作れるんですよ。応用が効かない人が多いんです」
私もレシピがないと発想が浮かばない方なので、その奥義を伺うことにした。
彼女の話しを聞いているうちに、これは、一つのことを極めた人が言う、「創造」そのものじゃないかと思ったのだ。だんだん彼女の言葉が、賢者のそれのように聞こえてきた。
「料理のレシピ本を思い出してください。必ず完成されたお料理の写真がどーんと載っていますよね。手順の写真が載っているのもありますが、完成品が載っていないレシピ本はまずありません。つまり……」
つまりこういうことだ。
よくできた料理本は、完成後のレシピ写真が優れている。食べたくなるような、五感を刺激する写真。「ああ、こんなの食べたい! 食べさせたい!」と思うからこそ、人は料理をしようと思うのだ。
つまり、料理に最も重要なものは、「食べたい!」と本気で思えるかどうかということらしい。
ということは、料理に限らず、徹底的に欲しいと思えるように最終ゴールを明確にイメージできるなら、必ず手に入るということだ。どのようにそれを手に入れるのかということは考えなくていい。いや、むしろ最初は論理的な脳を黙らせておいた方がいいのだ。
思いのままゴールを描くのだ。
次はどうなるだろう。
料理の場合、結果を得るために、どういった材料が必要かを考える。魚か肉か、野菜か、穀物か、乳製品か、醤油かみそか、みりんか、塩か、砂糖かなど。何かを創造するときには、何が必要かを思いつく限り書き出すのだ。その材料を、もう持っているかもしれないし、これから手に入れなくてはいけないかもしれない。でも、材料がわかったら、買い物へ行くべきか、代用ですませられるか、誰かに頼むべきかわかる。
さあ、材料がわかったらどうなるだろう。材料は加工されて初めて、理想の料理へと変貌する。加工には、加熱、発酵、冷却などあるが、一番ポピュラーな加工は加熱することだ。そして、加熱の中に、焼く、炒める、揚げる、蒸す、煮る、の5つがある。さあ、いつでも最終イメージを思い出そう。そうすれば、加熱の5種類の中でどれを使うべきか選択できるようになる。
最後は、味付けだ。甘味、酸味、塩味、旨味、苦味の中で、自分が最も美味しいと感じる割合で調味料を使っていく。割合にはだいたいルールがある。そのルールにそって、自分の味覚に一番合う割合を自分で会得していくのだ。
「料理が嫌いな人は、料理の構造を知らないんです。だから難しく考えすぎてしまい、レシピがないと動けなくなっています。最低限守るべきルールを知ったら、あとは最初に自分が作ろうと思ったイメージを頭から離さず、再現していくだけでいいんです」
つまり、現実を創造するということはこういうことなのだ。
最初に最終形(理想形)を強烈にイメージする。一番重要なポイントは、できるかどうかは度外視で「決める」ということだ。
そのあとで、材料と加工法を考えていく。スモールStepで考えていけば、たいていわかる。本気で決めることさえできれば、やり方は後付けにすぎない。
料理をやっていると、何かを現実化するということの意味がわかってくるそうだ。体感を繰り返すので、料理を構成している材料が見えてくる。扱い方がわかる。勘が働くようになる。いいことずくめなのだ。
ジャガイモ、ニンジン、玉ネギ、肉という材料をつかっても、最後の味付けがカレーか、クリームかで全く違う結果になる。そこが料理の面白いところだ。
そんな風に、キラキラと熱く語る彼女を見ていて、やはり、一つを突き詰めた人は、同じようなことを言うなあと感心した。
一流の人が行き着く先が同じなら、何を選ぶかを心配する必要はないのかもしれない。
問題は、選んだものを続ける情熱だ。
彼女の熱狂が本気でうらやましくなった。
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