ジムで走る人はハムスターみたいだと思っていました
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記事:ひつじ文庫(ライティング・ゼミ)
大きなガラス窓から見えるのは、ずらっと横に並んだマシン達。音楽を聴いたり、テレビを見ながら、思い思いのウエアとシューズで走る人々。
昼間なら、一体どんな仕事をしている人だろうと勝手に想像し、夜なら、仕事終わりにまで走って熱心だなと勝手に感心します。
前からこの光景はちょっと滑稽だと思っていました。まるで、ケージの中の回し車で走るハムスターのように見えませんか?
景色も変わらないのに、どうしてそんなに一生懸命走れるのでしょう。確か、そこに山があるから登るのだと言った人がいましたが、そこにジムがあるから走るのでしょうか。
わたしは専門家ではありませんが、家の近くを少々ジョギングしていたことがあるので、何となく走ることのメリットはわかります。
お腹が空いて、ご飯が美味しく感じられる。
血液やリンパ液の循環が良くなる。
ほどよい疲労感で、よく眠れる。
ふくらはぎに少し筋肉がつく。
ほんの少し二の腕がすっきりして、お肌の調子も良くなったような……。
定期的に続けている間は、翌日・翌々日の筋肉痛も少なかったと思います。
会社の先輩が「オンナの敵は、時間と重力」と言っていましたが、何となくその実感が湧いてきたこの頃です。
年齢を重ねるにつれ、基礎代謝も減る傾向にあることから、意識的に運動をしなければという、半ば強迫観念に駆られています。
自分でも運動不足を実感していますから。
それだけ流行っているのなら、理由があるに違いないと、思いきってわたしも近くのジムでハムスターを演じてみることにしました。
当たり前のことですが、ジムは全天候型で天気に左右されません。
雨の日も風の日も関係ありません。ジムまで行くのが少々億劫かもしれませんが、着いてしまえばこちらのものです。
営業時間も比較的長くなっていますから、お気に入りのマシンが誰かに占領されていなければ、好きなだけ走れます。
もし空き待ちが必要になったら……あとどれくらいしたら交代してくれるのでしょう。公園のブランコを待つ子どものようですね。幸いにも今の所そうならずに済んでいます。
ジムでは、空気と温度が適度に管理されています。排気ガスの心配もありませんし、夏の暑さや、冬の寒さとも無縁です。
舗装された道路に比べれば、足への負担も少ないはずです。路肩の石につまづいたり、微妙な傾斜に足首を捻ってしまうこともないでしょう。
自分が設定した一定のペースで走れます。
むしろ、走らされているという表現の方がふさわしいかもしれません。他の歩行者やペット、自転車や車、信号に邪魔されることはありません。
マシンで走ることは、自分1人の世界のようですが、隣で誰かが走っているときの方が、実は張り合いがあり頑張ることが出来ました。
走りながら、鏡で自分のフォームを確認する振りをして、隣のマシンをチラ見。
早歩きなら、膝の負荷を考えているのかな、走るペースが速ければ、上級者かなと分析します。
別に言葉のやり取りはなくても、お互い自分のペースを守って頑張れるものです。
これまで思いつくままに挙げてきましたが、なかでもジムで走る1番の魅力は、自分で速度が調整でき、明確な数値が測定できることにあると思います。
「週末は公園のトラック10周」よりも
「1時間で10キロ」の方が達成感があります。
ひと口に公園といっても、近所の児童公園から代々木公園まで様々ですから、一概に比較はできません。
携帯電話や腕時計にも同種の機能はありますが、わたしの知る限り、それらは運動の結果を記録するだけです。
マシンに希望の速さを入力すれば、直ちにその環境が提供されます。まだ使いこなせていませんが、速度に強弱をつけられる様々なモードがあるようです。
マシンで数値(時間、距離、消費カロリー)が計測できることから、自分で毎回目標を設定、達成感を得やすいと思うのです。今日は沢山走ったな、とハムスターは思っているはずです。
そして、絶対にその成果を誰かに話したくなると思うのです。
種類にもよるようですが、ハムスターは「寂しがり屋」なので、構ってあげないと巣に引きこもってしまうと聞きました。
「週末はジムで走ってるんだよね」と自分の目の前で言う人は、ちょっとした自慢屋に見えてしまいますが、人伝てに聞くと何となく意識高い系の人の感じがして、決して悪いものではありません。
少し前からぽっちゃり体型の友人(男性)がFacebookにランニングマシンの記録写真を載せ始め、それがしばらく続いていました。
ジムで走る人は、一見マイペースで単独行動が出来る人の様に見えて、実は「構ってちゃん」で、ハムスターのように「寂しがり屋」ではないかと思います。
ですから、知人からジムで走る話を耳にしたら、物好きだなと一蹴しないでいただきたいのです。
先の友人は、回し車で一生懸命走るハムスターに重なりました。これは温かく見守ってあげようではありませんか。
かく言うわたしも、ハムスター歴2ヶ月を迎えました。つい周囲に走っていることをこぼしてしまい、またちょっとした欲も出てきて、大して速くもないのに大会にエントリーしようかなと思っている位です。
中学生のわたしは、冬の寒い時期の持久走が嫌で嫌でたまりませんでしたから、お金を払って大会にエントリーするなど、全く想像もしていませんでした。
おそらく、走ることによりメンタル面のプラスもあるのではないでしょうか。
どのご家庭のクローゼットにもTシャツに短パン、それに靴箱には、しばらく履いていない運動靴があると思います。
もしよろしければ、あなたも騙されたと思って、一度ハムスターになってみませんか。
隣の人より速く走ろうとか邪念を持たなければ、きっと楽しく走れると思います。そうそう、走り過ぎはケガの元ですので、市民ランナーは月120キロが目安だそうです。健闘を祈りますね。
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