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メディアグランプリ

空気が読めなかったので親友ができた話


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:松田Tommy(ライティング・ライブ東京会場)
 
 
「わたし、アカサカっていうの! よろしくね! 演劇部入るの? 緒に入ろうよ!」
中学1年、入学した次の日に私はカタオカに声をかけた。
 
入学式の日の翌日。
クラスで自己紹介があり、カタオカは「演劇部に入りたいです」と言っていた。
マンガの影響で演劇部に憧れていた私は「同じ仲間がいた!」と狂気乱舞して休時間に入るやいなや、早速彼女のところへ行った。
カタオカは最初とても驚いた顔をしていたが、すぐに「ありがとう。一緒に入れると嬉しいな」とニッコリ笑ってくれた。
白くて丸い顔、大きな目、クルクルとした天然パーマ。うん、かわいい子だな、と思った。
 
小学校から中学校にあがる、それは子どもにとっても親にとっても一大イベントだった。特に私の時代は中学校が荒れていて、進学する学校はエリアでも有名なマンモス校でしかも不良が多いことで有名だった。
どのくらい荒れていたかというと、尾崎豊の「15の夜」って歌知ってます? あのイメージでだいたいあってる。
 
地域の中でもやや郊外にあり、のんびり育った私たちの小学校では
「中学に入ったら気を付けること・不良に目を付けられないために」
なんで冊子が配られるほどだった。今思い出しても笑っちゃうけど。
なんせ、1学年15クラスもあるマンモス中学で、小学校も4校が一斉に同じ中学に入学するのだ。どんな子がいるのか分からない。
おかげでロングヘヤーだった私は「派手にしていると先生や不良に目をつけられてトラブルになる」という理由でショートカットにさせらたほどだ。
私にとっても一大イベントだったはずなのだけど、残念ながら鈍い子どもだったので「そっかー、ふーん」くらいにしか感じていなかった。
親からは口酸っぱく、「いろんな子がいるから。気を付けてね!」と言われていたのに「そっかー、ふーん」で全部流していた。
 
カタオカとは部活の見学に行こう! と盛り上がったその日からずっと一緒だった。
もちろん演劇部には一緒に入ったし、お弁当も一緒に食べた。
休みの日にも遊びに行った。塾も同じところに入った。
ちょっと控えめだけど優しくて他人の悪口を言わない、真面目な子。それが私のカタオカの印象だった。いい子と友達になれたな、と思っていた。
 
しかし、だんだんと友達が増えてくると、周りがカタオカのことを避けていることに気が付いてしまったのだ。主にカタオカの出身小学校の人達。
ついに直接忠告してくる人が出てきた。
「あのこ、小学校の頃いじめられてたんだよ。あまり仲良くしない方がいい」
なんなんだ。これ。
 
でも、周りがそう言ってもカタオカはすでに大事な友達で、今更「もういいわ」とか言えるはずがない。ここも「そっかー、ふーん」で流した。
 
元・いじめらめっ子と仲良くしているアカサカ。周りにはそう見えていたのかも知れない。そういう立場は結構目立つのだ。先生や親が心配していた「不良に目をつけられる」ことも十分考えられた。しかしここでも多いなる鈍感力を発揮し、すり抜けた。
 
小学校の友達にクドウという子がいた。ものすごく仲が良かったわけではないが、遊び友達の一人だった。おうちにも行ったことがある。
クドウは中学に入ったら突然不良の先輩たちと親しくし始めた。理由は分からなかったが、彼女なりの都合があるのだろう。もう一緒に遊ぶことはなさそうだけど、顔見知りだから挨拶しないのもおかしい。そう思ってクドウが不良の先輩たちと一緒にいるときにも「おはよう」だの「バイバイ」だの声をかけていた。クドウは迷惑だったのかもしれない。返事がきたのかは覚えていない。
いつのまにか今度は「アカサカには不良の友達がいる」と噂になった。
正確には元・友達だが。めんどくさいのでそのままにしておいた。
そのせいか? 怖い先輩から呼び出されることもなく日々は過ぎていった。
 
カタオカからは周りの雰囲気が変わったころ、「わたし、小学校でいじめられていたの」と聞かされた。
親しくなるほどに自信のなさ、周りを気にしすぎることが気にはなっていた。
もしかしていじめが原因なのかも、とも思った。でもここでも「ふーん、そっかー」と気にしないことにした。
 
小学校のことは知らない。今目の前にいるカタオカはよく子が付く優しい子だった。そして私を大事な友達と言ってくれる。それで十分じゃなない?
 
カタオカとは同じ高校に進学し、卒業後の進路は別々だったけど相変わらず仲良しだった。
一時期彼女がモラハラ男と付き合っていて会えない時期もあったが、まあそういうこともあろう、とここも得意の「ふーん、そっかー」で済ませた。
就職し、結婚して住まいを構え、歩いて遊びに行かれる距離から電車で1時間半の場所になり、それぞれ生活スタイルが家族優先になってもSNSで連絡をとり、変わらず親しく付き合っている。
さすがに鈍い私でも分かる。
これが親友じゃなかったら何を親友と言うのだろう?
 
カタオカが前に話してくれた。
「あのときアカサカが私に声をかけてくれたことは一生忘れない。感謝している」
私は言葉を失った。そんな大層なことじゃないのに。15歳の私はこの子と友達になれたらいいな、と思っただけだったのに。でもあの一言があったから、空気が読めない鈍感な子だったから、親友が出来たのだ。
自分に「ナイス! 鈍感力!」と言ってあげよう、と思う。
 
 
 
 
***
 
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2022-09-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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