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メディアグランプリ

できれば嫉妬は食べない方がいい。わかってはいても、時々無性に食べたくなる。


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記事:木村保絵(ライティング・ゼミ)

 

「正直、嫉妬しました」

最近、何度もその言葉を耳にした。

しかも、10代の頃の思い出話をしているわけじゃない。

いい大人達が、今現在の心境をストレートに表現している。

 

「俺、マジで嫉妬するんすよ。自分に無いものを持っている人を、打ち負かしたくなるんすよ」

20代の若者は、本当に悔しそうな顔をして、全身で己の気持ちを表現している。

「どうしたらいいか、わからないんすよ」

 

 

嫉妬かぁ。

まるで映画に出てくる中年の女性が「恋、かぁ……」と遠くを見つめているような感覚だった。

嫉妬、嫉妬、嫉妬。うーむ。

わたしは元来、負けず嫌いで嫉妬深い性格だ。

「俺は海賊王になりたいんだー!!」とジタバタしている彼のように、

わたしにも「負けたくない! ふざけるな! うぉーーーー!!」と毎日燃え上がっていた時期があった。

 

それなのに。

「嫉妬」という言葉を聞いた時、「鳩に豆鉄砲」状態になった。

「へっ? 嫉妬? あら、まぁ!」

 

「嫉妬しました」

「私も嫉妬しました」

そう伝え合ういい大人達の様子を「ほうほう」と言いながらただ眺めているしかなかった。

 

「すごい」

他の人がメラメラしている時、わたしはただただ感動し、憧れの気持ちを抱くだけだった。

嫉妬を抱けるようなところまで、わたしは到達していなかった。

「そうか、これは嫉妬するところなんだ。ファンになってる場合じゃないんだ」

そう思うと、だんだんと恥ずかしくなっていた。

 

奥歯をギリギリと噛み締めながら、肩で息をして、爪が刺さるほどに拳を握るあの感情。

「どうすればいいんすか!」

その感情を抑えられないという若者への問いにうまく答えられず、わたしは自分の頭の中に入って、答えを探してみた。

 

えーと、嫉妬、嫉妬。

あぁ。そういえば。

嫉妬と言えば、思い出すことがある。

それこそまだ私も20代だったその頃。

嫉妬の正体を知りたくて、ちょっとバカみたいに熱中したことがあった。

 

「あたしは好きだよ」

尊敬してやまない友人がある日、唐突に言った。

それこそ、「鳩に豆鉄砲」状態だった。

 

「な、なんで?」

正直、理解できなかった。

彼女は周囲に猛烈に愛されている。

仕事を掛け持ちして休みの日も働き続けて疲れているはずなのに、いつも誰よりも笑っている。

ちっちゃい体で全速力で走り回って、体が弱いから倒れちゃって、それなのにまた走り回る。

だけど、恨み言や悪口は決して言わない。目に涙を浮かべながらも、最後までやり通す。

悩みを相談するときには、いつもより少し高いやさしい声で「うん、うん」って真剣に聞いてくれる。

それこそ、出会ったばかりのころ、わたしは彼女に嫉妬していた。

 

「なんで、そんな素晴らしくいられるの? 嘘でしょ。無理してますって言ってよ」

そう思っていた。でなければ自分が、意地悪な怠け者だと思われてしまう。

 

だけど、彼女の全力投球の愛情は、そんなくだらない嫉妬を一気に吹き飛ばす。

「大好き。まじで好き」

いつからかもわからないくらい、自然にそう思っていた。

 

だから、彼女のその告白は、衝撃だった。

 

「あたしは好きだよ」

「な、なんで?」

「だって、悪口を絶対言わないもん、紗栄子は」

 

え。

 

もう、豆鉄砲どころか、度肝を抜かれた。

 

あ、あの芸能人の紗栄子のことを言ってる?

嘘でしょ。

正直、わたしは好きじゃなかった。

いや、むしろ嫌いだった。

 

だけど、わたしの知る限り誰よりもやさしく、誰よりも愛情深い彼女が、

「あたしは好きだよ」と

ハッキリと言ってのけた。

 

メラっ

 

わたしの嫉妬心に火がついた。

なんで? なんであの子に好かれるの?

 

メラメラっ

 

わたしだって、わたしだって好かれたいのに! わたしの方が仲良いのに!

 

悔しくなった。

大好きな友人は、きっとわたしのことを「あたしは好きだよ」とはわざわざ言ってはくれないだろう。

彼女には大事な友人が多すぎる。

わたしなんて、三軍どころかその補欠にも入れない。

 

なのに、なんで。

なんで好きだって言われてんのーーーー!!!

 

 

メラメラメラメラっ

 

 

テレビやパソコンなど画面越しにしか見たこともない芸能人に、わたしは完全に対抗心を燃やしていた。

 

なんで好かれてるの?

てかなんでわたしこんなに腹立ってるの?

わたし、嫉妬してる?

え、嫉妬って、何?

てか、このイライラ嫌なんですけど!

 

それから間もない休みの日に、わたしはある行動に出た。

 

それは、

紗栄子のブログを、最初から全部読む。ということ。

 

今考えれば、おかしなことをしたと思う。

ちょっと熱くなりすぎていた。

数年前のこととは言え、彼女のブログは何年間もほとんど毎日更新されていた。

相当な投稿数があったから、確か、休みの半日を費やした記憶がある。

まさに若気の至り。

嫉妬心が引き起こした異常な行動だった。

 

でも、怯えなくて大丈夫です。

「あ、あの人、もしかして……」と、背筋をゾワッとさせなくても、大丈夫です。

 

彼女のブログをすべて読み終えた時、あのメラメラと燃えていた嫉妬心は、静かに鎮火しました。

 

「なんだ。普通の若い女の子じゃん」

 

わたしはそう思っていた。

ガリガリ君を食べ終えて「なんだ、またハズレじゃん」と

何も書かれていないあの木の棒につぶやくときのように、ただ静かにそう思っていた。

 

可愛い物が好きで、オシャレが好きで、美味しいものも大好きで、

「もっとキレイになりたい!」と思って運動したりコスメにはまったりサプリ飲んだり、

「モテたい! 愛されたい!」と思って、メイクや見せ方を研究したり、

「やっぱり仕事は好きなことをやりたい」って悩みもがきながらも夢を追いかけて。

 

読み進めば進むほど、どんどん垢抜けて、書いている言葉、写真の撮り方、トピックの選び方、

「魅せる」力がどんどん磨かれていく。

 

子育て、恋愛、仕事、メイク、ダイエット、美肌、カフェ、社会貢献、グルメ、旅行、仲間、笑い、漫画、芸術。

一記事ずつは短いけれど、切り取り方の幅が広いから、読んでいて飽きなかった。

まるで「ひとり雑誌」みたい。

「あ、そうなんだ」「へー」

美容室の雑誌みたいに、パラパラめくって、時々じっくり読んで。

そんな風に続くから、途中で「やーめた」とは、言いたくならなかった。

 

それに、わたしの友人が言っていたように、悪口が書かれていない。

弱気な発言だって、何十件、何百件に一件あるかないか。

だから明るい気持ちでサクサクっと読むことができる。

「今日は重いのは観たくないな」って日に選ぶラブコメディの映画みたいに、

ポップで明るくて、時々笑って時々ホロッとして、最初はダメな主人公に共感してハッピーエンドを期待して応援してしまう。

そんな風に楽しむことができた。

 

そして気付いた。

彼女への想像は、わたしの思い込みが作り出した幻想に対する憎悪でしかなかったということ。

嫉妬。いや、それを通り越した僻み。

あれだけの投稿を全部読んだら、きっと大っ嫌いになると思っていた。

一つくらい、どうしても許せない腹立たしい投稿があるはずだと決めつけていた。

 

でも、なかった。

 

「あら」

わたしはまた豆鉄砲を食らっていた。

 

そして、わざわざ見知らぬ彼女にメラメラと嫉妬心を燃やしてしまったこと。

週に1日しかない休みの半日も費やしてしまった愚かな自分を恥じた。

顔から火が出そうなほど、恥ずかしかった。

 

考えてみると、わたしは紗栄子が嫌いなわけじゃなかったのかもしれない。

 

そうだ。わたしは紗栄子が演じた映画『NANA』の幸子が嫌いだった。

主人公の彼氏を飄々と奪い取った幸子。

あの伝説の「わざとだよ」を軽々と言いのけた幸子。

「絶対わたしの好きな人には近づかないで!!」と心の中で叫んだあの憎い幸子。

その幸子を演じていた紗栄子が、サチコとサエコがごっちゃになって嫌いになっていた。

ましてや、大好きな友人が、嫌いなサエコを好きとか言うから、わけがわからなくなってしまった。

 

そうやって、わたしの思い込みで勝手に燃え上がった嫉妬心は、

まるで最初から無かったかの様に、ツラっとした表情で消えていった。

 

あー、恥ずかしい。

もう大人と言われる年齢になった今は、あんな恥ずかしい気持ち、もういらない。

わたしはわたし。誰かは誰か。そう思っていこう。

 

 

と思ったそのとき、ふとあの声がまた蘇ってきた。

 

「正直、嫉妬しました」

「俺、マジで嫉妬するんすよ。自分に無いもの持っている人を、打ち負かしたくなるんすよ」

 

そんな描写が出来る文章力に嫉妬する!

誰よりも上に行きたい! 頂点に立ちたい!

大人になっても、メラメラと燃やす嫉妬心。対抗心。向上心。

そして、それをハッキリと口に出してしまえる素直さ。

 

なんだろう。

わたしの心が、ザワザワとし始める。

わたしも、嫉妬したい。

わたしも、メラメラしたい!

「くそぉー、負けないぞ―!」って、なりふり構わず誰かを追い抜くことにガムシャラになりたい!

 

そんな気持ちがむくむくと沸いてくる。

 

なんだか、それは、あの時の感覚に似ている。

誰かが、カップ焼きそばを食べている時の、あの感覚。

 

いやいや、カップ麺とか体に悪そうだし。

吹き出物とか出たら嫌だし。

それなら野菜とかお魚食べたほうがいいし。

30過ぎた独身女性がカップ焼きそばとか食べてたら、料理できないと思われるし。

 

うー。

 

なのに。

そう思うのに、我慢できない。

そのにおい、その麺とソースが絡む独特の鼻を引きつけるそのにおい。

食べたい、食べたい。我慢できないよーーー!

 

嫉妬心なんて、持たないほうがいいって思っているのに、

嫉妬してしまうくらい何かに夢中になっている人を見ると、心がざわついてくる。

あれ? 嫉妬なんてしちゃいけないと思っていたけど、してもよくない?

わたしも、ちょっとくらいならしてもよくない?

むしろ我慢する方が、体に悪いよね?

そう思って、手を出したくなってしまう。

 

そうだ。嫉妬心もきっと、カップ焼きそばと一緒だ。

 

「あー美味しかった! でも明日は野菜をいっぱい食べよう! 運動もして汗を流そう!」と自分を奮い立たせるきっかけになれば、前に進んでいくエネルギーになる。

だけど、その美味しさに取り憑かれて毎日毎日食べ続けて、空になった器も投げ散らかしていたら、大変なことになってしまう。

 

だから、嫉妬心もカップ焼きそばも、自分自信をコントロールしながら楽しめたら、いいのかもしれない。

誰かが「ダメだ」とか「悪い」と言っていたものを、全部排除してしまったら、つまらなくなってしまいそうだから。

 

そうだ。嫉妬心に悩まされていた、20代の若者へ、今度会ったらこう伝えよう。

 

「嫉妬心も、カップ焼きそばも、若いうちは好きなだけ楽しんだらいいよ。

そのうち、食べたくても体がついて来なくなったり、刺激しないと燃え上がらなくなってくるから」

 

「え? カップ焼きそば? 」

 

彼が豆鉄砲を食らう顔を、無性に見てみたくなった。

 

 

***
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
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2016-10-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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