中肉中背の中年が「走ること」で手に入れたいこと
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:タイガーたいぞー(ライティング・ゼミ8月コース)
「おーい! 待ってくれー! こんな丸太、ちょちょいのちょいだぜ!!」
地元のフィールド・アスレチック場で、8歳の息子たちを無我夢中で追いかけた中年のセリフである。まさかこの5秒後に、あんな悲劇が訪れるなんて、いったい誰が想像しただろうか。
中年の私は、高めに配置された太い丸太に気持ちよく飛び乗り、ジャンプで次の丸太へ飛び移っていた。気分は、赤帽子を被ったヒゲおやじ。架空のスターをゲットし、まさに無敵状態で先を進む息子たちに向かっていく。
しかし、4本目の丸太へ飛び乗ろうとした瞬間である。
イメージでは、カール・ルイスの幅跳びのような跳躍だったのだが、実際は気の抜けた水鉄砲から発射された水のような弧を描いてしまい、丸太に足が数センチ届かずに、見事に落下。
真下にあった小丸太に脇腹を強打してしまったのだ。
「お父さん、どうしたの?」
「演技? わざとやっているの?」
前方から戻ってきた息子たち。衝撃の落下シーンは目撃していないため、予想外な「問い」を投げかけてきた。普段、ふざけてばかりいた私。彼らには、悶え苦しむ父のシリアスな場面は、すぐには現実として受け入れられなかったのだろう。
肋骨4本の骨折。全治1ヵ月半。
私が本気で運動しようと決めた決定的な出来事。
4年前の事件であった。
当時は、体重が80kg。体が重く感じていたのに、超一流のアスリート気取りだったなんて、本当に滑稽な話だ。
運動はその3年前からは「ジョギング」だけは始めていた。
週に約2回、5~7kmをゆっくりと自分のペースで流す程度。走ったその日は、「運動したのだから、お酒もOKさ」と、いつも以上に飲んでしまうという謎の特別ルールが発動される。
さらに、骨折中に受診した「人間ドッグ」が、最悪の結果となった。
「要検査D」が2つ。太っていた状態で運動習慣が無くなってしまったことで、以前より悪化したのだ。
ジョギングを始めた理由は、「痩せて、健康寿命を1日でも長くする」だった。かなり漠然としたものだったため、本気になれていなかったのかもしれない。
骨折中にとことん自分と向き合い、本気で「走ること」にフォーカスすると決意。長期目標はそのままに、短期目標として、本格ランナーの証となる「サブ4」を目指すことにした。
「サブ4」とは、フルマラソンを4時間以内に走り切ること。この目標をクリアしていく過程で、体重も減少するだろうし、カラダの数値も改善されていくだろうと考えた。
さあ、「サブ4」を達成するためには、どう行動すればいいのか?
骨折中に本を読み漁り、やることを明確にした。
ジョギング練習は、「3連休はない」という「鉄の掟」を作った。
走らない日を3日連続で作らないルールである。意外と天気が3日連続で悪くならないことを知った。決意して以降、風邪をひかなくなった理由は、もしかしてこの絶対ルールのお陰だったのかもしれない。
毎週1回は、マラソンについてのブログ(note)を書くこともルール化した。
誰も読んでくれなくてもいい。ただ「サブ4」という目標を忘れないために、最低週1回は、文章を通して、とことん目標に向き合うために書き続けることにした。
心から達成したい目標ができると、人は変われる。
半年で体重は60kg台になり、翌年の人間ドッグの結果は、すべてAとBになった(よっしゃぁー!)。
さて、肝心の「サブ4」は達成できたのか?
2022年9月現在、まだ達成できていない。
物語は続いているのだ。
2019年秋の「ぐんまマラソン」では、4時間33分。
自己ベストを1時間近く短縮できたが、サブ4までは、33分以上の短縮が必要だ。
ぐんまの敗戦でよりスイッチが入り、自分のカラダを痛めつけて、2020年2月の「いわきサンシャインマラソン」で「サブ4」を決めようとしたが、そこで世界的パンデミックが発生してしまう……。
あの年は、外に出て走る行為も「違法行為」のように思われるようになる。
参加できるレースもほぼゼロ。仕方なく、2020年秋には、オンラインでのマラソン大会にエントリー(1人で走り、タイムを申告するもの)。
そこで何と、3時間59分で走り切ることができたのだが。
スマートウォッチで測定した結果。これは公式の記録ではなく、どうも達成感が無い。正式なコースを走り、競技場のゴール板を通過して達成したい。
2021年以降、緊急事態宣言、まん延防止重点措置の中でも、人とすれ違うことの無い山の方面を走るなどの工夫をし、何とか「3連休のないRUN」を継続してきた。
そして今年2022年。10月16日である。
山形県の「長井マラソン」にエントリーしている。
開催されると、実に2019年11月の「ぐんまマラソン」以来3年ぶりのフルマラソンの公式レースとなる。
あの日の骨折事故があったからこそ、背中のスイッチが「ON」になり、本気で走り続けることができた。
2018年6月に骨折して以来、本当に長い期間、1つの目標に打ち込んでこられたのは、「本気でやれば、何とかなる!」というプロセスを証明したい、ただただそれだけなのだ。
骨折から4年4ヵ月。短期目標としては、だいぶ長期間になってしまったけれど、必ずこの「未完了」の目標をクリアしよう。笑顔全開でゴールを駆け抜けよう。そして、息子たちを抱きしめよう。
中年の「中」は、「熱中」の「中」である。
さあ、お楽しみは、これからだ!
***
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