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なんで怖いの? 富士急の最恐お化け屋敷でお化けに塩対応した妹

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:Kasumi(ライティング・ゼミ8月コース)
 
 
「っっっhひgじぇnえjrgMBg!!!」
 
深夜0時過ぎ。
鼻歌を歌いながら飲み会から帰宅した私は、リビングに入り声にならない悲鳴を上げていた。
 
女がいた。
顔の半分が髪で覆われ、アゴからは赤黒い雫がいくつも滴っている。
髪の毛の隙間から覗く目と、目が、合ってしまった。
 
「お姉ちゃんおかえり〜」
 
血まみれの女の画面をバックに、ニコニコと妹が振り返る。
 
ゾンビみたいな女の顔がテレビの画面いっぱいに映し出されたタイミングで、私がリビングのドアを開けたようだった。
まさにベストタイミング。いや、バッドタイミングだ。
 
なぜ深夜に、暗闇で、1人で、録画した心霊番組を見ているのだ、私の妹は。
酔いも眠気も吹っ飛んだ。
これ以上、テレビを見たくなくてよろよろと自室へ逃げ込む。眠れそうもないのだが。
 
3つ下の妹は、昔からホラーなどの類が全く怖くない。
血みどろのシーンがある漫画や小説も平気だ。
 
一方、姉の私は、昔からおぞましい映像やストーリーが大嫌いだ。
進撃の巨人も、人間が捕食されるシーンでそっとページを閉じた。気持ち悪くて一話目から先に進めていない。今は妹からあらすじを聞いて物語を追っている。
 
部屋に1人でいる時は、夏の夜にテレビをつけられない。
夏は心霊特集の番組が増えるからだ。
うっかりテレビをつけた瞬間に怖いシーンが映し出されたら、夜、暗闇が怖くて眠れなくなる。
一人暮らしになってから、夏は特にテレビをつけなくなった。
 
姉妹でまったく対照的なのだが、2人ともお化け等の類が見えるわけではない。見えなくても、怖さを感じるかどうかは人それぞれなのだ。
 
妹は日本一怖いお化け屋敷と言われる、富士急ハイランドの最恐戦慄迷宮ですら、涼しい顔をしてクリアしてきた。
それどころか、お化け屋敷で斜め上を行く対応をしてきたのだ。
 
富士急ハイランドのお化け屋敷「最恐戦慄迷宮」とは、日本全国お化け屋敷最恐ランキングトップに君臨する、怖さお墨付きのお化け屋敷である。
 
ホームページを開くと、「当施設は少々刺激が強過ぎる内容となっております」の文が目に飛び込んできた。
 
無数の亡骸が積み上げられた通路の先には
バラバラに“処理“されたパーツが無惨に散らばる
戦慄迷宮史上最もおぞましい光景が広がります。
 
紹介文だけでもう怖い。
ライティングゼミの課題を書くためにHPを開けてみたが、全く行きたくならない。
 
妹に感想を聞いてみると、「ああ〜、富士急のお化け屋敷ね〜。怖いって言うのとは違うような気もしたけどなあ」と、のんびりした口調の返答だった。
妹にとっては大した刺激にもならなかったようだ。嘘だろ。
 
友達と行った富士急ハイランドのお化け屋敷は、妹曰く「どのタイミングで怖がればいいか分からない」との事だ。
お化け屋敷へ入る人間の心構えとして、根本的に何か違うような気がする。
怖がるタイミングは、図るものではない。
 
以下、日本一怖いお化け屋敷での妹の体験談を、妹が説明した通りに綴ってみた。
 
 
出口まで行くのに1時間くらいかかったんだけど、中が本当に真っ暗なの。ちょっと先も見えない。
 
手探りみたいにして道探すんだけど、あちこちでゾンビみたいなのに追いかけ回されるんだよね。
 
でも、途中でゾンビみたいなのが出てきたら、一緒にいた友達が悲鳴あげて一目散に逃げちゃってさ。
 
「え。あんた1人取り残されたの?」
 
そう。私も友達に合わせて一緒に走れば良かったんだけど、友達の悲鳴にびっくりしてタイミング逃しちゃって。
その間にどんどんお化け役の人が近づいてくるの。
でも、今更友達みたいに走るにはちょっとタイミングずれちゃったよなー、どうしよう。どのタイミングで走ればいいのかな、って考えてたらお化け役の人が目の前まで来てて、
 
「そ、それで?」
 
私もどうして良いか分からなくて動かずにお化け役の人見てたら、向こうから「あの、あっちです。」って道順指差してくれたから「あ、はい」って。
それでやっと進めたんだよね。
ちょっと気ぃ遣ったわ。
 
「……」
 
 
姉は、ツッコむのをやめた。
 
客としてお化け役に何も気を遣えていない妹は、その後も1人でお化け役を適度にスルーしながら出口へと到達している。
出てくるお化け役や通過する部屋を、博物館の展示物でも鑑賞するかのように眺めながら。
 
妹にとっては、障害物(お化け役)が出てくる暗闇の迷路に過ぎなかったようだ。
 
子供の頃、家族で入ったお化け屋敷では、妹が私の手を引いて、出口まで「こっちこっち〜」と導いてくれた記憶がある。
妹はその当時から、途中のお化けは全て「あ、ろくろ首」「なんかいる」と、大したリアクションもなくスルーしていた。
 
どうしてそんなに恐怖心が湧かないのか?
 
私には理解できず、妹にLINEで聞いてみた。
「なんでお化け屋敷とか、ホラーみたいなのが怖くないの?」と。
 
すると妹から返ってきた答えはこうだ。
 
「血筋かな」
 
いきなり私の家族説を否定する返事が返ってきた。
血筋なら私も怖がりでは無いはずだが。
あれ? 私、血繋がってない?
 
姉の私への配慮を一切忘れたまま、妹の解答は続く。
 
「お化けは触れないんだよ? つまり無害!!!!! 怖いとか以前に、もしいてもなにも問題はおこさなさそうだから・・・・・・
まぁ……いいか……みたいな? (原文ママ)」
 
要は、いてもいなくても、自分に害がないなら(どうでも)良いようだ。
家族のグループラインに送っていたので、そのうちに母親まで乱入してきた。
 
「そういう星のもとに生まれたんだよ。ていうかなぜ怖いの?」
 
質問がブーメランとなって私に返ってきた。
 
なぜ、お化け屋敷やホラーの類が怖いのか。考えてみたが分からない。
子供の頃、トラウマになるような出来事もなかったはずだ。
 
子供の頃は、大人になったら幽霊への怖さを克服できると思っていたが、大人になっても、怖いものは怖い。
そして、もう今更この恐怖心を克服しようとも思わなくなっている。怖いままで良い。たまに支障はあるけれど、問題なく生きてこれている。
 
“本物“がいても、気づかないしね。
 
 
 
 
***
 
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2022-10-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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