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宇宙人にお金を盗まれた話


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:TOMOMI(ライティング・ゼミ8月コース)
 
 
「もしもし警察ですか? お金が盗まれました。泥棒だと思います」
 
5年前、わが家のお金が盗まれた。
 
不用心にもお金のはいった封筒を、見える場所に置きっぱなしにしていた。
まさか、うちに泥棒など入るわけはないと思って油断した。
 
お金を使おうと、封筒の中を見るとお札が1枚も入っていない。
おかしい。金額は覚えてないけれど、たしかここにお札を入れておいたはず。
「え? 泥棒に入られた。どうしよう……」
 
私は数日前に1週間ほど留守にしていた
その間、私の母が息子たちの世話をしに来てくれた。
夫は海外赴任のため不在だ。
 
「お金がない。確かにここに入れたんだけどなくなってる。泥棒かもしれない。鍵かけずに留守にした覚えある?」と母に聞いた。
母はしばらく考え
「実は、おとといの夕方、買い物へ行った時に、鍵をかけ忘れたかもしれない。心配ですぐに帰って来たけど。その間に次男が帰っていて、本人は鍵がかかっていたかどうかは覚えてないらしい。そのとき鍵をかけ忘れていたかもしれない」と答えた。
「きっとその時間にはいられたね」
私たちの推理はそのわずか数十分の間に泥棒に入られたという結論に至った。
 
そう考えていたら、この家に見ず知らずの人間が入ったかと思うと急に怖くなった。
まだ家の中に隠れているような不気味さを感じた。
誰かに動きを監視されていたのか?
それとも偶然にはいられただけなのか?
夫が海外赴任なのを知られて目をつけられていたら怖い。
 
確かに、このあたりは泥棒に入られたという話しをちょくちょく聞く。
ご近所さんも数年前の夕方、泥棒にはいられそうになったことがあった。
夕方、隣の人が怪しい物音に気付き警察に通報。
未遂に終わったのでよかったが、決してめずらしい話ではない。
 
早速、ドキドキしながら警察に電話をした。
数十分後、2人の警察官がやってきた。
私は、お金をいれておいた封筒の話、
鍵をかけわすれていた話を警察官にした。
ひととおりの話を聞いた後、一人の警察官は、さらに細かく私たちに質問をした。
もう一人の警察官は、特殊なライトをあてて、足跡などを探しはじめた。
 
しかし、足跡はみつからなかった。
昨日、母が拭き掃除をしてしまったので、消えてしまったのかもしれない。
今度は、警察官は丁寧に封筒についた指紋もしらべた。
でも、犯人が手袋をしたら指紋もとれないらしい。
私たちの指紋もとられた。
 
私は、ドキドキしながら作業を眺めていた。
息子たちも帰宅し、心配そうにその様子をみている。
 
「お金以外にとられたものありますか?」最初の警察官が私に尋ねた。
「いまのところはないです。通帳類も残っています。
部屋もあらされていません」
と私は答えた。
 
しばらく作業を見つめていた時、一人の警察官が私を玄関の外に呼んだ。
そして、外で、
「ひととおりの作業が終わりました。
あのー、男の子がいるご家庭で、お金だけが盗まれている場合は、大抵息子さんが犯人なんです」といいにくそうに私に告げた。
 
えー! うそでしょ? 男の子ってお金を盗むの? それ、ごく一部の不良の話じゃないの? そんなの犯罪じゃん。でも、うちは違うし。
警察官の話は、私にとって衝撃的だったが、
「うちは、違うと思います」と自信をもって冷静に答えた。
警察官は、「わかりました」と答え、書類などにいろいろ書き込んでいった。
 
はじめての体験で、私はかなり動揺していた。
まさかうちに泥棒がはいるなんて……
犯人がつかまってくれれば安心できるが、これから夜が怖い。
警察官が帰っても、しばらくは興奮がおさまらなかった。
 
私は、女姉妹で育った。
身近に、男の子という存在がなく、男の子の生態がよくわからなかった。
友達などから聞く男兄弟の話は、「落ち着きがなく乱暴」といったかんじで
私にとって、女の子とは違う不思議な生き物だった。
 
それが、まさか息子2人の母になるとは。
もちろん、愛するわが子。
性別なんて関係なく大事に育ててきた。
 
小さいころは天使の様な存在で、男女にあまり違いはなかった。
しかし、幼稚園くらいになると、すこしずつ個人差はあるが、男女でやることが違ってくる。
「なんでこんなことするの?」と理解できないことが多くなっていった。
天使から謎の生物宇宙人に変わっていく。
行動が予測不可能。
「そんなことしてなんの意味があるの?」と想像を超えた行動に首をかしげる私。
 
わざわざ水たまりに足を突っ込むし、
「公園の水道で水遊びはしないでね」と言えば、水風船を大量につくって友達と遊ぶ。
「コンビニ行ったらだめだよ」と言えば、公園の近くにあるコンビニへお菓子を買いに友達と行く。
習い事の帰り道、内緒で持ち出したゲームをやる。
そして、どこまでもうそをつく。ばれたら余計怒られるのはわかるだろうし、必ずばれるのに。
学校の廊下を走っていつも先生に叱られるし、傘を持たせたら一日で壊して帰ってきた。
なぜ、ランドセルはあんなにボロボロになるの?
なぜ、叱られることがわかっていてやめれないの?
なぜ、どんな遠いところでも、自転車で行くの?
あー、違う生き物としか思えない。
 
そんな息子たちだが、優しい。
母の日にはメッセージをつけてお花をくれる。映画、カラオケ、ショッピングにも誘ってくれる。
息子とデートできるのは本当にうれしい。
重い荷物をもってくれた時なんて、母はキュンキュンする。
あー、可愛い。息子にメロメロである。
 
さて、話をもとに戻すと……
我が家のお金を盗んだ犯人は息子だった。
ゲーム課金のために使ったらしい。
 
お金を盗むという行為を息子がした衝撃と、このまま道を外れて犯罪者になっていくのではないかという心配で目の前が真っ暗になったのを覚えている。
「犯罪者になる前になんとかしなければ」
絶望感に襲われた私は、知り合いの先生に相談した。
「お母さん、息子がこのまま犯罪者になるなんて思わないでくださいね」と私の心を見透かしているかのようなお言葉。
そして、「人のものに二度と手をつけるなということ、お母さんがどれだけ悲しい思いをしているかということ、でも、これからもあなたを信じるからということだけを伝えて」とアドバイスされた。
 
そして、「今後も男の子はいろいろ驚くようなことをします。そんなときに『自分を信じてくれる人がいる。その人を悲しませたらいけない』という思いがストッパーとなります。だから、お母さんはどんなことがあっても、子供を信じてあげて。お金をとったからもう信じられないじゃなくて、息子が何をしようと信じて」と言われた。
 
私は、思いを息子に伝えた。
「これからも、あなたを信じ続けるよ」と。
息子は泣いていた。私も泣いた。
 
お金を盗んだ息子は、今、医者を目指し医学部に通い、部活も頑張っている。
人間として魅力があるのか、どこへ行ってもたくさんの友達が彼を慕ってくれる。
非行にはしることもなく、魅力的な子に育った。
この先も、息子たちは予想外の行動をして私を驚かせたり不安にさせたりするだろう。そのことも想定内。なにがあろうと、私は息子を信じぬく。
その思いは、宇宙人のような息子たちにだって必ず伝わるはずだ。
 
 
 
 
***
 
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2022-10-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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