安定思考だった私が逆上がりみたいに起業したら
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:新井千尋(ライティング・ライブ東京会場)
あれは、ひさしぶりに高校時代の友人とお茶をした時だった。
「私には起業なんてできないよ」
親友は笑いながら言い放った。
それもそうだ。過去の私でもそう言ったと思う。
だって以前の私は、これでもかというほど安定思考だったのだから。
リーマンショックの名残もあり、就活はハードモードだった。
将来に漠然とした不安があった私は、とにかく福利厚生の良さそうな会社を受け続けた。
やりたいことは特になく、ほぼ条件面で志望企業を絞り込んだ。
就活氷河期だったうえに、仕事への志も自信もなかったので
エントリーシートがうまく書けず、一次面接に進むのもやっと。
面接でも他の就活生のハキハキした自己PRやキラキラした経歴におどおどするばかり。
志望する企業からお祈りメールが来るたびに、どんどん自己肯定感は下がっていき、
面接でより一層自信なさげになってしまうという負のスパイラル。
自分が社会に必要とされていないことに絶望しながらも就活を続け、
やっとの思いで1社内定をもらい、そこに入社した。
メンタルがボロボロで、私を必要としてくれるならどこでもよかった。
内定をくれたのは福利厚生の良い大企業のグループ会社だった。
入社当時は「一般的にそうだろう」という理由だけで、
福利厚生の会社に入れたのだから、いつか結婚して産休育休を活用して子育てをするのだろう。
などと、今思えば激しく他人事な将来設計をしていた。
入社当初は仕事を覚えるので精一杯だった。
同じ部署の先輩たちはみんな優しく、親切に仕事を教えてくれた。
お客さんから感謝の言葉をもらうことも増えてきた。
それでもどうしてか、仕事に行くのが嫌で仕方なくなっていった。
社会人としてお金を稼がなきゃいけないので辞めるという選択肢は無かった。
駅の本屋で、自己啓発本や資格取得の本を買って、
どうにかモチベーションを保とうとした。実際いくつか資格も取った。
でも、だんだん限界が近づいてきて吐き気でごはんが食べられなくなった。
すぐにお腹を壊すから、食後は客先に行けなくなった。
ウイダーインゼリーにはかなりお世話になった。
会社を休みがちになり、迷惑をかけるのもよくないと思った私は逃げるように転職した。
とても残念なことに、転職をしても胃の痛みは引いてくれなかった。
転職先の同僚もいい人たちばかりだったのに、本当に申し訳なかったと思う。
私は転職先の会社を辞めることにした。
今思えばおそらく、会社というシステムが合っていなかったのだ。
起業したかったわけじゃない。
会社員ができなかっただけ。
会社を辞めてから、起業について学んだ。
初心者には、初期投資や在庫を抱えるビジネスは向いてないと知り、
アフィリエイトやせどり、セミナー講師やライティングなど
すぐに試せそうな副業を片っ端から試してみた。
なかなか稼げなくて焦りが募る。
少しは稼げるが、生計を立てていくには程遠い。
会社を辞めて体調は良くなってきていたので、再度どこかの会社に勤めることも考えた。
求人サイトを見ると、幸いにも前職に似たIT系の求人はたくさんあった。
IT系の企業はどこも人手不足のようだった。
「広告をやってみない?」
お世話になっていたセミナー講師の会社の求人に応募したら広告の仕事を勧められた。
ふたつ返事でチャレンジすることにした。
これが大きな転機だった。
紹介で仕事をもらうことも増え、安定して稼げるようになっていった。
今では広告の仕事で食べている。
振り返ると、初めて逆上がりを成功させた時みたいに
何度も失敗して、もうダメかもと思いながら思いっきりかけ上がったら、
クルンと回って鉄棒の上にいた。
私にとって起業はそんな感覚。
逆上がりを成功させた鉄棒の上で、次はどうしよう。
起業はゴールではなく、スタートなのだ。
私がやっているインターネット広告は常に知識のアップデートが必要な業界で、
一回学んでも、すぐに新しい情報が必要になる。
だからこそ、新しく参入した人にも大きな可能性がある。
そして、「広告出稿=世界大会にエントリー」状態なのも忘れてはいけない。
広告初心者でもベテランでも、インターネット広告の世界に出たら対等なのだ。
「初心者だからイマイチな広告でもお客さん来てくださいよ」みたいなことは通用しない。
広告枠は入札なので、もう広告を出稿したら世界大会にエントリーした気持ちで挑むしかない。
こんなことを言ったら不謹慎かもしれないが、私は広告の仕事がゲームのようでとても楽しい。
最初は月額15万円の運用を任されて、緊張で広告管理画面を見るのがこわかった。
しだいに運用額が大きくなっていって、
30万円、100万円、200万円、400万円、1,000万円、2,000万円。
それぞれのタイミングでドキドキした気持ちを今も覚えてる。
テーマパークに遊びに行っても配信されている広告が気になってしまったり、
パフォーマンスが心配になって夜中に目が覚めることもある。
かつてやりたいことがなかった私にも、こんなにのめり込めるものがあったなんて。
広告は勉強すればするほど奥が深い。
そして、広告を改善する中で広告だけでビジネスは成功しないことも痛感する。
さぁ、次はどこへいこう。
広告代理店としての拡大を目指すか。
クライアントさんにもっと幅広いサービスを提供できる企業を目指すか。
就職先に困っていた頃や、副業で稼げなくて焦っていた頃とは比べ物にならないくらい
ぜいたくな悩みを持てるようになったことがじんわりとうれしい。
この自由度が私に合っているのだろう。
どうしたら私が仕事で社会に貢献できるか。
これからも考え続けたい。
***
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