メディアグランプリ

県民愛シルエットクイズ《ふるさとグランプリ》


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:福居ゆかり(ライティング・ゼミ)

「あの山の形を見ると、あー、群馬県に帰ってきた! って思うねえ」
上司にそう話を振られたのは、出張の帰りの高速道路だった。
運転に集中していた私は山を見る余裕などなく、はあ、とかええ、とか適当な返事をした。
それを否定と取ったのか、「まだ群馬に住んで数年の福居さんは、そういう感覚はないか」と、上司は続けた。
そうこうしていると、左手に赤城山、と山の形と名称の書かれた看板が出てきた。
「私だって、赤城山くらいわかりますよ」
と看板を見ながら答える。私の住んでいる市から赤城山はよく見えたし、よく居酒屋で出てくる地酒の名前も「赤城山」だった。「男の酒」と書いてあるのでほどほど若い女性としては飲むことを少しためらう、辛口のお酒だ。
「まあ、名前は覚えてると思うけど、山の形を見て『あ、赤城山だ!』とならないと群馬県民とは言えないね」
わかってないなあ、という具合に上司は続けた。
私が生まれ育った町はどがつくほどの田舎であり、山なんて毎日毎日見飽きるほど見ていた。だからかもしれないが、シルエットクイズのように山の形であの山この山、と判断つくほど私は山に愛着が持てなかった。
返事に困った私は再び、はあ、となんとも言えない言葉でお茶を濁した。
そしてふと、少し前に身の回りで起きた、山にまつわる出来事を思い出したのだった。

土曜日、友人との約束のために私は家を出た。家から駐車場までの数分の距離を歩くと、塀沿いにびっしりと車が停まっているのが目に付いた。
なんだろう、これ。そう思うと同時に、少し離れたところから歓声が聞こえた。
小学校の方向だった。競技を告げるアナウンスが聞こえる。
……ああ、運動会か。
少し肌寒くなってきた季節だったことを思い出し、納得する。
塀沿いを歩き、小学校の前を通り過ぎようとしたその時、ある言葉が耳に飛び込んできた。
「はるな、がんばれ!」
はるなちゃん、の応援なんだろうか。
でも、小学校の放送で下の名前を呼ぶかな……? 幼稚園や保育園ならありそうだけど。それに、呼び捨て?
何か変だ。
そう不思議に思い、耳をすます。
続けて赤城、妙義、と聞こえた。
その辺りで、どうやらそれは「榛名」を意味しているのだということに気がついた。
……もしかして、山の名前?
群馬県には上毛三山、と呼ばれるメジャーな山が3つあり、それぞれ赤城山、妙義山、榛名山という。その名前を指しているに違いなかった。
けれど、どうして運動会で山の名前なんだろう。
不思議に思ったけれど、小学校の正門でじっと中を覗いているのは昨今、不審だ。通報されてしまっても困るので、そのまま立ち去ることにした。

「さっき、小学校の前を通ったんだけど」
友人に話しかける。生まれも育ちも群馬県の彼女ならわかるだろう、と尋ねてみることにしたのたった。
友人はコーヒーを飲みながら、
「そうだよ、組分けは山の名前だよ。……えっ、ゆかりの県は違ったの?」
と逆に驚いたようだった。
私が子どもの頃の運動会は色別の組になって分かれ、対抗した。人数によっていくつに分けるかが変動し、それによって赤、青、黄、と分けたり紅白だったりしたが、みんな「赤組」「青組」と呼び合っていた。
群馬県はそこが山の名前なのだ。赤城、榛名、妙義、そして浅間。浅間は地域によっては白根になる、らしい。
色も学校によって違うんだよ、赤城は赤だけど、妙義が青だったり黄だったり……。と友人は続けていたが、運動会で組分けが山の名前、ということにカルチャーショックを受けた私は詳しくは覚えていない。
最初に発案したのが誰なのか、いつ頃から行われている風習なのかはわからない。けれど確かに、山々に囲まれている群馬の風土を思うと、素晴らしい思いつきだと思う。
普段見ている山の名前で、例えば「妙義」と呼ばれる方が、きっと「青組」と呼ばれるよりも身近で親しみやすいのではないか。そう思った。
未だ群馬の運動会には参加したことがない私だけれど、そのうち地域に参加し、それを実感することになるだろう。

「……山、好きなんですねえ」
運動会の話を思い出していたら、ついついそう言ってしまった。上司はあはは、と笑って
「好きも何も、ずっとあるものだからなあ」
と言った。
そうか、ここの人たちにとって山は家族みたいなものなのか、とそう気がついた。毎日同じように同じ場所にいて、ただいま、と帰って来られる場所。
当たり前のようで、かけがえのないものなのだ。
「ホントに、群馬への愛が溢れてますね」
そう言って、上司と2人で笑った。

あれから何年が過ぎただろう。
まさにこれを書いている今日、家族で出かけた帰りに高速道路を走っていた。群馬県に入ったあたりで遠くに美しい山々が見えてくる。
いい加減に私も群馬県民歴が長くなってきたので、シルエットの判断には自信があった。
旦那に向かい、自信満々に
「あれって赤城山でしょう?」
と尋ねたところ、
「あれは榛名山。赤城は向こう」
とあっさりと言われ、何年越しかのシルエットクイズも見事に外してしまった。
どうやら、まだまだ山の形は覚えられそうにない。私の県民愛もまだまだ、と言えそうだ。
けれど、先は長い。これから何十年も住むうちにきっと、全問正解できるようになるだろう。いや、なってみせようじゃないか。
窓の外の山々を見やりながら、私は思った。

***
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2016-11-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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