忙しさでパンクした29歳の秋。大事なものに気づいた29歳の冬。
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:福島かざり(ライティング・ゼミ8月コース)
20代最後の1年をどんな風に過ごそうか。
せっかくなら、有意義に使いたい。いろんな挑戦をしたい。
そんな思いから参加した天狼院のライティング・ゼミ。と、実はもうひとつ別の講座にも通っていた。そちらはキャッチコピーと呼ばれる言葉を学ぶ講座だった。
毎週月曜日は、天狼院の課題を。毎週土曜日は、キャッチコピーの講座を。
「2つの講座での学びを活かして、30歳以降はもっと大きな仕事をしたい」と夢を描き、充実した1年を過ごそうと意気込んでいた。
2つの講座を受講する前、私はけっこうヒマだった。そんなヒマを埋めたくて、29歳の1年を充実させたくて。半ば勢いで、同時期に2つの講座を申し込んだ。
受講費の合計金額、20万超え。講座費用は仕事先から研修費としていただいたので、自腹ではない。とはいえ、なかなかの金額である。
それもあって、「絶対に全講座通いきる」「課題も全部出す」と胸に誓っていた。
しかし、残念ながら両講座とも全ての課題を出すことは叶わなかった。
一応、後日視聴や補講を活用して全講座出席することはできたのだが、心の中は正直、不完全燃焼。もっと出来たはずなのに……と悔しい気持ちが拭えない。
理由は明確で、あんなにヒマだった毎日が急激に忙しくなったのだ。
不思議なことに、講座に通い出して2、3ヶ月が経った秋頃から、新規の依頼が来るようになった。私は普段、個人事業主として文章を書く仕事をしている。
講座に通っていることをSNSで発信したからか? 久しぶりに顔を合わせた知人に「今、あの講座に通っていて……」と世間話をしたからか?
答えはわからないけれど、あんなに余裕のあったカレンダーはみるみる内に埋め尽くされ、自分の時間どころか、寝る時間もなくなってしまった。
締め切りに追われ、課題の提出に追われる毎日。早起きが苦手で、昼以降からエンジンがかかるタイプだったのに、日が昇る前からパソコンに向かう日が増えた。
「講座での学びを活かして、30歳以降はもっと大きな仕事を……」が想定以上に早く叶っている。
なんて喜ばしいことだろう。引き寄せの法則とでも言うのだろうか。
文章や言葉を学びはじめた途端、やりたい仕事が巡ってきた。
こんなチャンス、絶対に逃せない。
だから、全部引き受けた。
「やりたかった仕事です!」「私で良いんですか!」「喜んで!」
そうして迎えた寒い冬。
夏からはじまった私のがんばりは、ことごとく空回り、全然上手にできなかった。
スケジュールが詰まって睡眠を削った分、頭の回転が遅くなって1つのタスクにかける時間が多くなった。締め切りに追われて、食事をインスタントに頼った結果、体調が優れなくなった。風呂に入る時間も勿体無いと感じ、ろくに髪の毛も洗わなくなった。
毎回復習の時間を設けようと思っていた2つの講座は、ふりかえりどころか、課題提出も怪しい始末。疲れてベッドにバタンキューで、月曜24時を寝過ごした週もあった。
夢が叶っているのに、全然楽しくない。おもしろくない。
夢が叶ったらニコニコ笑顔でハツラツとした日々を送れると思っていたけれど、現実はただただ時間に追われて、どす黒い感情を脳みその中でループさせる妖怪が生まれただけだった。
そんな状態でベストな結果を出せるわけもなく、いくつかの仕事は締め切りを破ってしまい、先方に巻き取られていった。
何ひとつ上手くいかない日々の中で、そんな場合ではないのだけど、友人に誘われて飲み会に参加した。集まったメンバーのほとんどは4、5年ぶりで、同窓会のような雰囲気だった。気分転換になれば、と思った。
懐かしい話を一通り済ませた後、1人が放った言葉にハッとさせられた。
「朝起きて、ご飯を作って。映像が好きだからちょっとだけドラマを見て、その日の仕事をはじめる。稼いでいくことも大事だけど、何よりも生活が一番だよ」
今年の6月に結婚した友人の言葉。
本人からしたら当たり前のことを言っただけなんだろう。
でもその言葉は、私の疲れた脳みそをドカンと目覚めさせ、私が本来歩きたいと思っている道を思い出させてくれた。
元々、私が望んでいたことは「20代の最後の1年を充実させること」だったはず。
新規の仕事が嬉しくても、全部引き受けてパンクしたら本末転倒だし、睡眠不足は充実した毎日とは程遠い。
もっと自分が歩けるスピードで、両手で持てる範囲で仕事をしても良いのでは?
成長するスピードは人それぞれ。私の場合、他の人と比べるともしかしたら歩幅が小さいのかもしれない。けれど、29歳になったばかりの頃より、確実に成長はしている。
それで良いんじゃない? 慣れないフォームで体を壊すより、自分のフォームを保って長い目で結果を出すことを選んでも良いんじゃない?
30歳を目前にして少し焦っていたのかもしれない。
そんな人は、私だけではないかもしれない。
私のように思ったような毎日を過ごせていない皆さんは、一旦自分のフォームを見直してみたらどうだろうか。
もう30歳。されど30歳。
80歳まで生きたら、残り50年。人生100年なら、残り70年。
目の前の仕事や稼ぎも大事だけど、心と体の健康を優先する方が、この人生は長く楽しめそうだ。
ひとまずは、今年中にできるだけの仕事を完了させて、年末年始で29歳の自分とゆっくり向き合ってみよう。
***
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