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メディアグランプリ

カレーの彼の迷言


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:千代子(ライティング・ゼミ)

 

「カレーと俺と、どっちが好きなんだよ!」

 

これは、大学生の時に付き合っていた彼から、唐突に言われた言葉。

初めての喧嘩だった。

 

私は、当時からカレーが好きで好きで仕方がなかった。

インドカレーはもちろんのこと、タイカレー、スリランカカレー、欧風カレー、また、カツカレーやカレーうどん、カレーパンなど、「カレー」の入っているものに猛烈に惹かれ、雑誌やネットで話題のお店を見つけては一人でどこへでも食べに行っていた。落ち込んだ時はカレーに慰められ、嬉しい時はカレーでお祝いする、カレーまみれの青春だ。

 

しかし冒頭の彼は、食べることにあまり興味がなかったように思う。

嫌いなものはハッキリ伝えてくれるけれど、「あれが食べたい、これが食べたい」と言っているのは見たことがない。

いつも、「何が食べたい?」と聞いてくれて、私の食べたいものを食べに行っていた。

初めの頃は、おしゃれ系の「デートっぽくて、カレーじゃない」選択肢も用意していたけれど、彼は何でも「美味しい」と言うし、私はいつも「本当はカレーが食べたい」と思っていたから、だんだんカレーの頻度があがり、食事はほぼ100%カレーになっていた。

 

そしてついに、彼が禁断のセリフを言うに至った。

「彼もカレーも、どっちも大切だから、比べられないよ!」なんて言ったか言わなかったかは忘れたけれど、彼とはほどなくして別れた。

私はただ、大好きな彼と大好きなカレーが食べたかっただけなのに。

 

 

 

「まったく~、そんなんだから、いつまでたってもモテないんだよ!」

 

大学時代の友人が言った。

久々の再会で気が緩み、つい昔話をしてしまった。

 

「でもさ、北インドのこってりしたカレーが続くと飽きると思ったから、私もいっぱいリサーチして選択肢を用意したんだよ。

飽きたとか、カレーが食べたくないって思ったなら、彼も自分で他の選択肢を提示するべきじゃない?」

 

ふと、当時の気持ちがよみがえってきて、もやもやをぶつけてみたけれど返事が無い。

 

「私だってさ、南インドのサラサラ系カレーとか、モルディブフィッシュ(日本のかつお節に近い)を使った日本人好みのスリランカカレーとか、サックサクの揚げたて豚カツにベストマッチの欧風カツカレーとか、めちゃくちゃ調べたよ! 彼だって、カレー好きって言ってたもん!」

 

友人は、やれやれ、と言いたそうに私を見ながら「とりあえず、映画でも見に行こう」と言った。

 

TSUTAYAであれやこれやと解説してもらいながらDVDを選んだ。

彼女曰く、くさくさした時には、映画がいちばんなのだそう。

冷蔵庫を素手でひねりつぶすマッチョな人造人間、飛行機から投げ捨てられた秘密の暗号入りマイクロチップを探しまわるスパイ、ガラス張りの超高層ビルを専用グローブをはめて命綱なしによじ登る機密捜査員、お買いもの依存症を克服する新聞記者、太っているけどヘアスプレーのお陰で自信を取り戻してアイドルになった女の子……。

げらげら大笑いしたり、スリル満点の状況にハラハラドキドキしたり、映し出された映像に夢中になっていると、確かに昔のことがどうでもよくなった。

 

しかし、2本、3本と見続けていると、どうにも飽きてきた。

さらに、一緒に見ている彼女が鼻息荒く解説してくれる、外国人の筋肉美に全く共感できなくて疲れてしまった。

私は、マッチョが好きか嫌いかと聞かれれば、とりあえず好きだ。(マッチョと言っても「細マッチョ」くらいがいい。)

しかし、彼女の好きなマッチョは「ゴリマッチョ」「ボディビルダー系マッチョ」に分類される、本当のマッチョだ。

盛り上がった筋肉に、ぴくぴくと血管だか筋だかが浮いているのを見ると、興奮して息が止まるらしい。

誰それがYシャツを脱ぐシーンで見える背中から尻にかけてのラインがたまらんとか、あの厚い胸板に触れてみたいとか、この人とあの人の筋肉はどっちが萌えるかとか、語り出したら止まらない。

 

ふと目を覚ますと、彼女の背中が見えた。どうやら眠ってしまっていたらしい。

ごめん、寝ちゃった、と謝りながら彼女を見ると、彼女はご機嫌ナナメだった。

「せっかくあんたのために私のベスト映画を選んできたのに~!」

 

おや、と思った。このセリフは聞き覚えがある。

そうだ、カレーだ! 私のカレーだ!

「せっかく彼のために私のベストカレーを選んできたのに~!」

 

私だって映画やマッチョは嫌いじゃない、むしろ好きだ。

でも、洋画でなきゃとか、外国人の逆三角形の体がいいとか、そういうこだわりはない。

彼女が、どうしても洋画がいい、筋肉の綺麗な男が見たいと言うから、それに従ったのだ。

私が見たかった、齋藤工や綾野剛が出演している邦画のラブストーリーなんて、あの友人が見たいはずもないと思ったから提案すらしなかった。

 

ではカレーの彼はどうだ。

彼はカレーが嫌いじゃない、むしろ好きだ。

でも、タマリンド風味の南インドカレーでなきゃとか、ナンじゃなくてバスマティライス(インドのぼそぼそした細長い米)と一緒がいいとか、そういうこだわりはなかった。私が、どうしてもインドカレーがいい、ミールス(インドの定食)やティファン(インドの軽食)のあるお店に行きたいと言うから、それに従ったのだ。

彼がもしかしたら食べたかった、ハンバーガーやイタリアンなんて、私が食べたがるはずもないと思ったから提案すらできなかったのだ!

 

急に、自分のしでかした失敗が猛烈に恥ずかしく感じ、「ズガーン」と言う文字が頭上に踊っているのが見えた。

彼とカレーと、本当はどっちが好きだったのか考えてみれば、当時はカレーが勝っていたのかもと言う気すらしてくる。

今度、もし彼に「何が食べたい?」と聞かれたら、ちゃんと彼の好きなものが答えられるように、カレーじゃなくて彼自身に、ちゃんと興味を持とうと誓った。

 

***
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
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2016-11-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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