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32歳のテレビっ子が、あ~ちゃんの涙から学んだこと


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:木村保絵(ライティング・ゼミ)

「あ~、やさしい~、うれしい~」
気付くと、画面の中であ~ちゃんが涙を流していた。
大きな目を真っ赤にして、こどもみたいにポロポロと涙を流している。
わたしも、思わずもらい泣きをしてしまった。
あの涙は、みんなの涙だ。今を頑張っている人達、これまで頑張ってきた人達みんなの涙だ。
そう思ったからだ。

予定の無い休みの日は、一日中テレビに齧りつく。
DVDレコーダーには録画していたお気に入りの番組がたくさん溜まっている。
「最近のテレビはつまらない」
そういう声も多く聞くが、わたしは昔から変わらずテレビっ子だ。
テレビから学んだことが多くあるし、何よりも面白い。ハッ! とする気付きもたくさんもらえる。

特に好きなのは、インタビュー番組『SWITCHインタビュー達人達』だ。
番組の前半と後半でゲストとインタビュアーが交代し、互いの「仕事の極意」を聞き出していく。
あらゆるジャンルのプロ達が語る本音には、これからを生きるヒントがたくさん詰まっている。

その日見たのは、志村けんとPerfume(パフューム)という異色の対談だった。
志村けんが、ある映画の中で踊る3人の姿を観て、彼女達のファンになり、共演を望んだという。

わたしは30代なので、『ドリフ大爆笑』はリアルタイムで見ていた世代だ。
幼い頃は兄とレンタルビデオ屋さんにいくと、毎回「カトちゃんケンちゃん」の名の付くビデオを借りていたし、おやつにケンちゃんラーメンが出て来る日はご機嫌だった。
それに、わたしの父親は年を重ねるにつれ、段々と志村けんに似てきている。
こどもの頃からの憧れに加え、彼に対する愛着のような思いは、年々深まっている。
そんな彼が、いつものコントの陽気な役柄から抜け出し、本気で仕事について語るとなれば、これは見ないわけにはいかない。

Perfumeはヒット曲や海外での活躍はもちろん知っているが、熱狂的なファンとまでは言えない。
「踊るキレイなお姉さん」と言えば、どちらかというと彼女達よりもMAXの世代だ。
Perfumeが活躍し始めた頃は大学を卒業し、社会人になるような頃だったので、CDを買いに走ったり、ノンストップで音楽を聞き続けるという時期は過ぎていた。
それでも、音楽番組で彼女達が高いヒールを履いて踊る姿には、何度も釘付けになったし、
トークから伝わってくる、「あ~ちゃん」「のっち」「かしゆか」それぞれの純粋でひたむきな姿には胸を打たれることが多かった。
チケットが取れたら、一度はライブを観てみたいと思っている。そんな存在だ。

だからそんな彼らの対談となれば、楽しみにせざるを得なかった。
洗濯や掃除機をかけながらの「ながら見」ではなく、しっかりと座って、ノートとペンも用意して見ていた。

だけど気付くと笑ってばかりで、メモをとることなんてすっかり忘れていた。
親子以上に年の離れる彼女達にデレデレしている志村けんがイメージ通りでニヤニヤしてしまうほど嬉しかったし、彼がハイヒールを履いて踊り出した時には、笑いが止まらなかった。

さすがだなー。やっぱり一流の人は好奇心も旺盛だし、知りたい、教えてほしいという気持ちが強いんだな。自分もそうなりたい! とそんな風にワクワクしながら夢中になっていた。

番組が後半になり、今度はPerfumeが志村けんにインタビューをする番になった。

最初は、普段は大人しくクールな印象の「のっち」が、真剣な眼差しで志村けんに質問をしていた。
それは頂点に達した彼女たちが、今まさに悩んでいることだった。

アーティストにとって、武道館、東京ドームでの単独ライブは夢であり、到達すべき目標である。
彼女達ももちろんそこを目指し、確実に一つずつ達成してきた。
ただ、すべてを叶えてしまった時に、ふと、不安になったという。
この先は、どうしたらいいんだろう、と。もう、落ちていくしかないんじゃないか、という怖さ。

その質問に、芸能界の、人生の大先輩である志村けんも真剣に答えた。

「今までのことは自信になっているでしょ。それでいいんだよ」と。

最初の頃は急激に伸びていけることも、ある程度まで来ると、もう急なステップアップはできなくなる。
そもそも、する必要もない。
ただそんな時でも、1mmでもいいから右肩上がりを目指していけばいい。
そうすれば、急激な伸びはないとしても、始めたばかりの頃には出せない深みが出て来る。
それがいいんだ。

そんな話をしていると、突然震えた甘い声が聞こえてきた。

「あ~、やさしい~、うれしい~」
気付くと、画面の中で「あ~ちゃん」が涙を流していた。
質問していたのは、「のっち」のはずなのに、
愛され天然キャラの「あ~ちゃん」が、大きな目を真っ赤にして、こどもみたいにポロポロと涙を流している。

わたしも、思わずもらい泣きをしてしまった。
あの涙は、みんなの涙だ。今を頑張っている人達、これまで頑張ってきた人達みんなの涙だ。
そう思ったからだ。

最近の風潮は、何かが急激に変わることを期待され、それができなければ偽物、劣化、消えると煽られる。
書店やインターネットでも、
たった1ヶ月で売上10倍になる営業法
たった数瞬間で10kg落とすダイエット法
見た目年齢が10歳若返る美容法
そんな見出しが溢れている。

「激変」や「驚愕」ばかりを求められる。
変化が止まればあっさり捨てられ「一発屋」などと称されたりもする。

それは、芸能人や有名人だけではない。
テレビで見聞きしたことは、常に日常の中でも求められている。

例えば家庭料理もそうだ。
最近は検索すれば「簡単激ウマレシピ」がすぐに出てくるし、鍋などの調理用具の進化も凄まじい。
それらを取り入れてみれば、食卓に上がる料理は激変し、家族は大喜びだ。
でも、それが毎日続き当たり前になっていけば、感動は薄れてくる。
「ねー、なんかたまには違うのを食べたい」
そんな風に言われるようになってしまう。

わたしも幼い頃はそうだった。
母がシュークリームやクッキーを作ってくれた時は衝撃的だった。
お店で買わないと食べられないものが、お家でも食べられるなんて! と感動し、
最初はすごく嬉しくて、毎日でも食べたい! と思っていた。
だけど、それが当たり前になってくると、だんだん友人の家のお菓子事情が気になってくる。
「昨日ね、パパがお土産に新発売のケーキを買ってきてくれたの」
「クリスマスにはね、毎年あのお店のサンタさんが乗ったケーキを買ってもらうの」
いいなぁ、わたしも買ったケーキが食べたいなぁ。
作ってもらうお菓子より、買ってもらうお菓子への憧れがどんどん大きくなっていった。

それに、最初は感動的だった母のお菓子も、だんだん慣れてくると飽きてくるようになった。
何か変化が欲しかった。またあの衝撃的な感動を、味わいたくなってしまった。

「お母さん、あのね、わたし、誕生日にはお店で買った美味しいケーキが食べたい!」
そう言って、母を傷つけた。
準備も後片付けも大変なのに、わたし達のためにといつも一生懸命作ってくれた母の気持ちを、踏みにじるようなことを言ってしまった。
もちろん、そんなつもりで言ったわけではない。
母が作ってくれるお菓子も大好きだった。
少し噛みごたえのあるケーキのスポンジも、香ばしいシュー生地に入っているモッタリと下に絡みつく濃厚なクリームの味も、それに頬張り付く喜びも、今でも覚えている。

だけど、幼かったわたしは、未だ知らぬ味が気になって仕方がなくなった。
食べたことがないものを食べてみたくなった。
新しい物に、飛びつきたくなった。
母の思いや、それまでの努力なんて、頭の中に無かった。

それ以来、母は毎年誕生日ケーキをお店で買ってくれるようになった。
でもその代わり、母のケーキはそれ以降食べられなくなってしまった。
もちろんその頃は幼かったから、で済ませてしまえば仕方がない。
だけど、当時の母と同じくらいの年齢になった今、母の思いを想像すると、胸が苦しくなる。
新しい味を手に入れる代わりに失ってしまったものの大きさを考えると、切なくなってしまう。
新しいケーキなんて、大人になれば好きなだけ食べられる。
「もう、いいや」母にそう思わせてしまったことが、今になって悔やんでも悔やみきれない。

きっと、世の中にはそんなことがいっぱいあるんじゃないだろうか。
誰かの努力で成り立っていることも、当たり前になってしまうと、すぐに忘れてしまう。
それに常に新しい物を求め、「既に知っている物」に対する評価は低くなってしまう。
「もういいよ、要らない」「あー、もう終わりだね。ダメだね」
そう言われて、人知れず消えていくものは、あまりにも多いのではないだろうか。

だからこそ、あのあ~ちゃんの涙が、わたしの心に突き刺さった。
あの涙は、一流のアーティストだけが流す涙ではない。
あれはきっと、みんなの涙だ。
今を頑張っている人達、これまで頑張ってきた人達、みんなの涙なんだ。

もちろん、世の中は常に動いている。
スピードを上げて、新しい物を生み出していかなければいけない。
そうしなければ経済は止まってしまうし、世界にも置いていかれるかもしれない。

だけど、時にはふと立ち止まる時間も必要だ。
今、自分達が何を手にしていて、何を守っていきたいのか。
成功した人間が、努力を重ねてきた人達が、ある地点から消えてしまうのは、物凄く哀しいことだ。
それは一流の世界でも、職場や家庭やありふれた日常の中でも変わらない。
何かを達成した人が、1mmでも右肩上がりを目指していける環境、
その深みを味わい、楽しめる人々が増えていけば、きっと今以上にあたたかくワクワクする毎日がやってくるはずだ。

そのために、わたしには何ができるだろうか。
この年になっても、うるさく言われると煙たがってしまう父や母の言葉に、耳を傾けてみる。
反発したくなる上の世代の人達の言葉とも、向き合ってみる。
必死でもがく後輩たちの姿は、頭ごなしに否定せず受け止めてあげる。
そして自分がしていることは、たった1mmでもいい。右肩上がりを目指して諦めずに努力する。

そんなことから始めてみたい。
そうすればきっと、これまで努力し続けてきた人生の先輩達のことばが、染みてくるはずだ。
今をガムシャラに走っている年下の人達にも、受け止めてもらえるあたたかさを、伝えられるかもしれない。
自分から近づかなければ気付けない、引き出せない思いや言葉は、あちこちに溢れているはずだ。

1時間の番組を見終えた時、わたしはあたたかい気持ちに包まれ、よしやるぞ! という気持ちが高まっていた。
これだ。テレビを見終わった時の、この感覚が好きなのだ。
笑って泣いてスッキリして、よし頑張るぞ! そんな気分にさせてくれる。
やっぱりわたしは、今までもこれからも変わらずテレビっ子でい続けるだろう。
大人達が真剣に作る番組には、これからを生きるヒントが、たくさん詰まっている。
これからも、テレビの進化を味わい、楽しんでいきたい。

***
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
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2016-11-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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