ライティング・ゼミは、大相撲天狼院場所である。
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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「はっけよぉい、のこった!」
「やっぱり千代の富士は強いなぁ。立ち合いの踏み込みがぜんぜん違うわ」
「せやけど強すぎても、おもしろないやんか。若いのが育たんと」
テレビで放送されている相撲中継を見ながら、横綱である千代の富士の「結びの一番」の立ち合いに興奮気味の父に対し、母が面白くない様子で受け答えする。
両親ともに相撲が好きだったため、幼い頃は夕方になると必ずテレビに映る相撲中継を見ていた。
本当は再放送しているアニメを見たかったが、幼い私はチャンネルを変える権利を持っておらず、両親とともに相撲を見ることが当たり前になっていた。
細かいルールや、礼儀作法もたくさんあるのだけれど、「力士のどちらかが土俵の外に出てしまうと負け」という、単純明快なルールは子供の私にも分かりやすく、一緒になって楽しく見ていた。
父は横綱や大関といった、しっかりと強い相撲をとる力士を好んでいた。反対に母は、その場所で活躍している力士を応援していたため、応援する力士はその時々で違っていたが、若手の力士が、格上の力士に勝つのを見るのが好きだった。いわゆる「金星をあげる」というやつだ。子供の私は、塩をおおげさに撒いていたり、土俵入りのパフォーマンスを派手に行う力士が面白くて好きだった。しかし、一番好きなのは、誰にも負けない横綱、千代の富士だった。
千代の富士が、「体力の限界」と言って引退表明した時は子供ながらにとても悲しくて、いまでもその映像は脳裏に焼き付いている。
大人になり、実家から離れて暮らす今ではほとんどテレビで相撲を見ることはなく、関心も薄らいでいる。しかし、時々実家へ電話をかけると、
「もうすぐ注目してるお相撲さんの取り組みやから、もう電話切るわ。用事があったらまたかけるから」
こんな調子で、話の途中でも一方的に電話を切られる始末。相変わらず両親はテレビでの相撲観戦を楽しんでいるようだ。
10月から参加しているライティング・ゼミは、相撲に似ていると思う。
私は新弟子検査に合格し、ようやく土俵入りを果たした新人力士だ。
対戦相手は、その時に書こうとするテーマ。
がっぷりと正面からぶつかり、どう攻めるのが良いか相手の様子を探る。
いくつか、講義で教えてもらった技を試してみる。私の力量では、まだうまく技を扱えないものの、ジリジリと土俵際まで相手を押していく。
ここからが正念場だ。
土俵の縁に相手が足をかけていても、そこから力技で押し出そうとすると、くるりと立場が変化して、私が押し出されそうになる。
土俵際のせめぎ合いは続く。なんとか手応えを感じ、相手を土俵の外へ出す。
相撲なら、相手を土俵の外へ出した時点で勝ち星となる。
しかしライティング・ゼミは、文章を書き上げただけでは勝敗はつかない。
その後の「行司」の判断が全てである。
そう、行司は三浦さんだ。
行司の判断は的確で、文章がうまくまとまっていれば白星を与えてくれて、webへの掲載を認められる。店主セレクトという「金星」を与えてくれることもある。
テーマをうまくまとめきれていないと、またチャレンジして下さいね、と黒星を言い渡される。
私は毎週、頭を悩ませる。ああでもない、こうでもないと思案しながらようやく、ひとつの文章を書き上げる。書き上げたのはいいけれど、本当にこの文章で良いのか、この文章を投稿してもつまらないんじゃあないかと、あれこれ推敲したのちに、「えいやっ」とFacebookへ投稿する。
行司の判断を待つ間に、他の受講生が投稿された文章や、これまでの行司の審判をじっくり読む。
こんなに良い取り組みをしている人がいるなんて、自分は鍛えるところだらけだなあ、と思いながら次回も頑張るぞ! と、気合を入れ直す。同時に、もっと新たな目線を見つけないと、私の文章はいつも同じだなと卑屈にもなる。もっと新たな技を身に付けたい。「金星」を勝ち取るにはどうすればいいのか、また一週間頭を悩ませ続けるのだ。
先日、横綱白鵬が通算1000勝を達成したと話題になっていた。史上3人目の快挙だという。過去に1000勝を達成したうちの一人は、子供の頃のヒーロー、千代の富士だ。
1000勝という、とてつもない記録を達成するには、血のにじむような努力と練習があっただろう。何度も稽古を重ね、納得のいく取り組みができるようになるまで、自分自身との戦いも絶えずおこなわれてきたはずだ。
文章だってそうだ。
「書き続けてください」と三浦さんが言うように、書き続けていくことで、納得のいくものが書けるようになっていくのだと思う。
私には取り組みたいテーマがたくさんあるのだけれど、まだうまく向き合うことすらできずにいる。何度か試しに書き始めてみたこともあるけれど、途中で書けなくなってしまうのだ。そのテーマを書き上げることができるようになるまで、まだまだ時間はかかりそうだ。
けれど、何度もぶつかって、がっぷりと組み合うことができるようになれば土俵の外に押し出すことができるかもしれない。
私にとって、大相撲天狼院場所はまだ始まったばかりだ。
1000勝を達成するような大横綱になりたい、と言えるレベルには到底およばない。けれど、毎週稽古を重ねて、横綱をめざしてみたいと心から思う。
*** この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、店主三浦のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
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