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世界はみんなで支えている ―トルコ大地震援助隊派遣の片隅で―


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記事:平井 理心(ライティング実践教室)
 
 
もし、あなたの同僚が、家族が、大地震のあったトルコに援助隊として行くと言ったら、あなたはどんな声をかけますか?
私の場合は、胸の奥から熱いものがわき上がってきて、ある言葉になりました。
 
世界はみんなで支えている。
 
2月10日、朝10時。一緒にお仕事をしているKさんから「相談がある」と連絡が入りました。Kさんは、朗らかでフットワーク軽く、頼れる男性看護師さんです。そんなKさんが
「こういうのが届いてね」
と、1通のメールを見せてくださいました。送信先は、国際協力機構。内容は、12日からトルコへ国際緊急援助隊医療チームを派遣するのに、参加できるかどうかというものでした。
 
トルコ南部で今月6日に発生した地震はマグニチュード7.8。多くの建物が倒壊し、約4万人もの犠牲者がでています。連日、ニュースは悲惨な被災地の様子を流しています。私も阪神淡路大震災や東日本大震災を経験した者として、他人事とは思えません。あのときの記憶がよみがえってきます。余震でおびえたことも昨日のように思い出されました。
 
今、トルコには家がなく寒さに震える人、病院の倒壊で十分な医療が受けられない人がどれほどいるのでしょうか。多くの人が眠れない夜を過ごしているのではないでしょうか。
私は、拙い言葉で
「こうやって、援助隊が結成されるんですね。なんか、すごい……。最近って、ウクライナの戦争が長く続いているから、なんか世界平和とか遠いんだなぁて嫌になってたんだけど……、なんか、うれしい。世界はみんなで支えている感じがして……」
と、言うのがやっとでした。胸の奥があったかくなって、それが詰まってなんともいえない心地でした。
 
「もう、いくつかの国は現地に入っているみたいだね。本当はすぐに行きたいんだけど、仕事があるから12日っていうのは難しくてね。こういうのって1回2週間なんだよ。被害が大きいと第2弾、第3弾って続くだろうから、3月くらいで行ってこようと思う。看護部(上司)には話してきた」
Kさんは日常も命に携わる仕事をしています。その仕事をおいて、今すぐトルコへとは、いかなかったようです。
 
メールの中には、援助隊参加の条件がいくつも書かれていました。その中のある一文に興味を引かれました「訓練を2回受けていること」。
「Kさん、訓練って何ですか?」
「病棟運営の訓練をするんだよ。空港の大きな倉庫にテントを張ってさ、そこで、手術や分娩や集中治療管理とかをやるの」
Kさんは、スマホに納められた画像から、その訓練に関するものをいくつか見せてくれました。だだっ広い空間に白いコクーン型のテントがいくつも並んでいるもの。その中で、簡易ベッドが置かれて、コンパクトな医療機器が配置されたもの。Kさんが赤ちゃんをとりあげているもの。
 
訓練と言えば、私も子どもの時に学校で避難訓練をしました。それは自分の身を守るためでした。今も勤務している病院では防災訓練を年に1回行っています。それも私たちの患者さんのため、そして私たちのためです。でも、Kさんの話してくれた訓練は、見ず知らずの、どこの国かもわからない人のため。そのために、日本全国から何十人もの医療者が集まって訓練をする。通常の激務の合間を縫って参加した人もいたでしょう。自分の休暇を削って参加した人もいたでしょう。世界の誰かを救うために。そう思うと、また、この言葉が響いてきました。
 
世界はみんなで支えている。
 
「今までの自分だったら、迷わず行ってたんだけどね。はじめて悩んだよ。今自分がいなくなって、患者さんの命をつなげることができなかったら、って思うとね」
Kさんは、都道府県でたった一人の大事な任務を背負われています。逡巡されたようでした。
「大丈夫です。他県から応援よびますし。Kさんのようにはできなくても、現場にいる者が自分の最善を尽くします」
これが私の、世界の支え方、です。
 
Kさんは笑顔になって、
「かみさんに相談したのよ。そしたらさ、『すぐに任務も病院も辞めて、トルコに行きなさい!』って言ったんだよ」
と、更に笑顔を重ねて話してくれました。Kさんもすごい人だけど、ご家族もさすがです。自分たちの食い扶持が減っても、今困っている人を救え、救える人が救え。その姿勢、天晴れです。医療現場にいなくても、こうして支えている人もたくさんいるのだと感じました。
 
世界はみんなで支えている。
 
Kさんに、このことを記事にしていいかたずねると
「もちろん! こういう活動を知ってもらいたいし、応援してもらえると力になるよ」と。
そこで、あなたにお願いです。ニュースや新聞、ネットで援助隊を目にしたら、エールを送ってください。そのあなたの気持ちが、世界を支えます。
 
15日の朝のニュース。トルコに医療物資が到着し、これから本格的な援助がされるようです。日本団代表がインタビューで、「12年前の東日本大震災の時にはトルコチームが一番長く日本に滞在して援助してくれた。今回はその恩返し」というコメントをされていました。
 
そう、世界はみんなで支え合っている。
 
 
 
 
***
 
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2023-02-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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