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父を裏切って踏み込んだ愛欲の日々


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:八千子(ライティング・ゼミ)

「お父さんは、あいつらのこと大っ嫌い。顔も見たくないし、声も聞きたくない。存在自体がイライラする」

父のいつのもセリフ。もう何回も聞いてるから、家族みんなが知ってるのに、彼を見かけるたびに、言わずにはいられないようだ。

父は、彼のことが大嫌いだ。
ただ、大嫌いになる理由もきちんとある。
父が生まれる前のこと。父の兄が彼とイザコザをおこした。その時受けた傷が化膿してしまい、結果的にその傷が命を落とす原因になってしまったらしい。父の両親は深く悲しみ、当然、その後に生まれた父にも彼との接触は絶対に避けるようにと命じていたし、兄の命を奪う原因を作った彼ら一族を、父は心底恨んでいた。

父は彼との接触を娘の私にも避けるように伝えていた。あいつらと関わるとロクなことはないから、と私が彼を見つめるたびに、キツい口調ながらも、諭すように私に語りかけていた。

母も姉も、特に彼のことは嫌いではない。けれど、父の手前「好き」とは言えず、「まあ、彼には彼の生き方があるし、あえて近づく必要はないよ」という態度をとっていた。

けれど私は、幼い頃から、彼と接してみたかった。
彼を町で見かけるたびに、そっと近寄ってみるものの、どう接すれば良いのか分からなくて、ただ遠巻きにじっと見つめていた。彼もまた、私が見ていることに気付くと警戒した鋭い視線を送ってきたが、ふとした瞬間に姿を消してしまうのだった。

私の想いは募るばかりだった。一度で良いから、彼と話してみたい。どうにかして触れてみたい。気高く、気品あふれる姿に魅了されるばかりだ。
だけど、もし、そのことが父に知られたら……。
私の気持ちはモヤモヤしていたが、彼と接することができないまま大人になった。

大人になって、父と離れて暮らすようになると、突然事態は一変した。
子供のころ、彼と親しく暮らしていたという友人もいて、私はうらやましかった。これまで私が熱望していたことを、いとも簡単にクリアしている友人にちょっと嫉妬した。

「じゃあ、彼と一緒に暮らしてみたらいいんじゃないの?」

え……?

私は耳を疑った。
彼との暮らしを勧めてくれる人がいるなんて。
自分では考えもしなかった。
一緒に住むなんて、絶対に無理だと決めつけていた。

でも……。
離れて暮らしているとはいえ、父を裏切ることへの罪悪感を感じた私は「うん。でも、ちょっと考えてみる」と言って、すぐに決断できなかった。

まさか、こんなチャンスが巡ってくるなんて。
でも、もし父に知られたら、と思うと決められなかった。母と姉にも相談してみたが、「離れて暮らしてるんだし、大丈夫だと思うけど。お父さんがあんたの家に遊びに行くことになったら厄介かもしれないけどね」と、彼との暮らしは反対しないものの、やはり父のことを警戒していた。

決めるのは私次第だ。

彼と住むことになると、決断しないといけないことがある。
それは、何があっても、彼を一生離さないということだ。
彼はふらりと出て行きたがることもあると聞いている。でも、それは絶対に阻止して、彼と添い遂げなければ。彼と一緒に住むと決めた以上、それは最低限のルール。守らなければ、彼と暮らしていく資格はない。

……お父さん、ごめんね。
どうしても、彼と暮らしたい。

悩みに悩んだが、私は彼と暮らし始めることを決意した。

彼は知らない家に、はじめは警戒していたものの、すぐにくつろいでくれた。
嫌われたくなくて、準備していたものもすっかり気に入ってくれたようだ。

私が考えていた以上に、彼はヤキモチ焼きだった。私が別の部屋にいると、「なんで勝手に違う部屋にいくの!」と怒りだす。
スマホを見ていても、雑誌を読んでいても「ボクと遊んでる方が楽しいから。ボクを見てよ」と邪魔をしてくる。

あれ? 私が知っている彼は気高くて、ツンと澄ましていて、こんな「かまってちゃん」じゃないと思っていたんだけどな。
でも、彼にねだられると抗うことはできず、私は彼に身をゆだねる。やわらかい彼の身体と、甘えた声にうっとりとしながら、私は彼がいない生活が、考えられなくなってしまった。

彼が我が家へきて、もう5年になる。
今では全てが彼を中心に動いている。外出中だとしても、彼が留守番をしているのかと思うと、寂しい想いをしていないかと不安が襲う。急いで帰ってみると、ひとりでのんびりと眠っていて、「あ、もう帰って来たの? 早いね」と、寝床から顔を上げる程度だとしても。
相変わらず、父には隠しているけれど、どうやらバレていて見て見ぬ振りをしてくれているようだ。

もしも彼がいなくなってしまったら。
そう考えただけで、胸が張り裂けそうだ。
だけど。
彼のぬくもりを知ってしまった以上、もう過去には戻れない。
彼の面倒をみているつもりが、すっかり彼の魅力に虜になり、依存している自分がいる。

お気に入りの毛布にくるまって、手をうごかしながら甘えた仕草をする彼を見つめながら、頭をそっとなでてあげる。

ネコとの暮らしは、想像以上に愛に満ちているのだ。

 

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2016-12-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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