ほんの小さなひと言に込められた優しさと多生の縁
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:遠藤 美紀(ライティング・ゼミ2月コース)
いつも私が心がけていることがあります。それは、小さなひと言を添えること。
以前、小さなひと言からハッとさせられたことがあったからなんです。
私は友達と買い物をしていて、「少し休みたいね」ということになりました。近くにカフェはないかと探して、見つけたお店にはいったのです。そのカフェは混み合うほどではなかったので、ゆっくりできる、ということで選んで入ったお店でした。
お互いにコーヒーを注文して、席に着きました。お水は自分で取ってくるようになっています。友達に「私が持ってくるから座っていいよ」と声をかけて、順番を待っている年配の女性の後ろに並びました。その女性も前の人がお水を入れ終わるのを待っていました。
私は並ぶことがあまり好きではないので、行列ができるお店、なんて聞いてもなかなか並ぼうとは思わない方です。ですが、並ぶことになれば、そこは気にしません。周りを見たり、呼吸に意識を向けたり、楽しいことを考えたり。そうやって時間を待つので、あまり苦痛には感じないで過ごすことができます。
今回はお水をコップに入れるだけの待ち時間なので、あっという間に順番が回ってきます。
年配の女性も、一緒にいる人の分も持っていくらしく、ふたつのコップに水を入れてから、振り向いて「お待たせしました」とにこやかに声をかけてくれたのです。
心がふわっと軽やかになりました。
「いいえ」と私も笑って返事をしたのですが、その時は少しびっくりしてしまいました。
これまで、並んでいてそんな風に声をかけてもらえることはなかったんです。
その女性の前にもお水を取りに来ている人はいて、その人も含めて私は並んで待っていたので、その女性がいたから待った、という感覚は全くありませんでしたし、その後ろの人が私のせいで待っている、という考えもなかったのです。人がいるのだから、順番に待つのはあたりまえ、と子どもの頃から言われていますものね。
それでもそのひと言のおかげで、「いえいえ、そんな待つというほどではないのでお気になさらずに」という気持ちの余裕と優しさが生まれるなぁと気づくことができました。
たったそのひと言だけで。
それに気づいた私は、さっそく次の人に、「お待たせしました」と声をかけて友達の待つテーブルに戻っていきました。やっぱりその人も少しびっくりしていたようです。
その時からです。私が順番待ちをしている時に次の人に「お待たせしました」と声をかけるようになったのは。
友達にその話をすると、「少しハードルが高いなぁ」と言いました。あれ? そういうものかな? とびっくりしました。
私にとってはあまりハードルの高さを感じないことなのは、ある意味ラッキーだったのかもしれません。おかげですぐに試すことができたのですから。
それからは他のことにも意識を向けるようにしています。今までは知らない人の場合、ぶつかりそうになっても言葉ではなく、会釈だけですませていたのを、きちんと「ごめんなさい」と声に出すようにしています。ぶつかってしまったら、「ごめんなさい、大丈夫ですか?」とひと言添えます。買いたいものの前にいた人が場所を譲ってくれたら、「すみません」ではなくて「ありがとうございます」と変えました。
書いてみると当たり前のことなのに、今までそんな大切なことをおざなりにしていたのだと気づきました。
私たちのまわりには素晴らしい先生たちがたくさんいるのだと思います。
他の人の素晴らしいところはどんどん取り入れていきたいものです。
「そで触り合うも多生の縁」という言葉があります。これは、どんなに小さな事、ちょっとした人との出会いも言葉を交わすことも、単なる偶然ではなく、前世からの縁があるからだ、という意味です。
そう考えると、私のように、たまたま前にいた女性からの何気ない「お待たせしました」という言葉をかけてもらうことも、そこに学ぶことも、さらには私の後ろに並んでいた人だって、多生の縁があった、ということなのかもしれませんね。
そんな縁を無理に繋げることはもちろんありませんが、ほんの一瞬のその縁を優しいものにするためにひとこと添えることができるといいのではないかと思っています。
家族や友人という、濃い関係性には、やはり学びも喜びも多く詰まっていることでしょう。
ですが、ほんの一瞬の縁を大切にする事もまた、素晴らしい学びがあるのではないかと思います。そういう考え方が好きですし、私もそういう人でありたいと思えるようになりました。
***
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