目に映っていても見えていない人のためのキーワード
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記事:栗原雅代(ライティング・ゼミ)
「あれっ、今のおじいちゃんどうしたんだろう?」
「遅刻しそう~」とあせって、新宿の雑踏を自転車で走っていた私の目の端に、わき道にいるおじいちゃんの姿が映った。
通り過ぎたものの「うん?」と思った。
なんか気になる。
手押し車を押していたおじいさんが立ち止まって何かやっていたな~。
もしかして……動けないのかな?
急いでいるけれど気にかかる。
え~い、戻ろう!
Uターンして引き返すと、案の定おじいさんは坂道の途中で立ち往生していた。
道がでこぼこしていて手押し車がひっかかって進めないようだ。
「お手伝いしましょうか?」と声をかけ、手押し車を持ち上げ、一緒に大通りまで出た。
大通りからたかだか1メートル程の距離だけど、どれくらいの時間そこにいたのだろうか。おじいさんの鼻から10センチほどの鼻水が垂れている。
見てはいけないものを見てしまった気になり、顔を背けた。
そっとティッシュを手渡し、急いで自転車に飛び乗った。
ダッシュで自転車をこぎながら、何だかもやもやする。
こんなにたくさんの人が歩いて、おじいさんが立ち往生しているのは見えているはずなのに、誰も声をかけなかったのだろうか?
どうして?
そういう私もすぐに声をかけられなかった。
一瞬目の端に捉えたおじいさんの映像を思い浮かべ「もしかして動けないのかな?」と気付くまでちょっと間があった。
自転車のスピードの所為もあったと思う。
もし歩いていたら、すぐに声をかけただろう。
でも歩いていても気付かない人がたくさんいる。
なぜ?
もしかして……。
目に映るということと、見えているということは別なのかもしれない。
先天的に目が見えない人が手術で見えるようになっても、物を認識できないという話を聞いたことがある。
色は光として脳に届く。
それを物として認識させるのは脳の機能だ。
先天的に目が見えない人は、その機能が形成されないそうだ。
視覚に障害のない人は、赤ちゃんの時からその機能が育っていく。
だから物を視覚で認識ができるようになるという。
でも、それって認識できるというより、目には映るという言い方が正しいのではないだろうか。
その映ったものをどう捉え、どう判断し、どうアクションするのか。
そこまで繋がって始めて見えているといえるのではないだろうか。
「見ているはずなのに!」と相手は思っているのに、見えていないということがけっこう起こっていて、それが人間関係を悪くしたり、ストレスの原因になってしまうということがあると思う。
仕事場にごみが落ちていることがよくある。
目立つと思うのだけど、何で拾わないのだろうと不思議に思う。
物が置きっぱなしになって、邪魔になっているみたいだけど、片付けないのかな?
置いた人が片付ければいいと思っているのかな?
でもそうだったらその人に片付けるよう、声をかけてあげたらいいのに。
若いスタッフに気付いて欲しくてだまって見ているけれど、時々「もう! 気付いてよ!」と、言いたくなることがある。
「何で捨てないの!」
「何で片付けないの!」
「見えているでしょう!」
と思っていたけれど、それは間違っていたのかもしれない。
目に映っていても、ごみを拾おう、片付けようという行動に繋がらなければ、見えているとはいえないのだろう。
光を物として認識するための脳の機能があるのなら、目に映ったものを見るための脳の機能があるのではないだろうか。
その働きが低下している人が多いのかもしれない。
なぜだろう?
田舎道で、おじいさんが立ち往生して困っていたら、通りかかった人はきっと手助けをするだろう。
でも、都会で人とぶつからないようにしながら、仕事のことを考えたり、待ち合わせ場所に急いでいたら、おじいさんが目に映っても素通りしてしまうのかもしれない。
人や情報が多すぎるから、目に映るものを処理しきれないのではないだろうか。
たくさんの人や情報に囲まれると、目に映ったものはまるで映画の世界みたいに現実感がなく、他人のおかれている状況に思いをはせることもできず、人と人とのつながりが薄れていくのかもしれない。
それは、責められないことかもしれないけれど、とても寂しい。
人と人との間に何かが足りないのだと思う。
目に映ったものを見るために、脳の機能にスイッチを入れる何かがあるのではないだろうか。
困っている人の手助けをするのも、ごみを拾うのも、物を片付けるのも他者への心遣いから生まれる行動だと思う。
他者への心遣いを持って世の中を見渡せばきっと目に映るものすべてが現実となり、見えてくるのじゃないかな。
それはきっととても豊かな世界だと思う。
だから、見るためのキーワードを脳に打ち込もう。
「こ こ ろ づ か い」
ほら、いろいろなものが見えてきたでしょう!
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