メディアグランプリ

あのCCブラウンサンデーが復活してるぞ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:久田一彰(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
自分の大好きな食べ物が、もう二度と食べられないと思った時の心境はどんなだろうか。最初は悔しかった。もう一回食べに行っときゃよかったとか、もっと食い溜めできればな、とか。後悔が残るばかりだ。
 
しかし、時間が、月日が、年月が過ぎていくうちに、忘れ去っていっている。思い出すことなく自分の記憶の中から消しゴムで消されたかのように、消滅していったのである。
 
食べられなくなった理由はさまざまだ。お店がなくなったから。作り手がいなくなったから。人気がなくなってメニュー表から消える。自分が引っ越して遠くにいってしまい、そのまま会えなくて、遠距離恋愛が自然消滅するような、物理的に離れてしまうこともあった。
 
なにかのタイミングでお店に行けるが、もうそのお店は無い。店主の思いが、かつての会話の残り香が、貼り紙と共にそこにあるだけ。後悔と受け入れられない現実を直視できずに、なんと表していいのか分からない感情だけが渦巻いている。
 
そんな食べられなくなってしまった、大好きな食べ物が私にもある。祖母のおはぎ。母に連れていってもらったお鮨屋のカツ丼。学生時代に呑みに通ったお店の大根おろしのお通し。呑んだ後の〆に出された鶏ガラスープ。ちょっと年季の入ったお店の天むすおにぎりとカツ丼。そして、ROYALのCCブラウンサンデーだった。
 
ROYALはファミリーレストランで、CCブラウンサンデーは、祖母と母にデパートに連れていってもらった時に、デザートで食べたパフェだ。ほかに何を食べたのか覚えていないが、CCブラウンサンデーを食べたことはしっかりと覚えている。
 
だけど、父の転勤の都合で福岡を離れ、引っ越して会えなくなった。多分最後に食べたのは、小学1年生の頃だと思うから、もう35年くらい前のことだ。その間何度も福岡に帰ってくることはあったが、食べたいという記憶はなくなっていた。
 
それが、だ。こないだ妻と一緒にロイヤルホストへ行ったときに、デザートページにあったパフェを見たときに、CCブラウンサンデーの記憶が強烈によみがえった。あのCCブラウンサンデーが食べたい! そう思ってメニュー表を隅から隅まで、ひっくり返してみたが載っていなかった。ロイヤル違いなのか、スマホで検索してみた。
 
すると「プレミアムロイヤルホスト駒沢店」にあると表示される。「嘘だろ。プレミアムロイヤルホスト駒沢店なら、大学生の時と何度も行ったぞ。サークルの打ち上げの後にも行ったぞ。なんであの時気づかなかったんだ」と後悔。1億円が当たる宝くじの番号が、最後の一桁だけ違ったみたいな残念な気持ち。タイムマシンがあるなら、あの時に戻りたい気持ち。どうにかしてよ! ドラえも〜ん的な気持ち。
 
そんな想いが天に通じたのだろうか? 思いもよらずCCブラウンサンデーと出会うことができたのだ。先日、東京で仕事を終えて、福岡空港に帰ってきた。ちょっと小腹を満たそうと、到着ロビーからエスカレーターを昇って、レストランフロアへ。見慣れたROYA Lのお店を横目に素通りした時に感じた違和感。何者かの視線を感じた。
 
スーツケースを引くのをやめ、お店をみる。メニューはおいしそうな洋食が並んでいる。パフェもあるよな、と思いながらよくみたその時。なんと、「CCブラウンサンデー」の文字が! 思わずメニューの写真をスマホに収める。そのままお店の中に吸い込まれるように入る。
 
「いらっしゃいませ、何名様ですか? あちらの窓側の席へどうぞ」と案内される。この興奮を悟られまいと、落ち着いた雰囲気を出しながら、メニューをめくる。どうせ頼むのはCCブラウンサンデーだけど、本当にメニューにあるのか、もう一度確認してみる。やはりある。夢じゃない。35年の時を越えて会えるのだ。
 
「注文いいですか? CCブラウンサンデーひとつお願いします」「かしこまりました、CCブラウンサンデーひとつですね。他にはよろしいでしょうか?」「はい、大丈夫です」よし、噛まずに言えた。待っている間は、スマホをいじる気にもならなかった。ひたすら待つ。「お待たせしました、CCブラウンサンデーでございます。ごゆっくりどうぞ」
 
来たよ来たよ。本当に来た。まごうことなきCCブラウンサンデー。まずは、そのお姿をスマホに収める。チョコレートソースをかける。最後のひとしずくまで残さずに、白いホイップクリームとソフトクリームを、白い布を黒い染料で染めるようにゆっくりと。さあ、食べる準備はできた。いざ、銀のスプーンを持て!
 
まずは、てっぺんのベリーを。そしてチョコレートのかかったホイップクリームとアイスクリームをいっぺんに。ああ、これだ。これがCCブラウンサンデーだ。チョコソースのあたたかさと、ソフトクリームの冷えと甘さ。
 
食べ進んでいくうちに、銀色の器の中に、チョコとアイスのマーブリング模様ができあがる。底に溜まった液体を、最後まですくう。本当なら器を逆さまにして、飲み干してしまいたいくらいだ。あっという間に楽しい時間は終わってしまった。
 
でも、ここに来れば食べられると分かった。出会えて本当によかった。これからも福岡空港を使うたびに食べよう。身体中に幸せが駆け巡る、とっても感慨深い瞬間だった。
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」

〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168


■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」

〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325



2023-04-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事