メディアグランプリ

ミニマムライフ世代のアラサーの僕が、ゆとり世代の彼女から言われた「承認のことば」


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:たむ(ライティング・ゼミ)

「また、上司の飲みに付き合ってきたの……。私ならきっぱり断るけどね」

7歳年下の彼女に言われた。僕としては、上司に誘われたら断ることは失礼にあたる。
飲みニケーションが大事だ、と新卒から教わった。それが当たりまえの社会人生活だった。

例えば、残業した日は、「今日は仕事を遅くまでお疲れさま飲みだ」と言われれば、僕たち社員は、「はい、いきます」とついて行っていた。
そして、上司に仕事の相談、または、上司の小言をのらりくらり躱しながら、話しを聞いているフリをする、などもよくあった。また、仕事のときとは、違った一面も垣間見えたりするので、苦手だなっと思う人を。「あっ、この人は意外といい人だな」と心変わりすることもあったりした。
しかし、ゆとり世代は、「今日は飲みにいく気分ではないので帰ります」とか、「仕事ではないので、行かないです」など断ることが多い。誤解がないように言っておくが、僕と関わりのある「ゆとり世代」はバサッと断るのだ。
もちろん、上司は納得いっていないようだ。
「普通、上司が誘ったら、飲み会には参加するだろう。あいつらは、断りやがる」と。
「おまえらみたいな可愛い後輩は『飲みにつれてってください』や『今日はおごってください』と話しかけてくれて、とても可愛い後輩だらけだったのに、今はなんだ! 仕事の話しかしてこない。もしくは、こちらが話しかけるまでぼーっとしている。あいつらは宇宙人だ! なにを考えているか全然わからん……」

僕と飲んでいるときに、罵詈馬頭を続けるのだ……。

しかし、僕は羨ましかった。

断る勇気がある「ゆとり世代」を。

僕にも予定があり、「よし、帰ろう」と思っていても、上司に誘われるとどうしても行かなくては行けないと思い、「今日、予定ないのでいきます」と返事をしてしまっている。
飲みにいくとそれなりに楽しいのだが、家に帰ると「なぜ、飲みに行ったんだろう……」と多少の後悔が残る。誘われては、「行きます」と答えていると、飲み会メンバーに自動的になっているので、断りづらくなる。断ったら、嫌な気分にさせるのではないかと考えている自分もいる。

ゆとり世代の彼女は、自分の意見をはっきりと伝える人だ。
「やりたいことはする。したくないことは断る」
彼女がよく言っていることだ。最初は、年下の「わがまま」だと思った。年下だから許せるし、まー、可愛いわがままだと思った。しかも、好きな人、彼女のわがままだったので、許せてしまうのだ。しかし、この考え方は彼女だけではなかった。僕が知っているゆとり世代は、みんなこんな感じだ。

僕は聞いた。

「上司や会社の人の飲み会の誘いを断っているけど、会社の雰囲気とか上司の対応は悪くならないの?」

「全然! 仕事はしっかりしているし、私は私の予定があるから。しかも、気が合わない人たちと仕事終わって一緒に飲みに行っても楽しくないよ、ストレスが溜まるしね」

「ふーん、だけど、飲みにいくことで意外なことがわかったりして楽しいけどな。予定がなくて誘われたら行くの?」

「……、よっぽど暇じゃないと行かない」

「なんで?」

「自分の時間を有意義に使うのは当然でしょ! 仕事仲間と飲みにいっても愚痴を聞いて、気配りして、上司にヨイショするんでしょ。それは、私が好きなことではない。まー歓送迎会や行事にはしっかりでるよ。私、偉いでしょ?」

僕と彼女の感覚がここまで違うとは……。社会人経験が彼女よりもながい僕としては、色々と言いたくなる。
それだと、上司から良い評価が貰えないぞ! 職場で働きにくい環境になるぞ! 人間関係は一緒にいる時間がながいほど良くなるんだぞ! など。

しかし、僕は言えなかった。羨ましかったから、自分の意見を素直にいえる彼女が。

僕だって、早く帰って好きな漫画やドラマを見たいときもある。おいしい料理を食べたい。一人きりになって考えることもしたい。いつも同じメンバーで同じような話しをするのはめんどくさい。気を使うのは嫌だ……。もっと、楽しく飲みたい。

いろんな感情が沸き起こってくる。「羨ましい感情」が。

僕に断ることができるだろうか? イメージトレーニングをしてみる。

「今日、飲みにいかないか?」
「すいません、今日は予定があるのでやめておきます」
「予定ってなんだよ?」
「予定は……、家に帰ってゆっくりしたいんです」
「ゆっくりしたいから、飲みにいかないのか? おれと飲むの嫌か?」
「そんなことないですよ! 先輩と飲むの楽しいです」
「そっか。じゃあ、いくぞ」
「……はい!」

イメージトレーニング終了! だめだ。僕には断れない。軽いウソをついてもすぐにばれる気がする。上司が寂しそうな顔をするのを見てられない。

そんなことを考えていると彼女が、

「なんでも断らないあんたが好きだけどね」

7歳年下の彼女からあんたよばわりされながらも言われた一言。

「なんでもはい、はいと言って、人として害がないからみんなから好かれるよね。大変そうなところも可愛いくみえるし。助けたくなるキャラなんじゃない。今のままでいいよ。私は、あんたみたいな『断らない勇気』が少し羨ましい。少しだけね」

意外だった。実は彼女も、「断らない勇気」を羨ましいと思っていたのだ。
隣の芝を青く見えるということわざがあるが、ゆとり世代の彼女も僕もことを「羨ましい」と思うことがあるとは……。

僕は、「断る勇気」がほしかった。しかし、「断らない勇気」があった。
彼女は、「断らない勇気」がほしかった。しかし、「断る勇気」があった。

世代間をこえる「共感できる悩み」だ。
僕は、○○世代を気にするタイプの人間だった。
「○○世代の人だから○○だよね…」
と考えることで納得できるからだ。納得できると、行動や性格も僕なりに理解できる。

その考えを改めるべきかもしれない。
どの世代も悩みは似ていて、自分を承認してほしい欲求がある。
彼女の承認欲求を満たすことができる「ことば」を探し続けたい。

***
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
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2016-12-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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