やさしい呪いはバカな自作自演を再三止めにかかる
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:松岡佐和(ライティング・ゼミ)
ネット上でだけのつながりだったみどりさんにようやく南インドで直接会える。
みどりさんは若い頃はインドを放浪していたそうで、イギリス国籍だとインドビザが取りやすいと聞いてイギリス人と結婚した女性です。
(すでに離婚)
ロンドンに住むみどりさんは最初、私が運営しているインド占星術関係のネットショップのお客さんでした。
わたしは彼女を翻訳スタッフとしてスカウトし、仕事を手伝ってもらうようになり、4〜5年が過ぎました。
私は南インドと日本をしょっちゅう往復しているのですが、みどりさんいわく、自分は若い頃南インドに行こうと思っても呪いがかかっていけなかったそうです。
みどりさんはその頃、北インドに住んだりしていました。
呪いがかかって行きたくてもいけない、そういうことはよく聞きます。
特に私がよく行く、今現在も滞在している聖地は呼ばれた人しか来ることができないとよく言われます。
南インドに限らず、そのように言われている場所は世界中にあると思います。
実際、すべての場所がそうだとは思います。
つまり私たちは会うべき人にだけ会って、行くべき場所にだけ行き、完全に自分専用にカスタマイズされた経験をしている。
わたしはそのような世界の完全性は真実だとしみじみ思う今日この頃なのですが、日常の中ではつい自分の思いを通そうと無理をしたり焦ったり、気を揉んだりすることもよくあります。
ずっとずっとインドに来れなかったみどりさんは今回、いろんな条件が整って、ずいぶん久しぶりにインドに来ることになりました。
みどりさんいわく、呪いが解けた。
今回の旅、みどりさんと今のだんなさんは最初、北インドのイベントに参加しました。
そこでの目的を果たしてイベントを堪能し、後半、私の滞在する南インドの聖地にやってきました。
彼女が若い頃、呪いがかかっていて来ることができなかったという場所です。
私は彼女に仕事を手伝ってもらっていることもあり、
ずっとネットで連絡が取りあっていて、みどりさんが北インドにいる間にも仕事用のチャットで連絡を取り合っていました。
ところが、イギリス出発直前にみどりさんのPCに猫が物を落として画面が割れ、それでも使っていたけれど知らない間にバッテリーも壊れていたらしく、北インド滞在の途中から連絡が取れなくなりました。
南インドに来る日程は聞いていたので、
みどりさん、そろそろ来てるはずなんだけど、とは思うものの、どこにいるかがわからない。
彼女とだんなさんが南インドに滞在するのは約1週間。
最初はわたしも来そうなところで彼女の姿を探したりしましたが、
彼女の滞在予定も2日過ぎ、3日が過ぎしているうちに、
また彼女の呪いが復活して、もしかして来れてないのかもしれない、今回も会えないのかもしれないと思うようになりました。
半分諦めてきた。
そしてもう人々の中に彼女の顔を探すのはやめました。
そして今いるアシュラム(精神的修練の場、聖者のいおり、みたいな意味です)の宿泊している部屋からアシュラムの日課のチャンティングをしたり歌を歌ったりするホールに歩いて行っていたら、前からきた人がすれ違う前に立ち止まり、わたしの顔を見て物言いたげでした。
「みどりさん?」
みどりさんとだんなさんでした。
会えた。
話をしてみると彼女たちは私が宿泊している棟の隣の棟に3日前から滞在していました。
なんだ。
なぜ会わなかったかというと、3日間2人とも具合が悪くて、食事もろくにせず寝ていたらしい。
2人とも元気になってウロウロ表を歩き出したので、わたしと道でばったり会うことができたというわけです。
会いたくても会えず連絡も取れなかったその間に最後の呪いが解除されようとしていたのかもです。
下痢したり発熱したりすると聖地ではよく「よかったね」なんて言われます。
他人事だと思ってよく言うよって感じですが、つまりそれは浄化作用だというわけです。
波長の調整が肉体面でも出てるとみなされます。
実際浄化なのかどうなのかは知りませんが、隣同士の建物にいながら全然会えなかったというのも奇なものだと思いました。
でもその時隣の棟にいると知っていたら、そして2人の具合が悪いと知ったら、わたしはしなくてもいいおせっかいをたくさんしていたかもしれません。
だから、2人が隣にいると知ることができなかったのは、きっと良かったのだろうと思いました。
そしてわたしに会ったそのとき、みどりさんとだんなさんはアシュラム内から外へ引っ越そうとしていました。
アシュラムは静かすぎて逆に物音が響いて眠れない、ということで。
そしてその後2人は荷物を運ぶために雇った車が来るのを待っていました。
しかし雇ったはずの車は来ませんでした。
そしてわたしたちはアシュラムの中で今しばらく、そのまま隣の棟同士で滞在することになりました。
そしてその日からは2人はその部屋でも眠れるようになったそうです。
わけあってだんなさんが一人で行動するのは難しく、
アシュラムは男女別に行動するようにルールが定められている場所が多いので、
2人はアシュラムにいながらあまりアシュラムをうまく利用できていませんでした。
この場所の、最も神聖とされる場所にも近づけず、2人で遠くから見ることしかできていませんでした。
そこでわたしと2人目の元だんなさん(プラス赤ちゃん)が、それぞれみどりさんとだんなさんと女同士、男同士のペアになって、アシュラム行事や食事に案内して行くことになりました。
車が来なくて結局引っ越しができず、隣同士のままだったので、それぞれが一緒に出かけるための待ち合わせも簡単で、よかったのです。
呪いは解けて、2人はこの聖地の心臓部(聖所)を完全に経験することができました。
そして今日は朝のアシュラムの日課の後、町の観光に出かけました。
博物館に行く予定でした。
オートリキシャと呼ばれる、バイクを改造した自動3輪2台に5人が分乗して走り出そうとした時、
今日は月曜なので博物館は休みだと、ドライバーから知らされました。
なので予定を変えて、そのオートリキシャで町の観光スポットをあちこち見て回ることになりました。
博物館は今日はいけなかったけれど、午前中の2時間で他のめぼしい観光スポットをすべて巡ることができて、結果的にとても充実した時間になって良かったのです。
この町に何年も住んでいたわたしも行ったことがなかった場所にも行くことができて、単なる案内人としてではなく、わたしも十分楽しめました。
そして今日は月曜日。
町には月曜日に行くといいシヴァ神のお寺があって、彼らをそこに連れて行きたいなとわたしは内心思っていたのですが、そのお寺にも今日ちゃんと行くことができました。
思っていたようにいかないことって、よくあります。
計画が頓挫することもよくあります。
でもその時もっと別のさらによい計画が別次元で進行していて、現象としてストップがかかったように見える時って、現実が単にそっちにシフトチェンジしてるだけなんじゃないかと感じることもよくあります。
自分がやらなきゃと責任を感じてもがくこともよくあります。
あせることもあります。
いろんなことを抱えすぎ、混乱してパニックになった時、
本当は自分がやってることって何もないのに、自分がやってるみたいに勝手に焦ってるのかもしれません。
それってもしかして、いい意味の責任感ではなくて、余計なお世話的な、勝手に自負するという勘違いなのかもしれない。
自分が焦っても焦らなくても、苦しんでも苦しんでいなくても、結局、物事の結果は同じだったりするのかも。
なのに勝手に辛くなり、苦しんで、思い通りにいかない状況にストレスを感じるという、バカなことをしているのかもしれない。
それがやめられず、そんな自負のストレスの中毒になってしまったとき、
きっとそんなバカな自作自演を止めてくれる優しい呪いが、そっと私たちにかかるのだと思います。
そしてわたしたちはもがくのをやめて、安らかにあきらめる。
わたしが思い通りにいかない呪われた状況を受け入れ、状況をコントロールできる自負を手放した時、
すべての状況は親しげに寄り添ってきて、
わたしはいつの間にかそれらをすでに把握できていることに気がつきます。
今日は原稿の締め切りだったこともあり、みどりさんとだんなさんへの午後のつきそいを放置しました。
これもまたなにか、素敵な呪い? かもしれない。
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