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メディアグランプリ

新幹線の中で手に入るウイスキー


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:久田一彰(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
「申し訳ありません、ただいまその商品は売り切れております」
新幹線の中で車内販売パーサーからそう言われたのは、何回目だろう。今日の私には縁がないのだろうか。
 
「あ、わかりました、ありがとうございました」
お目当てのミニチュア瓶のウイスキーに、今日も出会えなかったのか、すごすごと自分の席で小さくなっている自分がいる。いつになったらみんなのように、私もあのウイスキーを手に入れられるのだろうか。
 
とあるFacebookのグループページで、ウイスキー愛好会の方々が、日々ウイスキーの写真を投稿している。ジャパニーズウイスキーやスコッチウイスキーはもちろん、ホームバーの写真や、焚き火をしながら飲むウイスキー、新幹線で移動中に飲むウイスキーやハイボール、と楽しみ方はそれぞれで、本当にウイスキーが好きな方ばかりだ。このグループ内でウイスキーのことについて質問すると、誰かが答えてくれ、おすすめの飲み方、楽しみ方も教えてくれる。血の通ったChatGPTのような存在だ。
 
ウイスキーについての知識や銘柄、種類など眺めているだけでも勉強になるし、いつしかあのウイスキーを飲んでみたいという衝動に駆られるのは、それだけウイスキーの琥珀色には、魅力的でダイソンの掃除機のような吸引力を持っているからだ。
 
グループ内を今日も巡回していると、ある日、新幹線の中で手に入れました! と、おいしそうなミニチュア瓶の写真と、コップ、炭酸水が映っている写真を見つけた。よく見るとその瓶のラベルには、何やら漢字が書かれている。画面を拡大させてみると、「山崎」と書かれている。
 
「え? 嘘だろ。新幹線の中でこれが買えるの? しかもサントリーの山崎蒸溜所で造られた原酒を12年間樽の中で熟成させた、『サントリーシングルモルトウイスキー 山崎12年 ミニチュア瓶』50mlじゃないか。最近、ジャパニーズウイスキーは原酒不足や品薄で手に入れにくいのに、よく手に入ったな。しかも、日本洋酒酒造組合が定めているジャパニーズウイスキーの定義に当てはまる、正真正銘のジャパニーズウイスキーだ」羨ましい気持ちが体一杯に満たされて、自分も新幹線に乗ったら絶対手に入れてやると決意した。
 
だけど、新幹線といっても、九州、山陽、東海道、東北、北海道新幹線と多くの路線が存在しているし、明太子や安倍川もちのような、地元の特産品関連のお土産と同じように、どの区間で販売されているのかも調べる必要がある。
 
きっと誰かが詳しい情報を書いてくれているはずと信じて、もう一度、ウイスキー愛好会のFacebookグループページの海へ飛び込んで、詳しい情報を手に入れるため、あまちゃんのように深く潜っていった。するとやはり思った通り、親切な方々が、写真と共に買えた時の状況を詳しく書いてくれていた。
 
それによると、手に入れるにはどうやら、東海道・山陽新幹線の新大阪〜京都間が濃厚だ。そのあたりで回ってくる車内販売ワゴンで買えるらしい。それもそのはず、サントリーの山崎蒸溜所は、新大阪〜京都間で新幹線の車窓越しからも見える。進行方向を東京にして、左側の席に座っていると見える。まさにご当地商品だ。
 
また、新大阪発の新幹線だとワゴンも新しく商品を補充して入ってくるので、手に入れる確率はさらに上がるそうだ。こんな1等当たり宝くじの手に入れ方のような貴重な情報をゲットできるなんて、夢のようではないか。
 
この情報と期待を胸に握りしめて、新幹線に乗るときが来た。博多駅から乗って、名古屋に行くチャンスがあった。新大阪〜京都間は強力なレーダーのように気配を周囲へ張り巡らせる。新幹線のドアが開くたびに顔を上げるが、トイレに立った人が戻ってきたり、乗ってきた方が入ってきたりと、ハズレくじを引き続けているような気持ちになってくる。
 
何度目かのドアが開いたときには、もうワゴンは回ってこないんじゃないかと思ってきたが、不意をつかれたように、パーサーがお辞儀をしてワゴンと共に入ってきた。
 
「きた!」
 
座り直して背筋を伸ばす。
ワゴンとの距離が近づく。
ドキドキも比例して大きくなる。
ちょっと前方で止まる。
コーヒーを頼んだ人がいるようだ。
早くきて欲しい。
声をかける。
 
「すみません、サントリーのウイスキー山崎は、在庫まだありますか?」
「はい、お待ちください。確認します」
 
ワゴン下を確認するパーサー。
ドキドキ感はクライマックス。
 
「在庫あってくれ」
祈るような気持ちでいる。
 
「はい、ございますよ」
「じゃあ、ひとつください」
 
マスクをしていたので気づかれなかったと思うが、きっとすかした顔で、引きつった笑顔だったに違いない。
 
「お水と炭酸水どちらになさいますか? 今お飲みになりますか?」
「じゃあ、炭酸水で、持ち帰って楽しみます」
「ありがとうございました」
 
念願の『サントリーシングルモルトウイスキー 山崎12年 ミニチュア瓶』を手に入れた私は、早速Facebookグループページに写真を添えて投稿した。
 
「これ、一度やってみたかったんです」
あっという間に、祝福の「いいね!」が162件届いた。
 
 
 
 
***
 
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2023-04-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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