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猫をお風呂に入れる日には、何も予定を入れないことに決めている


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記事:前田直子(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
猫飼い苦労イベントのひとつ。
それは猫をお風呂に入れること。
 
猫はきれい好きな動物で、自分でグルーミングをすることから、あまりお風呂を入れる必要がないとされている。
ただ、長毛種は別で、1ヶ月に1度を目安に入れたほうがよい、らしい。
 
そして我が家にいるのは、長毛種の猫である。オスの虎徹と、メスの寧々という2匹がおり、虎徹は特に頻繁にお風呂に入れる必要がある。しばらくお風呂に入れないと、尻尾のあたりがベタベタしてくるからだ。スタッドテイルというらしく、そのままにしておくと皮膚にとって良くないのだそう。
ベタベタしてきたら、「そろそろお風呂に入れなきゃ」という合図である。人間側も覚悟を決めなければならない。
 
まずはブラッシングをして毛のもつれをとり、爪も切っておく。そして猫たちをお風呂に誘導して、そっと扉を閉める。
猫たちは「はっ、しまった! やられた!」という顔をするが、諦めてもらおう。
 
2匹いるうち、虎徹はまだいい。
嫌そうにウロウロするが、比較的大人しく洗わせてくれる。猫用クレンジングオイルを背中から尻尾になじませたあとに、2回シャンプー。そしてリンス。よくタオルドライしたあとに風で乾かす。ドライヤーはキンキンした音がするからか嫌がるので、我が家では布団乾燥機を使っている。
それなりに飼い主も疲れるが、虎徹はまだ許容範囲である。
 
問題は寧々だ。
寧々はものすごくお風呂が嫌いである。
 
お風呂の扉を閉め、シャワーを出すと、これから何をされるかを悟った寧々は悲痛な叫び声を上げる。
「ニャアアアアアアアアアアアアアア!!!」
まるで、「殺される!」とでも言わんばかりの鳴き方である。
知らない人が聞いたら、虐待を疑うのではないかと思うくらいに鳴く。
 
そして、ブルブルと震えながら、私にすがりついてくるのだ。
 
寧々は普段、ツンデレで抱っこなんてさせてくれない。抱っこすると、飼い主に蹴りを入れて去っていく猫である。
なのに、お風呂のときだけは抱っこを求めてくる寧々に、ちょっと嬉しくなってしまう飼い主心。だが、喜んでいられるのもここまでだ。
 
寧々は怖いシャワーから逃れようと、私にすがりつき、そして登ってくる。爪を立てて。
彼女にはなんの悪気もない。登るときにはすべらないよう、爪を立てるだけのことだ。うん。当然そうだろう。分かっている。
ただ、登られる方は生身の人間なので、とても痛い。ね、最初に爪を切るって言った意味がわかるでしょ。
 
そして、寧々は私の身体を上り、私の首の後ろに到達する。少しでも高いところに登って、安全を確保しようとしているのだろう。これ以上、逃げ場がないので、寧々は私の首の後ろから動けない。そして下ろそうとしても下りてくれない。
となると、彼女を洗う方法はただひとつ。私ごと洗うしかない。
 
私の首の後ろに寧々を乗せたまま、夫がシャワーを寧々にかけ、そしてシャンプーをし始める。
「ニャアアアアアアアアアアアアアア!!!」
嫌がり、悲痛な声をあげる寧々。
だが、泣きたいのは私だ。
 
6キロの猫を首の後ろに乗せた状態で洗うためには、ずっと前傾姿勢でいないといけない。地味につらい。そして寧々がたまに爪をたてる。痛い。
着衣のままシャワーをかけられ、シャンプーの泡をつけられ、シャワーをかけられ、リンスをかけられ、そしてまたシャワーをかけられる。ずぶ濡れな上に、ずっと前傾姿勢なので、首も痛いし、腰も痛い。
 
「早く終わらないかな……」
おそらく寧々が思っている以上に、私が思っている。
 
水責めが終わったら、今度は風責めである。
タオルドライをしたあとに、布団乾燥機で風を送り、乾かしていく。猫は毛深いので(そりゃそうだ)、なかなか乾かない。ブラシをかけながら乾かしていくのだが、私はずぶ濡れなのだ。寒い。ゆっくりお風呂に入って温まりたいところだが、まずは猫だ。猫を乾かして、ちゅ~るでご機嫌を取らねば。
 
長い時間をかけて猫を乾かし、ちゅ~るをあげたあと、ようやく人間はお風呂に入り、休むことができる。
終わったあとは、疲労困憊である。肩も腰も痛いし、ひっかき傷もできている。疲れた。本当に疲れた。
そして、眠くて仕方なくなり、ベッドに入ってお昼寝をする。平日の仕事の疲れと、猫をお風呂に入れるという大仕事の疲れが出て、コンコンと寝てしまう。気づくと、外はもう真っ暗だ。
 
ああ、今日は猫を洗っただけで一日が終わってしまった。
 
と思うが、そんなに悪い気分ではない。
猫がふわふわでサラサラで、いい匂いがするからだ。心なしか猫たちの美貌が増した気がする。とてもかわいい。
 
1~2ヶ月後、また猫たちをお風呂に入れなければならない。その時も私はスブ濡れになり、ぐったりと疲れるだろう。その後は何もしたくない。
その日には絶対に予定を入れず、存分にお昼寝をするのだ。
 
 
 
 
***
 
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2023-04-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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