ジャニーズから、時代の流れと世の中を考える
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記事:あこ(ライティングゼミ2月コース)
2023年5月22日。ジャニーズの「King&Prince」から3名が脱退する。
ジャニーズは、我が家の青春の象徴に近い。学生時代も、社会人になってからも、私達3姉妹(+姪)に楽しみを与え続けてくれている。推しグループは、その時によって変わるが、30年近く1ファンとして見てきた。
だから、今回のKing&Princeの脱退についても、過去のグループと比較してあれこれ考える自分がいる。
そして、思うのだ。時代が進んだのだなあ、と。
解散、脱退、退所、休止をしたジャニーズグループは多い。
その中でも、個人的に印象深いグループは、SMAPだ。
SMAPがデビューしたのは、「アイドル冬の時代」だった、というのは有名な話。
SMAPはデビュー曲が1位をとれず、事務所では完全な「お荷物扱い」だった、と言われている。
そんな彼らの面倒を引き受けたのが、事務職の女性。彼女が、その後SMAPのメインマネージャーを務め、SMAP解散後の3名のマネジメントを行っていることも、よく知られている話である。
彼女のSMAP売り出し戦略は「バラエティー進出」。
当時、アイドルがバラエティーで活躍することは、前代未聞。
土俵違いで活躍の場を見出す大変さは、私なんかには想像しきれないほどだと思う。
今でこそ、アイドルがバラエティー番組を持つこと、MCや報道をやることも当然になりつつある。けれど、それはSMAPが切り拓いた道だ。
加えて、SMAPは、「全員が売れること」を目指したグループだった。SMAPにもメンバー脱退はあった。けれどそれは、「芸能人」とは全く違う職業を選んだ末の選択だった。
私は、こういったSMAPのストーリーを聞くたびに、「世の中の流れを先に読み、変化・新しさに果敢に挑戦することの大事さ」と、「個人が成長して、グループを大きくするという気概」を感じる。
逆境から這い上がる力強さ。少し、「昭和っぽさ」も感じるのである。(SMAPが活躍したのは平成なのだけど……)
SMAPの話が出ると、次に話題に上がりやすいのが「嵐」だ。
嵐は、ジャニーズJr.の人気メンバーで結成されたグループだ。しかし、デビュー曲が1位を取った後、人気は後退。先輩グループの売上に及ばず、後輩グループに追い抜かれる時期もあった。
そんな彼らは、デビュー10年を迎える少し前。メンバーが出演したドラマがきっかけで、グループ人気に火が付き、国民的アイドルとして成長することとなった。
私の彼らに対する印象は「箱推し」である。箱推しとは、グループ全体での活動やメンバー全員を「推す」ことである。
グループの仲の良さを前面に出し、誰がセンターに立っても成り立つグループ。メンバー各々、能力・活躍を広げていたが、5人でいることを望まれるグループ。それが嵐だった。
私の嵐のイメージは「平成」だ。ギラギラしていない、不況に慣れきった日本で静かに闘志を燃やしながら進むイメージだ。
そして今回メンバーが脱退を表明した、King&Prince。
5人のうち3人が脱退する、というニュースは驚きだったが、「今時の若者らしく、ある程度人気出ちゃって飽きちゃったのかな」くらいの印象だった。
ただ、脱退理由を調べるうちに、私の彼らへの認識は変わっていった。
彼らの、脱退の真の理由はわからない。ただ、表向きに出されている情報を調べて思ったことは「選択肢が増えた」ことと、「価値観が変わった」ことだった。
海外への挑戦に対するメンバーと事務所との考えのズレ。これが、脱退の大きな理由の一つである、と言われている。
ジャニーズ事務所に海外での活躍の道は全くないわけではない。SMAPも嵐も海外公演を行ったことはある。
けれど、活動はアジアが対象であり、それも国内で十分売れてからの話。
ジャニーズの主マーケットは、あくまで日本だ。
また、King&Princeに求められる世間のイメージは「ジャニーズアイドル」である。ドラマの主演、歌番組、バラエティー、キラキラのパフォーマンス、コンサート……多くの先輩グループたちが歩んできた道だ。
しかし、彼らのYoutubeにUPされた、ダンスや楽曲の中には「アイドルっぽくない」ものも含まれていた。彼らが本当はこういう路線で海外進出を望んでいたとしたら、事務所が目指す方向性や世の中が求めるものと「ズレ」を感じたとしても不思議はない。
自分のやりたいことと、周囲から求められるものがズレたら、辞めるのか、我慢が足りない、などと言う、そんな簡単な話ではないだろう。
彼らがダンスやパフォーマンスで勝負をしたいなら、焦るのも当然だ。年齢と共に体力が落ちるのは、事実だからだ。
けれど、事務所が日本の売り上げを優先したいことも分かる。結果、メンバー脱退へとつながったのではないだろうか。
メンバー仲は良さそうだったが、メンバーとの関係性は「メンバーをつなぎとめる理由」にはならなかった。メンバーとは「仕事の外」で関係性を維持するのだろう。
グループ全員が売れることにこだわったSMAP。グループの仲の良さを押し出した嵐。お互いの夢を尊重し離れるKing&Prince。3つの違いを感じつつ、これは時代の流れ・価値観の変化なのかもしれないな、と思った。
SMAPは、当時主マーケットであった「アイドル王道のルート」がなくなったところからスタートした。異分野を開拓するしか、生き残る道がなかった。結果的に、それが彼らを挑戦者にし、彼らの活躍の場を広げ、後輩にも多くの道を作った。
嵐は、SMAPが切り拓いた道を進む多くのグループの中で「勝ち抜いた」グループだ。
では、King&Princeはどうだろう? 事務所は、彼らに嵐と同じように「勝ち抜く」ことを期待していたのだろうか。
グローバル化が進み、多くの情報が手に入り選択肢が示されるこの時代。平成で成功した道筋を示されても、今の20代は、「それは違う」となるのかもしれない、と思った。
既存事業やマーケットは大事だ。今なお、SMAPも嵐も、各メンバーが各方面で活躍をし、チャレンジをしている。それは素晴らしいことだと思う。
けれど、例えば「日本で売れてから海外だ」とか、「今まで培ったネットワークが重要だ」という過去の価値観にこだわるあまり、若い才能を逃すこともあるかもしれない、ということを、今回のメンバー脱退から考えた。
一方で、King&Princeにも、自分たちの夢を実現する環境を勝ち取りに行く、そのために、周囲を動かしてしまうほどの「力」があればよかったのかもしれない、とも思う。かつてのSMAPのマネージャーのように。
グローバルで戦う。若い力を活かす。今の日本企業で長い間、求められていることだ。もしかしたら、私を含む「上の世代」が、昔のセオリーにこだわった結果、若い力を活かせない、逃す、ということもあるのかもしれない。
上の世代の功績や歴史を否定するわけではないが、上の世代も若い世代も、お互いのやり方を認めつつ、成長していける道を模索していく必要がある。
自分のセオリーを若い世代に押し付けていないだろうか。若い世代は、自分で切り開く気概はあるだろうか。
そんなことを、お互い振り返るところから始めてみてもいいのかもしれない。
涙しながらTV番組で歌うKing&Princeを見ながら、そんなことを考えた。
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