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涙を流す場所に、本当の自分がいる

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記事:宇都宮秀男(ライティング・ゼミ6月コース)
 
 
世の中には「HSS型HSP」という謎めいた言葉がある。
 
その言葉をはじめて知ったのは今年の2月。
ある知人のVoicyチャンネルだった。
 
ロンドンブーツ1号2号の田村淳さんがゲストで登場しており、彼が専門家から「HSS型HSPの可能性が高い」と言われたという内容だった。「自分が何者かということがわかって、この6文字の英語にめちゃめちゃ救われた」と話していた。
 
そもそもHSPとは「Highly Sensitive Person」の略で、「非常に敏感な人」のことを指すらしい。
 
視覚や聴覚に対する感覚が敏感で、刺激を受けやすいという特性を生まれつき持っている。相手の気持ちを察知して行動したり、物事を深く探究できる半面、ささいなことで動揺したり、ストレスをためてしまう。病気や障がいというよりは脳の特性のようなものらしい。
 
HSPは「繊細さん」とも言われ、本がベストセラーになったのを思い出した。でも僕はそのタイトルに興味が持てなかった。自分のことではないと思ったからだ。「繊細さん」は、繊細ゆえに奥手のイメージがある。しかし僕は敏感ではあるが行動はアグレッシブだ。
 
「HSP」にもいくつか種類があるらしく「HSS型HSP」というのは、かなりのレアケースで「刺激追求型HSP」とも言われている。つまり「外部からの刺激に対して非常に敏感だけど、刺激を求めずにはいられない」といった矛盾を抱えた存在だという。
 
Voicyで初めてこれを知った時、脳内に閃光が走った。
あ、これだ、まさに、自分はこれだ!
 
ずっと自分のなかで「得体の知れない何か」だと思い込み、苦しんできた性分にちゃんと名前があったこと、そして、それを同じように苦しんできた人がいるという事実に、僕はものすごく心が救われたような気がした。
 
Voicyを聴きながら、何度も心のなかでうなずき、気づけば心の奥のほうから、じんわりと涙が込み上げてくる。この時、大阪にいたので、大阪の街を歩きながら涙を堪えて歩いた。はたから見たら相当やばい人だったと思う。
 
僕の好きな本にこんな言葉があったのを思い出した。
 
「あなたが涙を流す場所に気をつけなさい、そこに私がいます。そして、そこにあなたの宝物があります」(引用元:パウロ・コエーリョ著『アルケミスト』角川文庫)
 
魔王を倒しにいく勇者の募集に対して、一番ビビっている村人Aが、真っ先に手を挙げて冒険を始めてしまうようなものだ。
 
危なっかしい。でも、つねに刺激を求めて行動し続けるから、アクティブな人だと思われやすい。そして気を遣いすぎて消耗もしやすい。メンタリストのDaiGoさんは「HSP」に対してこう表現したらしい。
 
「HSPはRPGの中では、ものすごくMPを消費する、強力な魔法だけ使えるキャラクター」
 
思わず大きく頷いた。なるほど、自分は勇者でも村人Aでもなくて、ただの変わった魔法使いだ。MPをあまり消費しない「メラ」をコンスタントに放てばいいのに、いきなり「ギガデイン」を放って、自分も倒れこんでしまうタイプである。
 
周りからはその空っぽ状態が気づかれにくくて「ギガデイン」が生み出した仕事の成果だけが印象に残るから、すぐにまた次を期待されやすい。そこで無理して期待に応えようと頑張って、また疲れてしまう。
 
一番気をつけなきゃいけないのは、MP0の時のコミュニケーションだ。その時に、人からいろいろ強い口調で言われたり、何かを求められたりすると、すべてが責められているように感じてしまい、敵味方関係なく「ミナデイン」を放ってしまう。(具体的には心ない言葉を言ってしまう)相手が嫌いなわけでも憎いわけでもないのに、自己防衛本能で言ってしまう。
 
ミナデインで自分も相手の心も焼け野原状態になる。圧倒的な後悔の念におそわれる。MPもHPも0の時は、ただただ時が経って回復するのを待つしかない。もちろん若い頃に比べればその頻度はかなり減った。だが、そのたびに自分の人間性をひどく責め続けてきた。何もやる資格がないと落ち込んできた。誰も知らない国で、フルーツポンチでも食べながら本だけ読んで隠遁生活したい願望に襲われる。
 
でも、刺激を求めずにはいられないから、山小屋でのんびり暮らす代わりに、赤坂のマンションに住んでしまう。まさにそれこそがHSS型HSPの特性だと知った。
 
正直、学校で習う化学記号や五段活用なんかよりもっと早く「HSP」を習いたかったし、「保健だより」のプリントを配る前に「HSPの人とどう付き合えばいいか」のトリセツをみんなに配って欲しかった。でも悔やんでも未来は変わらない。人生は前向きにいかなくちゃ。
 
もちろん、この特性のおかげで、恵まれたものもたくさんある。良いところも悪いところも全部を受け入れて、自分を肯定できるとき、それは「宝物」になるのかもしれない。
 
 
 
 
***
 
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2023-07-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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