「時間は未来から流れてくる」という考えが、人生を変えた話
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記事:kana(ライティング・ゼミ6月コース)
「時間って、どこから流れてくると思う?」
「普通に考えて、過去から流れてるんじゃないの?」
たいていの人は、何いってんだという感じで、こう答えるだろう。
まるで「太陽ってじつは西から上るんだよ」と言われたかのように。
しかし、「時間は未来から流れている」と捉えることもできるのだ。
これは今までの読書体験において、最も衝撃だった発見だ。
「時間は未来から流れている」という考え方は、私の人生観を変えてくれたといっても過言ではない。
出会いは、4年ほど前に遡る。
大学院生として研究活動をしていた私は、研究がうまく進まずに悩んでいた。
さらには、コロナで研究室に通うこともできなくなり、修士論文提出まで時間がない中、研究はストップしてしまった。
家で考える時間が多くなったせいか、モヤモヤと過去のことを思い出しては、後悔したり自分なりの因果関係を見出したりして、どんどんネガティブになっていった。
私には過去を振り返り、出来事がどうして起こったのかを分析する傾向がある。
それが行き過ぎると、過去のことを考えすぎて病んでしまう。
そんな時に出会ったのが、認知科学者の苫米地英人氏の書籍「『頭のゴミ』を捨てれば、脳は一瞬で目覚める」だ。
本書は脳科学的な視点から、頭の中のもやもやを整理して生産性を上げる方法について書かれたビジネス書だ。
「頭の中がゴミだらけの私にピッタリじゃん!」と思って、読み始めた。
特に私を惹きつけたのは、「『これまでの自分』というゴミを捨てる」という章だった。
私も含めて、人は過去に囚われやすい。
しかし著者は「過去は未来に影響を与えない」と、はっきりと述べていた。
例えば、買い物に行き、目当てのものが最初に入った店では売ってなかったとしよう。
しかし次に入った店では、目当てのものが偶然安く売られていた。
この場面において、「最初に入った店では買えなかった事実」は、「次の店に入るきっかけを作る出来事」としてポジティブな意味を持つようになったのである。
つまり、過去の出来事はむしろ、未来の影響を受けているのである。
いろいろな出来事が未来から流れてきていて、それを受け取るか受け取らないかで、過去が出来上がってくるというわけだ。
「時間って未来から流れてきているの!?」
衝撃を受けた。
この本を読むまでは、「何をやってももう修士論文書くまで時間がないし、研究生活は中途半端になってしまった。コロナ禍までにもっと一生懸命取り組んでおくべきだった」と思っていた。
でも読んだ後は、「未来から時間は流れてくるのなら、目の前に来たより良いチャンスを逃さないように準備しよう」と思った。
こうして圧倒的に前向きになった私は、コロナの自宅待機を利用して、実験はできない代わりにデータ解析や英語の勉強を始めて、非常に充実したステイホームを過ごしたのであった。
そして、最近。
26歳になって、漠然とした悩みが増えた。
「とりあえず働いてみてから、世の中での身の振り方を考えよう」と思って就職した。
しかし、働いてみても悩みや不安は増すばかりで、一向に先が見えない。
さらには、結婚するとか転職するとか、自由に行動できる期限もぐっと迫っているのは感じる。
一連の悩みは、いわゆる「クォーターライフ・クライシス」という奴だろう。
そうこうしているうちに、私の闇堕ちパターンの「過去のことを考えすぎて病む」が発動し、寝られなくなった。
そんなときに、本屋で出会ったのが、吉本ばななさんの「『違うこと』をしないこと」という書籍だ。
ばななさんの作品が好きな私は、彼女の幼少期の思い出や仕事に対する考え方が綴られたこのエッセイを、ワクワクしながら読み進めたところ……、雷が落ちた。
「時間は未来から流れてくる」
また、この言葉に出会ったのだった。
ばななさん曰く、「観たいテレビがあるから何時に帰ろう」とか、幼少期は「未来のやりたいことから逆算して行動すること」が基本になっていた。
しかし、大人になると、この逆算して行動することは忘れている。
「人は忘れているだけで、未来から時間が流れていることを本当は知っている」と彼女は語る。
いまの自分の生活では、やりたいことから逆算して行動できているだろうか。
振り返ってみると、仕事が溜まってなんとなく残業したり、ダラダラスマホをみてもう寝る時間になったり、全くできていなかった。
満足いく過ごし方をできていないことが、将来への不安感を生み、さらに生活の満足感を下げるというループに陥っていた。
将来が不安なのは、今の生活の延長線上に未来を描くからだ。
より良い未来から時間は流れてきていると思えば、不安な気持ちになっている暇はない。
「ただ、少し先に見えているやりたいことに向けて、行動するのみ」
シンプルなこの事実を、すっかり忘れていた。
このように、「時間は未来から流れてくる」は、別々の行き詰まったタイミングで読んだ本2冊に共通して書いてあったから、驚きだ。
悩んだ折々に、まるで街で出会う猫のように、ふらっと私の眼の前に現れる。
この言葉をきくと、これまでの人生の後悔とか憂慮を一瞬忘れて、前向きになっている自分がいる。
「過去のことを考えすぎてしまう」
「もう何をやっても望んでいた未来には程遠いと感じてしまう」
そんなあなたへ。
時間が未来から流れてくるイメージをぜひ持っていて欲しい。
ちょっと心が前向きになるはずだから。
「もうすぐそこにも、より良い未来からのチャンスのボールは流れてきていますよ!
考え込んでないで、一緒に拾いに行きましょう!」
***
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