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メディアグランプリ

2000文字のジグソーパズル


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:和智弘子(ライティング・ゼミ)

「よぉし。やるでー!」
ミィーンミィーンミィーン……。蝉の声が盛大に響き渡る。
小学生の私は夏休みになったら、絶対にやると決めていたことがある。
それは「ジグソーパズル」だった。

幼い頃からジグソーパズルが大好きで、ひとりで黙々とピッタリのピースを見つける作業に没頭していた。害のない遊びのため、ジグソーパズルさえ与えていれば数時間はおとなしくなる。新しいパズルが欲しい、と言うと両親はクリスマスや誕生日のプレゼントとして買い与えてくれた。

おなじパズルでも、いったんバラしてしまうと、また初めから遊べるので完成させたパズルを何度もこわしては遊んでいた。
しかし、何度も繰り返し遊んでいると「このピースは、あの部分だな」というのが絵柄を見ただけでわかるようになってしまう。
500ピースぐらいのパズルでは物足りなくなってきていた。

「新しいジグソーパズルが欲しいんやけど……」
母にそう伝えると「またか」といった表情で私を見たけれど、何度も同じパズルばかりで遊んでいる私に一つ新しいのを買ってやるか、と思ってくれたらしい。
「もうすぐ誕生日やし、商店街のおもちゃ屋さんで買ってあげようか」
そう言われ、いそいそと母とおもちゃ屋さんへ向かった。

おもちゃ屋さんにはたくさんのジグソーパズルが並んでいた。うーん、どれにしようかな……棚の前で立ち尽くし、悩んでいる私に「おかあさん本屋見てくるから、戻ってくる前に決めときや」そう言って母はその場を離れた。

どうしよう。どれでもいいのかな?
一つ、気になっているパズルがあった。
それはディズニー映画の「不思議の国のアリス」のストーリーに沿ったジグソーパズルだった。不思議の国のアリスに出てくる様々なキャラクターが描かれたもので、なんと2000ピースもある。

2000ピースもあれば、かなりの手応えに違いない。これに挑戦してみたいな……。幼心に火がついた。でも、ちょっと値段が高いから、お母さん「うん、いいよ」って言ってくれるかな?

本屋から戻ってきた母に「このパズルが欲しい」と告げると、やはり予想していた値段をオーバーしていたらしく難色を示した。私が必死に「どうしてもやりたい」と告げると「小さいパズルはすぐ完成してしまうやろうし、まあいいか」と商店街でしか使えない金券で購入してくれた。その金券は使用期限も迫っていたらしく、運が味方してくれたんだと喜んだ。

私は嬉しくて、すぐにそのジグソーパズルに挑戦してみた。
ジグソーパズルは、まず「かど」のピースを見つけ出し、大枠を作るところからスタートする。完成された時に出来上がる図柄を見比べながら、手元にあるピースを選り分けていく。
2000ピースのジグソーパズルは想像していた以上に手強かった。たくさんのピースに埋もれ、かどのピースすら探し出すことができない。
ようやく見つけ出し、大枠を作り上げたがその大きさはタタミ一畳近く。それだけで一日が終わってしまった。

完成までに何日もかかるパズルを前に、途方にくれている私に「まとまった休みの時にやったほうがいいんちゃう? そんなんずっと広げられてたらお母さん困るわ」そういって、今は片付けなさい、という指示を出してきた。

私はパズルを前にして悔しかった。500ピースのパズルなら簡単だと思って大きなものに挑戦したけれど、こんなに大変だなんて考えてもいなかった。
よし、一旦ここは片付けて、お母さんの言う通り夏休みに挑戦してやる。
そう、決意した。

待ちに待った夏休みがやってきた。
今回こそは、このパズルを完成させてやるぞ。時間はたっぷりあるんだし。

まずは「かど」を探す。次にアリスのキャラクターごとにピースを選り分ける。
なんだか良くわからないピースは保留しておいて、後から合わせていけば良い。
とにかく夢中でパズルに向かっていた。初めは枠だけができあがり、タタミが見えていた場所ばかりだったが、徐々にアリスのキャラクターが登場し始めた。

ごはんと、トイレと、眠るとき以外は、ほぼパズルに夢中だった。
一週間かけて、ようやく2000ピースのジグソーパズルは完成した。
完成したときの達成感は言葉に表すことが出来ないほどだった。両親も姉も、「ヒロちゃん、よくやったなあ」と一緒になって喜んでくれて、完成したパズルの横に寝転んで、記念撮影までおこなった。
完成したジグソーパズルは数日間そのままに置いていたが、またバラバラにして箱にしまった。そして、そのパズルは「夏休みチャレンジ」として恒例行事となっていった。

こうしてライティングゼミで記事を書いていると、この2000ピースのジグソーパズルの思い出が鮮明に甦ることがある。
記事を書くことがパズルに似ているからだろう。
まずは、どんな話にしようかと大枠を考える。
一つずつエピソードを練りながら、ピッタリの言葉を探す。似ているピースはいくつもあって、無理矢理ねじ込めば入るのだけれど、あとでやっぱりつじつまが合わず、また一から組み立て直さなければならない。
丁寧に言葉を選ぶこと。焦らずにピースを無くしてしまわないこと。
ピースを無くさなければジグソーパズルは完成する。
目的を定めて、迷わないように。
言葉を選びながら書き進めていくことができれば、その記事は完成するのだ。

私が今挑戦しているのは、難しいジグソーパズルよりも、もっと複雑で、もっと悩ましいものだ。だけど、この挑戦は私を奮い立たせてくれるものでもある。
もっと難しいものに挑戦できるんじゃないのか? もっと、深みのある内容を描けるんじゃないのか?
まだまだ、この挑戦は始まったばかり。これから先も、ずっともがき続けていこうと思うのだ。

***

この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
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2017-01-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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