メディアグランプリ

池袋にある15坪の小さな本屋さんに、私はマーケティングを学びに来たのかもしれない


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【12月開講申込みページ/東京・福岡・全国通信】人生を変える!「天狼院ライティング・ゼミ」《日曜コース》〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
【東京・福岡・全国通信対応】《日曜コース》

記事:菊地功祐(ライティング・ゼミ)

「天狼院マーケティング・ゼミだと!」

その告知の記事を読んで、私は衝撃を受けた。
10月から通い始めた池袋にあるちょっと変わった本屋さん、天狼院書店。
ライティング・ゼミに通いはじめ数ヶ月が経った頃、天狼院でマーケティング・ゼミも開講されることを知った。

どうやら店主の三浦さんは、天狼院で実践したマーケティングの技法を
すべて受講生に教えてしまおうと考えているみたいだ。

「正直、教えたくない……だけど、お客様の声に応えるためには仕方ない」
と三浦さんは腹をくくったらしい。

天狼院という本屋が実践してきたマーケティングの詳細である。
普通だったら外に漏らしたくないだろう。

というか絶対外に漏らしたらダメだろ。

だけど、三浦さんは腹をくくって、多くの人に
「なぜ、池袋にある小さな本屋さんが生き残ることができたのか?」
を伝えていき、起業したはいいが自家ブラックに陥っている昔の自分のような経営者を一人でも救いたいと思っているみたいだ。

こんな大切な企業秘密を外に漏らしていいのか?
本当にいいんですか! 
三浦さん! 
と正直思った。

天狼院書店は奇跡の本屋だとあらゆるメディアで紹介されている。
私も雑誌やwebで天狼院の記事を何度か読んだことがある。

衰退産業である書店業界において、まるで黒船のように現れた天狼院書店。

自分も天狼院に通うようになって不思議に思ったことが数々あった。

まず、天狼院はお客様が作る本屋なのだ。
天狼院にある本の多くは、お客様がチョイスした本だ。

それにweb天狼院がすごい。
店主の三浦さんが講師を務めるライティング・ゼミでは、受講生が毎週、
自分の記事がどれだけアクセスされたかを競い合うメディアグランプリがある。

そこではプロ級のライターが勢ぞろいだ。
受講生全員、全力で記事を書き上げ、お互いに競い合いながらもライティングの技法を高め合っているのだ。

ありとあらゆる才能を持った人たちが今、池袋にある小さな本屋さんに集まってきている。
まるで現代によみがえったトキワ荘のようだ。

私は天狼院に通うようになって、天狼院の仕切りのなさに驚いた。
お客様が主導で動かしている本屋なのはわかるが、
実際は15坪しかないのに、直径10キロほどもある、
どこまでも広大に広がっている本屋さんのように感じるのだ。

スタッフとお客に垣根がなく、ゼミやイベントを通じて刺激し合う。
その化学反応を通じて、実りある本屋へと変化していく。

Web天狼院というメディアもあることによって、本屋という枠を通り越して、
ありとあらゆる場所まで繋がっている。

15坪しかない小さな本屋さんには、とてもじゃないが思えなかった。

感覚的に広大な敷地を持った庭園のような場所なのだ。

私は最近、家の近所ではなく、わざわざ天狼院で本を買うようになってしまった。

天狼院で本を買うことによって、ちょっとでも天狼院が潤うかなと思ってしまうのだ。天狼院を応援したくなる気持ちが心の底であるのだと思う。

池袋にある小さな空間に強力な磁場が発生していて、
ありとあらゆるクリエイティブな人を惹きつけている。

まるで、月に数回スターバックスに行きたくなるように、
空間にブランドが発生していて天狼院に行きたくなってしまうのだ。

とてつもなく凄いことだと思う。

新しくできた飲料水や商品名にブランド価値を作るのならまだ簡単だ。
しかし、空間にブランドを生み出すのは一筋縄ではいかない。

私は天狼院に通うようになってから「空間ブランディング」という奇跡の技に憧れるようになった。

なぜなら、私も空間にブランドをつけようともがいていた時があったからだ。

私が高校生だった時の文化祭。
2階にある教室に、どうやって人を集めようか当時高校2年だった私は必死に考えていた。
もしかしたら三浦さんがやり遂げた、天狼院という空間にブランドをつけるということを私もやっていたのかもしれない。

「絵画展をやらないか?」
高校生活最後の文化祭を前にして、私はクラスメイトに声をかけまくっていた。

私は平凡な日常に退屈していて、高校生活最後の文化祭で何かやりたいと思っていた。

そんな時に思いついたのが、絵画展だった。

私が通っていた高校は男子校の進学校で、同級生は皆勉強ばかりしていたと思う。
東大に入るために高校3年間を過ごしているような人たちが多かった。
もちろん全員とは言えないが、小中高一貫の進学校に高校の部から入学した私にはそう見えた。

私は部活動などもやっていなかったため、ただぼんやりとした日々を過ごしていた。退屈で、退屈で仕方がなかった。

こんな高校生活でいいのか? と思っていた。

最後の文化祭が近づくと、私はじっとしていられなかった。
何かやりたい! 高校時代に何かをやり残したい!

すると、思いついたのが絵画展を開くことだった。

なぜ、絵画展を開こうと思ったのかは今でも不思議だ。
その頃は中村佑介というアジカンなどのCDジャケットを書いているイラストレーターに憧れていて、いつか絵を描いてみたいと思っていたのだ。

ちなみに私は絵が下手である。
下手といってもそこそこ下手ぐらいだ。
自分で言うのも変かもしれないが中の下くらいの下手くそだ。

美術の成績はだいたいAだったが、美大受験を控えている美大予備校の人に比べたら、全く手も足も出ない。

そんな私だったが、絵画展を開こうと思った。

絵を描こうと思ったのだ。

私は早速仲間を集めることにした。
美大受験を考えている絵が得意な同級生に声をかけた。
「何か面白そうだね」
と、あっさりとオーケーがもらえた。

次の行動は場所を借りることだった。

文化祭当日の部屋割りはくじ引きで決められた。
私はくじ運が悪く、2階の隅っこの教室が割り振れられた。

正門から最も遠い場所だ。

こんな隅っこにある教室に人が集まるのか?
大丈夫かな? と思っていた。

絵画展を開くと決めてから私は毎日、必死に絵を描き続けた。
デッサンなんかろくにやったことない人間である。

もちろん絵は下手くそだ。

今見ても下手くそだと思う。

しかし、やるしかない! と覚悟を決め、絵を描きまくった。

美大受験を控えている同級生はあっさりと目標の枚数を書き上げてきた。
しかも、傑作というほどにうまいのだ。

びっくりした。
これはみんな見るだろう! と思うほど、絵がうまいのだ。

私のさえない絵もなんとか書き上げ、展示する作品は13点ほど揃えられた。

さて、次はどうやって2階の隅っこにある教室に人を連れ込むかだ。

単純に考えて正門に入ってくる客にビラを巻けばいいじゃないかと思うが、
私の学校はなぜか文化祭でのビラまきが禁止されているのだ。
教室の範囲内でビラを配るように指定されているのだ。

こうなったら2階に上がる通路に看板やポスターを立てるしかない!
そう思って文化祭前日に突貫工事的にポスターを作って、壁に貼りまくった。

文化祭当日。
朝から他校の生徒や、男子校に彼氏を探しに来る女子校の女の子でにぎわう中、ひとり絵画が展示されている教室に座っている薄暗い顔をした生徒がいた。

……私だ。

全く教室にお客さんが入ってこなかったのだ。

人っ子一人入ってこない。

やばい。やばいぞ。

このまま一人もお客さんが入ってこなかったら、私に協力してくれたクラスメイトたちに会わせる顔がない。

なんとかしなければ。

教室で一人考え込んでいると、小さな子供が教室の前までやってきた。
多分、隣接している小学校の子供だろう。

人でごった返している1階に比べて、し〜んと静まり返っている2階。
一人の男子生徒が絵に囲まれた教室で、座って考えごとをしているのだ。

だいぶ怪しい光景だろう。私だったらまず、そんな教室に入ってこない。

子供も案の定、教室を覗いただけで、どこかへ行ってしまった。

私はその時思った。

サクラだ!

教室の中に、サクラがいれば、外から見れば絵画展に人が集まっているように見える。すると、ドア越しに教室を覗いた人は安心して中に入って来やすくなる。

早速、私は空いている教室で将棋を指しているクラスの陰キャラ連中に声をかけてみた。

「ここで将棋しているなら、2階の教室で将棋してくれない?
人が一人もいなくてさ、ちょっとでも人がいたらお客さんも安心して中に入って来やすくなるんだよね!」

「どうせ暇だしいいよ!」
と、将棋軍団は言ってくれ、私の絵画展の中央スペースは、なぜか将棋エリアと化してしまった。

これでサクラは用意したが、人は入ってくるのか?

12時すぎになり、人も増え始め、1階の企画ブースに飽きた人たちが2階にも来るようになった。

午後になったら人の流れが変わってきたのだ。

私の絵画展にもじわじわと人が入ってくるようになった。

今がチャンスだ!

どうしようか。この人の流れを有効に使うにはどうすればいいのか?

必死に考えた結果、出口と入口にチラシを置くことにした。

美大受験を控えている同級生が書いた傑作のイラストとビラを出口に置いて、階段に上がってくるお客さんに向けてイラスト入りのビラを見せる作戦に出たのだ。

階段でイラスト入りのビラを見せる作戦が、まずうまくいった。

同級生が書いた、パッと見ただけで「お!」となるイラストを見せられたお客さんはそのまま絵画展の教室に入っていった。

2階へ上がっていく人々に絵画展の存在を認知させることに成功したのだ。

出口には来場者限定のイラストを置き、絵画展を後にした人たちが口コミで
「2階に変な絵画展やってるよ」
と1階の人にも広めてくれたのだ。

すると14時過ぎからジワジワと絵画展に人が集まりだした。
ピークの時は教室に20人以上の人がいた。

1階にいた人を2階にある絵画展へ連れてくることに成功したみたいだ。

絵画展の中央にいた将棋軍団は人が集まり始めて、居心地が悪くなったのか
どこかに行ってしまった。

私はほとんど一人で絵画展のドアの前に立って、声をかけまくった。
イラストを見せて、注意を引きながらなんとか2階に来る人を絵画展に入れるために頑張った。

すると、文化祭2日目にして500枚刷ったイラストが全てなくなっていた。
来場者限定のビラもイラストも全てなくなった。

私は至急、印刷室に駆け込んで、イラストとビラを300枚追加でコピーした。
文化祭は全部で3日間だ。

ヘロヘロになった。
毎日教室の前に立って、人の流れを教室へと促していった。

人を動かすのがこんなにも難しいとは思わなかった。

自分がどんなに面白い企画をしていると言っても、全く人は関心を示さないのだ。どんなに自分が面白いと思っても、見てもくれないのだ。

私がマーケティングの難しさを痛感した始めての体験だったと思う。

結局、功を奏して、文化祭の3日間で、最低でも800人の来場者をゲットすることができた。

800枚刷ったイラストもビラも全てなくなってしまった。
3日目の昼にはなくなったので、少なくとも800人以上は私の絵画展を見に来てくれたことになる。

今思うと、たかが高校生が企画した文化祭の展示だ。

マーケティングのド素人が、それっぽいことをやったに過ぎないのかもしれない。

だけど私の心には、あの高校時代に絵画展に人を集めるべく走り回った体験が強烈に残っていた。

あの日、私が実践しようともがいていたのは空間にブランドを植え付けることだったのかもしれない。

空間にブランドを植え付けるのは本当に難しいのだ。

大学でも「空間ブランディング」を卒業論文のテーマにした。
スターバックスや代官山TSUTAYA書店のブランディング効果について論文でまとめたのだ。

スターバックスはCMも広告も全く行っていないのに、なぜ、人々はあの空間に集まるのか?

人々はスターバックスのコーヒーを飲みたいのではない……

スターバックスでコーヒーを飲みたいのだ。

スターバックスでコーヒーを飲むこと自体に価値が生まれているのだ。
あの空間でコーヒーを飲むということにブランドが生まれている。

人々の心の中にスターバックスという空間のブランド価値が植えつけられている。

だから、私も多くの人と同様に、週末になると妙にスターバックスに行きたくなるのだ。
あの空間でコーヒーを飲みたくなるのだ。

天狼院も同じような現象が出来上がっていると思う。

なぜか私は妙に天狼院に行きたくなってしまうのだ。
あの池袋にある15坪の空間で本を買いたくなってしまうのだ。

天狼院店主、三浦さんの周りには強大な磁場が発生していて、
今、いろんな人が天狼院に集まってきている。

本当に不思議な本屋さんだ。

高度経済が行き詰まり、バブルが崩壊した今、人々の欲求は最上段階に移行したと言われている。マズローの欲求5段階の最上階……「自己実現欲求」だ。

バブルの頃は、物自体に価値があり、人々はブランド品を買いあさり、高い車に乗ることがかっこいいと思われていた。

しかし、自分も含め今の若者は物に全く興味がない。
物自体の価値が希薄化したのだ。

今の若い世代はブランド品など誰も興味を持たないのだ。

彼らが興味を持ったものは「自己実現」だった。
SNSなどを使って、自分がどれだけリア充かアピールすることが、
ブランド品を買い漁るよりも大切になった。

SNSを使って、自分のライフスタイルをアピールすること。
すなわち「生き方」が最後の商品になった時代なのだ。

時代の波にうまく乗ったスターバックスやアップルは成功した。
ちゃんと時代の要請を見ていたのだ。
家庭と職場をつなぐ第三の場所をコンセプトにして、豊かなライフスタイルを提供してきたスターバックス。

世界を変えていく人のために、クリエイティブで刺激的なライフスタイルを
提供するアップル社。

天狼院がやはりすごいのは本だけでなく「生き方」を売っているところだと思う。
「READING LIFE」の提供を掲げ、実践してる。
スターバックス同様に人々のライフスタイルを変えていくすごい空間だ。

三浦さんは一体、天狼院を作るにあたりどんなマーケティングを実践したのか?

私は気になって、気になって仕方がない。

お金が貯まったら私はライティング・ゼミだけでなくマーケティング・ゼミにも通ってみようと思う。
そこにはどんな世界が広がっているのか?
どんな刺激的な場を提供してくれるのか?

私は本当に楽しみだ。

天狼院はきっと、これからも多くの人々のライフスタイルを彩り豊かなものに変えていくのだろう。

天狼院の行く末が実に楽しみだ。
心のそこから応援している。

***

この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。

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2017-01-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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