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勉強が苦手な君は、恋をしてみるべきだと思う 恋愛による学習動機づけの強化についての一考察


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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【東京・福岡・全国通信対応】《日曜コース》

記事:南下 三郎(ライティング・ゼミ)

生徒が勉強しない。
教科の内容に興味をもってくれない。

これは教師をしているすべての人に共通の悩みではないだろうか。

私「仮定法過去というのは、If節ではじまって動詞は過去形を使うんだけど……」
生徒A「全然わかんない。英語の授業、ちっともおもしろくないよ」
私「まあまあ。でも英語は大学入試にいるよね? 
海外旅行に行くときに英語話せたら便利だし」
生徒B「私、海外とか興味ないし」
生徒C「オレ、高校卒業したら専門学校行くからカンケーないし」
私「でも英語の単位取れないと、高校卒業できないよね?」

いつもの授業風景。

すべての生徒が大学進学を目指しているわけではない進路多様校においては、
生徒たちの学習に対する意欲は低い。
どのような授業を展開すれば、少しでも英語に興味を持ってくれるのか頭を抱える日々だ。

また例によって、時間と薄毛だけが少しずつだが、着実に進んでいく……。

私はいま、とある地方で高校の英語を教えている。
生徒たちからは「勉強大好きな、ヘンな先生」と思われているようだ。
教師になった今も、英検やTOEICなどの勉強を続けている。
私としては専門分野のレベルアップは、教師としての良識だと考えている。
決して「ヘンな」先生のつもりはない。

しかしこれまでの人生を振り返ってみると、決して「勉強大好き」な人間ではなかった。

私は小学生だったころ、勉強が大嫌いだった。

うちで算数のドリルをしたり、漢字の書き取りをしていると蕁麻疹が出たこともある。

学校に行っても、先生の話がつまらない。
黒板に何を書いてあるかわからない。
「なんか学校でつまらないな、早く帰ってコロコロコミック読んで、マリオで遊びたいなあ」などと空想して時間をつぶしていた。

そんな私の様子を見かねてか、ある日、隣の席に座っていたD美が話しかけてきた。
D美はどちらかといえば地味だが、優しい雰囲気の女の子だった。

D美「ねえ南下くん、ゲーム好きなの? 私もマリオ好きなんだけど」
私「え、そうなの。意外!」
D美「うん! 今度うちで一緒にゲームしない?」
私「しよう、しよう!」
D美「うん。 でね、さっきの授業のノート取ったんだけど、貸してあげようか?」
私「え、いいの? ありがとう!」

これが私とD美との淡い初恋の始まりだった。

私は生まれつき視力にハンディがあった。
メガネをかけても、一番前の席に座っていても、何が黒板に書いているかわからなかった。 
かといって、自分から友人にノートを貸して欲しいとお願いしたり、授業中に席を立って
黒板の前でノートを取っていいかと先生に相談するような勇気はなかった。

牛乳瓶の底のような、ガリ勉くんメガネをかけていると、いじめの対象にもなった。
勉強ができないガリ勉くんメガネ。

ゲームとマンガにしか興味のない陰キャだった私に突然、D美という天使が舞い降りたのだ。

D美のノートに書かれている文字はていねいで、読みやすかった。
大事な箇所は下線が引かれていたり、色ペンで見やすく書くなど工夫がされていた。
ときには、サンリオのキャラクターなどかわいいイラストが書いてあった。
ほのかにD美の使っているシャンプーの香りがする。

うちに帰って、D美に借りたノートと教科書を見ながら、自分でノートを作った。
算数の文章問題。四国地方の地理と気候。漢字の書き取り。

あれ、これカンタンじゃない?
こんなこと、授業でやっていたの。
黒板全然見えなかったし、先生の話とか興味なかったし。
マリオの難しいステージをクリアするよりこっちのほうがカンタンだし、もしかしておもしろい?

D美のノートを借りるようになってから、私のテストの点数はどんどん伸びていった。
以前は50点代を前後していた点数が、全科目、一気に80点代後半から90点代までに上がった。

先生「おー、南下、お前はやればできるんだから、また次もがんばれ!」
D美「すごいね、南下くん! がんばったね! また次も一緒にがんばろうよ!」
私「うん、ありがとう」

先生の上から目線の言葉には当時は何も感じなかった。
「やればできる」というのは、これまでやってこなかったことの裏返しに過ぎない。
この先生には、これまで私をやる気にさせることはできなかったのだ。 

それに比べて、D美の言葉は本当にうれしかった。
また、次も勉強をがんばろうと思った。

D美とはクラスで一緒に保健委員をしたり、勉強のこと以外にも、ゲームのこと、テレビのこと、お互いの家族のことなど、たくさん話した。

私がクラスの中で話す女子はD美だけだったので、そうした様子を見ていたクラスメイトたちがうわさをし始めるのにも時間はかからなかった。

ある日の朝、教室に行くと黒板に相合傘が描かれていた。

E夫「南下、おまえ、D美のこと、好きなんやろ?」
F子「わー、毎日熱い、熱い! ラブラブだねー」
私「いや、違うし! そんなんじゃないし!」

当時小学生だった私は、そんなときにどうしたらいいのか、わからなかった。
D美は、ただうつむいていた。

あの恋愛アニメのように、黒板を消してD美の手を取って、二人で教室から出て行けばよかったのかもしれない。

その日からだんだんと、クラスでD美と話すことも少なくなっていった。

小学校を卒業して中学に入ると、D美は私立の女子校に進学した。
私は地元の公立中学に進んだ。
なんとも風紀の乱れたBE-BOP-HIGH SCHOOL のような中学校で、授業はほとんど進まず、
冬には教室で焚き火をするわ、トイレでタバコを吸うなど、ファンキーな生徒が多い中学校だった。

私は中学では一番前の席に座らせてもらい、それでも黒板が見えないときは席を移動して
ノートを取っていた。正直なところ、みんなと違うことをすることは恥ずかしかったが、
そうでもしないと黒板が見えないのだから仕方ない。

中学生になると、英語の授業が始まった。
これまで勉強してこなかった新しい教科。
スタートはみんな同じだ。
わからないところも、苦手なことも、毎日少しずつであっても取り組んでいく姿勢。
私はD美から、優しさと恋心と一緒に、この姿勢を学んだ。

D美もきっとアルファベットを習い始めたころだろう。

その20年後、私は英語の教師となった。
いつかまたD美に会ったときには、笑いながら当時の話をしたいと思っている。

***

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2017-01-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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